竹の棒と水筒で作った手作りバーベルで訓練に励み…フィリピン初の金メダルに比空軍軍曹

2021/08/31 更新: 2021/08/31

フィリピン空軍、PAFの三等軍曹が「東京オリンピック2020」でフィリピン初の金メダルを獲得した。これで、ほぼ1世紀前に五輪に参加して以来続いていたフィリピンの「メダル干ばつ」に終止符が打たれた。

30歳のヒディリン・ディアス(Hidilyn Diaz)三等軍曹はクリーン&ジャークの最終試技で中国の廖秋雲(Liao Qiuyun)選手を制し、重量挙げ女子55キロ級決勝で優勝を果たした。AP通信の報道では、1924年の五輪参加以来フィリピンが金メダルを獲得したのはこれが初めてである。

2021年7月26日、ディアス三等軍曹は競技後の記者会見で、「1年半も両親と対面できなかっただけでなくトレーニングも耐え難いほど厳しかった」と話している。

フィリピン空軍の発表によると、2021年7月28日、2013年からフィリピン空軍特殊支援団に所属しているディアス三等軍曹の帰国をマニラで出迎えたフィリピン空軍司令官のアレン・トリオ・パレデス(Allen Trio Paredes)中将は、二等軍曹への昇進を表す新たな階級章をディアス三等軍曹の軍服に留めた。

偉業を果たしたディアス軍曹には、新築家屋2軒や生涯無料のエアアジア航空搭乗券と共に、民間企業などから6,500万円相当(65万米ドル)超の賞金が続々と寄せられている。

デルフィン・N・ロレンザーナ(Delfin N. Lorenzana)比国防相も声明を通してディアス軍曹の優勝を称賛し、「ディアス軍曹の成功はあらゆる悪条件を克服して前進するというフィリピン人の揺るぎない精神の証である」と述べている。

ロイター通信が伝えたところでは、今回のディアス軍曹の優勝は2016年夏季オリンピックの女子53キロ級で獲得した銀メダルに続く偉業であった。このときも同軍曹は20年ぶりとなるメダルをフィリピンにもたらしたのである。

同軍曹はブラジルで開催されたリオ五輪での功業に続き、2018年アジア競技大会で金メダル、2019年世界選手権で銅メダル、そして同年に開催された東南アジア競技大会では金メダルを獲得している。

キャビネットに並ぶメダルの数が増えるにつれて、東京五輪の前から同軍曹にはメディアの注目が集まるようになっていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが発生したことで2020年東京五輪が延期されることになった。同軍曹はパンデミックに起因する都市封鎖によりもたらされた障壁を克服した過程をInstagramで公開している。

マレーシアのマラッカ(ムラカ)に避難した同軍曹は竹の棒と水筒で作った即興のバーベルを使用し、2020年を通してトレーニングに励んだ。幼少時代はプラスチックパイプとコンクリートの重りで手作りしたバーベルで練習したという同軍曹は、マレーシアでの経験を自身のルーツに繋げて語っている。

フィリピンのカルロ・ノグラレス(Karlo Nograles)内閣官房長官は2021年8月10日、ディアス軍曹が金メダルを獲得したことは、フィリピン人アスリートが他諸国のトップ選手に匹敵する競争力を備えていることを実証するものであると表明している。

これを機に、同国政府は国内の意欲的な五輪アスリートのために財政的な政府支援を増額してトレーニングや設備を支援すると発表したノグラレス内閣官房長官は、マニラ北部に所在する国立スポーツアカデミー(NAS/National Academy of Sports)のトレーニング施設でコースが開始される予定であるとも伝えている。

フィリピン国営報道機関のフィリピン通信社(PNA)が報じたところでは、同内閣官房長官が「フィリピンが金メダルを獲得できる可能性があることが証明されたため、当政府行政機関は熟考した上でスポーツ対象の資金援助を増やすことにした」と述べている。

(Indo-Pacific Defence Forum)