上海市教育委員会はこのほど、市内小中学校の必修科目に「習近平思想」を加え、青少年に対する思想教育を強めている。一方、小学校の期末試験の教科から英語を除外することを決めた。米中対立の長期化を背景に、習近平政権が鎖国を始める兆候だとの見方がある。
同市教育委員会は3日、2021年度小中高校のカリキュラム計画に関する通達を公布した。当局は、小学校の「3、4、5年生の期末試験の教科は国語と算数に限る」と英語の除外を定めた。
6日、国内の有名な英語学習アプリ、多隣国(Duolingo)は中国製スマホのアプリストアから削除された。現在、米アップル社が運営するアプリストア「App Store」でしか入手できない。
中国では英語教育が重視されている。中国国家統計局の研究チームが今年3月上旬に発表した『上海市基礎教育段階における家庭の教育支出状況報告書』によると、上海市の個別指導塾の主な履修科目は英語、数学、国語で、費用の投入比率はそれぞれ68.6%、60.6%、41.8%となっている。英語は各学習段階において主要な個別指導科目のトップであるという。
中国教育部(省)の2017年の統計によれば、中国の学生は英語学習のために年間1638億元を投じている。
上海市の女性市民、李さんは「当局の統計データに疑問がある。学校での英語試験を廃止するための下準備ではないだろうか。個人的に、上海市民は英語よりも、音楽や美術などの習い事に多くのお金を使っていると感じている」と大紀元に語った。
李さんは、上海市民は中国当局の政策に従い、英語学習への投資を減らすようなことはしないと話した。「私たちは、子供が英語学習を通じて外の世界を知ってほしいし、将来、子供が外国へ留学することも望んでいる」
在米中国人学者で、中国の「文芸理論および批判」雑誌出版社の元社長である呉祚来氏は、「多くの人が英語の新聞、あるいはネット上の英語の投稿が読めて、情報を得られることは、全体主義の中国共産党当局にとって脅威であろう。英語教育を弱化することで、中国国民と国際社会のつながりを希薄化できる」と指摘した。
今年3月に開催された全国人民代表大会(全人代)と全国人民政治協商会議(政協)において、政協委員である許進氏は、中国国内で英語は広く使われておらず、学生10人のうち1人だけ「英語を使用している」と指摘し、小中学校の必修科目や大学入試科目から英語を廃止すべきだと提案した。
北京大学の姚洋教授も、大学入試科目から英語を取り除くよう提言したことがある。大学入試における英語の試験が都市部と農村部の教育格差を悪化させていることを理由に挙げた。
呉祚来氏は、中国当局が英語教育を抑制する動きは中国の人口減少という社会問題に関係しているとの見解を示した。中国当局は現在、3人目の出産を奨励している。「教育費を押さえられれば、より多くの家庭が子供を出産できるようになると当局は考えているのだろう」
習近平思想を小中高の必修内容に
いっぽう、上海市教育委員会は通達のなかで、『習近平新時代における中国の特色ある社会主義思想の生徒用読本(習近平思想読本)』を小中高校の必修内容として、学校の「思想政治」という授業に取り入れることを要求した。「思想政治」を担当する教諭が同授業で、読本1冊を1学期にわたって、週に平均1時間のペースで集中的に学習すると規定した。
香港のセルフメディア「昇旗易得道」は、中国当局が英語教育を弱体化させ習近平思想を普及することは、将来、中国当局の国策になる可能性があるとした。
「中国は全面的に毛沢東時代に逆戻りし、北朝鮮のように鎖国して、国民が外国と接触することを禁止し、海外に行くことも禁じるだろう。インターネットの使用も許されなくなる。中国では以前、『革命教育は子供から』という言い方が流行っていた。子供たちを洗脳し革命の仲間入りをさせるのである。(今のやり方は)文化大革命と全く同じだ」
(翻訳編集・張哲)
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