「切るニラがなくなる」中国、深刻な少子化 罰金制度廃止へ

2021/08/06 更新: 2021/08/06

中国は日本よりもはるかに深刻な少子化に直面している。中国共産党政権は7月20日、夫婦1組につき3人まで子供をもうけることを認める方針を打ち出したのに続き、出産を奨励するさまざまな政策を導入する文書を正式に発表した。中国共産党(中共)は、急速に進む少子高齢化による経済成長鈍化などへの危機感を抱き、産児制限を緩和する方針だ。
 
発表した文書によると、第3子の出産に課せられていた罰金や制限が撤廃されるほか、「一人っ子政策」の時代にもうけた第2子、第3子の住民登録、入学、就職などの制限が解除される。また、幼稚園のインクルーシブ教育の促進や放課後の保育サービスの確保、子育て世帯への個人所得税の優遇、公的賃貸住宅の提供、住宅支援なども行なう。
 
中国教育部は最近、夏休みにも開校し、保育サービスを提供することを奨励している。中国の1級・2級都市では、優良校区の住宅価格を取り締まっているところもある。これらはすべて、中共が家庭の負担を軽減することによって、より多くの人々に子供を産むように促す方法を模索していることを示唆している。
 
中共は政権発足以来、政府主導の家族計画は計画経済の不可欠な要素であると主張し、強制的または緩い家族計画政策を打ち出してきた。

1950年代初頭には、 毛沢東の「人多力量大(人口が多ければ力も大きくなる)」の掛け声の下、出産が奨励され、多くの子供を産んだ女性は「英雄母」として称えられた。

1953年の国勢調査では、中国の人口は4年足らずの間に5億6千万人増加し、自然な人口増加をはるかに上回った。1957年、中国政府は初めて少子化対策を打ち出した。
 
その20年後、1979年に中共が「一人っ子政策」を導入し、強制中絶、強制避妊、不妊手術などの残酷な方法で中国の人口増加を抑制した。

 2007年1月に中国当局が発表した報告書によると、「家族計画」導入後、中国の出産数は4億人減少した。中共はこれを「顕著な成果」としている。

しかし、中国の経済発展を支えてきた「人口ボーナス」の消失と深刻な高齢化に直面し、中共は2011年から第2子の出産を認めるようになった。2021年5月末には、政権は第3子の出産を認めた。出産を促す中共とは裏腹に、多くの国民は「三人っ子政策」に懐疑的な目を向けている。

中国国営メディア新華社通信が、5月31日にウェイボーの公式アカウントで、三人っ子政策に関するアンケートをおこなったところ、3万1000人のうち約2万8000人(90%)が3人目の子供を持つことを「全く考えていない」と回答した。なお、このアンケートは当日に削除された。

中国の人気YouTuberで元歴史教師の袁騰飛氏は、三人っ子政策について、最近、中国には人が足りないと訴えている専門家や学者もいると述べた。
  
「率直に言えば、(彼らは)切る『ニラ』(一般人)が足りないと言っている。それは彼らが 『寝そべり主義』に反対しているのと同じ理由だ。『ニラ』が全員寝そべってしまうと、鎌(中共の旗の模様で、共産党政権を指す)が切るものがなくなってしまうので、子供を産むことを推奨するようになったのだ」

 「寝そべり」はキャリアや結婚、子育てなどの願望をなくし、「無理はしないライフスタイル」を意味するキーワードとして中国の若者の間に流行し、社会現象になっている。

参考・現代中国のポストモダン「寝そべり」主義、当局が検閲

 「三人っ子政策」を受けて、保健省の関係者は、世論調査を行った。その結果、「大きな経済負担」(75.1%)、「保育資源の不足」(51.3%)、「出産後の女性労働者の賃金低下」(34.3%)が、出産意欲を低下させる上位3つの理由であることが分かった。

また、中国では近年、高齢化が加速しており、2035年には60歳以上の高齢者の割合が30%を超えると予想されている。そのため、三人っ子政策や出産支援政策の実施は、労働供給の増加や年金負担の軽減につながることになるとされている。

中国の人口学者・黄文政氏は、4月に「21世紀経済報道」のインタビューで、1989年から2019年の間に、中国の出生数は2400万人から1100万人に減少したと述べている。業界の専門家は一般的に、たとえ出産制限が撤廃されたとしても、中国社会に与えた負の影響は取り返しのつかないものになると考えている。

中国は 「すべての出産制限を完全に撤廃し、(インセンティブをつけて)出産を強力に奨励する必要がある」とし、インセンティブや支援策がなければ、出生率の減少を止めることはできないと述べた。

(翻訳・小蓮)

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