米国疾病予防管理センター(CDC)は「ワクチンが自閉症の原因でないという主張は、科学的根拠に基づくものではない」と11月19日に発表した。
これまで「ワクチンと自閉症には関連がない」という立場をとっていたCDCは、自閉症の原因としてワクチンが関与している可能性を否定できないと表明し、方針を転換した。
同日に公式ウェブサイトを更新し、「『ワクチンが自閉症の原因ではない』という主張は、証拠に基づくものではない。なぜなら、乳幼児向けワクチンが自閉症を引き起こす可能性を完全に否定する研究は存在しないからである。また、ワクチンと自閉症の関連を示唆する研究は、これまで公衆衛生当局に無視されてきた」と記載している。
CDCは、2006年に発表された論文を根拠の一つとして挙げた。この論文では、自閉症の子どもをもつ親を対象とした調査を分析し、多くの親がワクチンが自閉症の原因であると考えていることが示された。自閉症は、コミュニケーション障害などの症状を持つ発達障害である。
また、アメリカ国内で自閉症の発生率が増加していることと、幼児期に投与されるワクチンの種類と回数が増えていることが相関している点にも言及している。
CDCは、「自閉症の原因は多因子的である可能性が高いが、一つの要因を完全に否定する科学的根拠は確立されていない」とし、「例えば、ある研究ではワクチンに使用されるアルミニウムアジュバント(アルミニウム塩:免疫反応を高める役割を持つ物質)が、自閉症の発生率の増加と最も統計的に強い相関を示していた。ただし、相関関係は因果関係の証明にはならないが、さらなる調査を行う価値がある」と述べている。
一部の研究では、特定のワクチンと自閉症との関連性が観察されている。一方で、麻疹・おたふくかぜ・風疹(MMR)ワクチン接種後の自閉症リスク増加は確認されておらず、米国保健福祉省(HHS)を引用する2021年の報告書では「ワクチンが自閉症を引き起こす証拠はない」とされている。
過去のCDCの報告書では、ジフテリア、破傷風、百日咳、B型肝炎などのワクチンと自閉症との関連性について、「結論を下すのに十分な証拠がない」としていた。今回のアップデートでは「米国の乳児が1歳になるまでに推奨される7種類、20回分のワクチン投与が自閉症を引き起こさないと証明した研究は一つも存在しない」と明記している。
また、自閉症と麻疹ワクチンの関連性を調べた研究について、「後ろ向き研究が主であり、前向き研究(因果関係の特定に有用)はほとんど行われていない」と指摘した。(※前向き研究は現在以降のデータのみを用いる研究、後ろ向き研究は現在よりも過去のデータを含んだ研究)
11月17日、学生から「ワクチンは自閉症の原因にならない」と指摘された際、HHS長官ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は「そう言った人たちはあなたに嘘をついてきた」と発言している。同氏は、ワクチン接種群と非接種群の健康結果を比較するべきだが、そのような調査は実施されていないことを指摘し、現在HHSが研究を進めていると述べた。
CDCによれば、現在HHSは自閉症の原因究明のための調査を進めており、「幼児期ワクチンと自閉症の間に生じうる生物学的メカニズムも評価対象に含まれる」としている。アルミニウム塩(多くの小児用ワクチンのアジュバント成分)も評価項目とされている。
これまでCDCは公式サイトで「ワクチン接種と自閉症スペクトラム障害の発症との関連性はないとする研究結果が出ている」「ワクチン成分と自閉症の因果関係は認められていない」と説明してきた。
今回の改訂後も「ワクチンは自閉症を引き起こさない」という一文は、保健当局と米上院医療委員会委員長ビル・キャシディ上院議員の合意により、そのまま残されている。なお、キャシディ氏はケネディ氏の公聴会で「ワクチンは自閉症を引き起こさない」と断言していたが、コメント要請には返答していない。
一方、CDCが2024年に更新した別ページでは「ワクチンと自閉症の間には関連性が認められない旨、研究で示されている」と記載されている。
子どもの健康と防衛を掲げる非営利団体「Children’s Health Defense」は、CDCの方針転換を歓迎した。同団体代表のメアリー・ホランド氏は、「ついにCDCが、何百万人もの人が影響を受けているこの症状について、長年続いてきた『ワクチンは自閉症を引き起こさない』という誤った説明を撤回し、真実に向き合い始めた」「ワクチンが完全に無関係であることを証明した研究は一つもなく、むしろ多くの研究がワクチンが自閉症の主因である可能性を指摘している」と米エポックタイムズ紙に語った。
疫学者のケイトリン・ジェテリーナ氏はソーシャルメディアBlueSky上で「CDC公式サイトの説明を、もはや人々に信用するよう勧めることができない」と書いている。
スタンフォード大学の感染症専門医ドクター・ジェイク・スコット氏は、自身のブログで「今回のCDCの説明変更は、数十年にわたり何百万人もの子どもを追跡した結果と矛盾している。新たな記載によって、不安を抱く親が推奨ワクチンの接種を遅らせたり、接種しなくなることが懸念される」と述べている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。