ワクチン関連心筋炎の原因と治療の可能性を特定 =スタンフォード大学研究

2025/12/13 更新: 2025/12/13

水曜日に発表されたスタンフォード大学の新たな研究によると、新型コロナウイルスmRNAワクチンによる心筋炎は、2種類の化学物質が同時に作用することで引き起こされるという。

本研究の筆頭著者であり、スタンフォード心血管研究所の所長を務めるジョセフ・ウー医師は、大紀元の取材に対し、「心臓専門医として、『ワクチンは具体的にどのように心筋炎を引き起こすのか』と頻繁に尋ねられる」と語った。その上で、「非常に重要な科学的・臨床的課題であり、資源を投入して取り組む価値があると考えた」と述べた。

mRNAワクチンが投与されると、免疫細胞がCXCL10とIFNガンマと呼ばれるサイトカイン(情報伝達を担うタンパク質性の物質)を大量に放出し、これが心筋を損傷させ、免疫細胞が損傷部位に侵入する原因となる。

この研究はヒトの細胞およびマウスを用いて行われた。過去の研究でも、mRNAワクチンによって障害を受けた人では、これら2つの化学物質の値が高いことが示されている。

二段階のプロセス

研究者らによると、ワクチンによる心筋炎は二段階の過程で生じる。

ファイザーおよびモデルナのワクチンをヒト細胞に投与すると、最初にワクチンに接触する免疫細胞であるマクロファージがCXCL10を放出し、他の免疫細胞をその部位に呼び寄せる。

第二段階では、より専門化した免疫細胞が集まり、IFNガンマを放出する。この2つの化学物質が同時に作用することで心筋細胞が直接損傷を受け、その結果、さらに炎症性細胞が心臓に侵入し、心筋炎が引き起こされる。

ウー医師は、免疫細胞がこれら2つの物質を放出するのは、ワクチン由来の外来mRNAを検知するためである可能性が高いと述べた。

ワクチンを投与されたマウスでは、心臓の損傷に加え、これら2つの化学物質の増加、さらに肝臓や腎臓など他の臓器における炎症の増加も確認された。

ただしウー医師は、研究では人が実際に接種する量よりも高濃度のmRNAワクチンを使用したため、実生活で観察される反応よりも重篤になっている可能性があると指摘した。

「これら2つのサイトカインは血管に炎症を引き起こす。心臓にも炎症を起こし得る」とウー医師は述べ、筋肉や関節など他の部位にも炎症を引き起こす可能性があり、それが一部の人に関節痛や筋肉痛が生じる理由かもしれないと付け加えた。

同医師は、新型コロナワクチンによる心筋炎はまれであり、それよりもウイルス感染自体のリスクの方が大きいと述べている。

予防策としての大豆

ワクチン接種前に、大豆由来の天然植物化合物であるゲニステインをマウスに投与すると、ワクチンの効果を損なうことなく、心臓の損傷が防がれた。

ゲニステインを投与されたマウスは、ワクチン接種後も体内で抗ウイルス信号を放出し続けており、免疫系がワクチンを認識していたことを示している。

ゲニステインには抗炎症作用があり、女性に多いホルモン「エストロゲン」が持つ、炎症を抑える働きに似た作用をする。心筋炎は主に若年男性に多いことから、女性ホルモンであるエストロゲンが心筋炎に対して保護的に働く可能性があるとウー医師は考えたという。

「しかし、男の子にエストロゲンを投与するわけにはいかない。そこで、非常に弱い植物性エストロゲンであるゲニステインを用いた」と同医師は説明した。

ヒューストン大学医学部教授で、独立医師連盟の会長を務めるジョセフ・バロン医師は、この研究によって、ワクチンによる損傷を予防する医学的選択肢が示されたとエポックタイムズに語った。

根本原因は依然として探索中

ウー医師によれば、本研究は新型コロナワクチンによる心筋炎の原因の一つ、すなわちワクチンに対する炎症反応によって生じる心筋炎のみを検討したにすぎない。

他の研究では、ワクチン接種後の心筋炎について、別の原因も指摘されている。その一つが自己免疫である。これは、免疫系が誤って自分自身の組織を攻撃する現象である。新型コロナmRNAワクチンによって作られるスパイクタンパク質は、ヒトのタンパク質と一部共通する特徴を持つため、免疫系がスパイクタンパク質を攻撃する際に産生された抗体が、体内の組織も攻撃してしまう可能性がある。これにより心臓が攻撃され、心筋炎に至ることがある。

さらに、ワクチンによって作られたスパイクタンパク質自体が損傷を引き起こす可能性や、ホルモンが関与する要因など、他の原因についても研究で示唆されている。

心臓専門医のピーター・マッカロー医師は、この研究は、心臓で炎症を引き起こす化学物質が放出される仕組みを示したが、なぜ心臓でそのような反応が起きるのかという点までは説明していない。同医師は、ワクチン由来のmRNAやスパイクタンパク質が体内に残存し、それが心臓など本来標的ではない場所で免疫反応を引き起こしていることが、心筋炎の出発点ではないかと考えている。

過去の研究では、ワクチン接種後に心筋炎を発症した人の心臓組織から、mRNAやスパイクタンパク質が検出されている。

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。