仏国防省傘下のフランス軍事学校戦略研究所(IRSEM)は9月20日、中国共産党政権による統一戦線工作の実態をまとめた報告書「中国(中共)の影響力作戦」を公開した。
646ページに及ぶ同報告書は、同研究所が2年間の調査・研究を経てまとめ上げたものだという。報告書は、中国共産党(以下、中共)の統一戦線工作について「いかなる道徳規範にも準じない、目的のために手段を選ばない」と形容した。
近年、中国は外国の団体や個人を取り込む統一戦線工作を通じて、中共に有利な世論誘導やプロパガンダ工作を展開している。報告書は、中共政権が海外でもスパイやプロパガンダを通じて、気功集団「法輪功」の学習者を迫害していると言及した。
中国の伝統的な修煉法である法輪功は、1990年代に病気の治療効果により中国で人気を呼んだ。弾圧される前、学習者は7000万人いると推定された。当時の江沢民国家主席は、その人数の多さが政権維持の脅威だと考え、99年7月に法輪功の活動を禁止した。同年6月10日、中央指導部が管轄する弾圧専門機関、通称「610オフィス」を設立した。
2005年にオーストラリアに亡命した駐シドニー中国総領事館の陳用林・一等書記官は同年7月、米下院小委員会の公聴会で、中国当局が海外で法輪功学習者を調査、監視、迫害する手口について証言した。
それによると、2000年から法輪功に対する弾圧は海外まで及んだ。すべての中国在外公館に法輪功問題の担当者がいる。シドニーの中国総領事館では陳氏が担当者となり、任務は「オーストラリアの法輪功メンバーを監視、迫害すること」だという。
同総領事館は、反法輪功の専任チームを立ち上げ、総領事自身がリーダーを務めた。アメリカや、法輪功学習者の多い国の中国在外公館にも同様の組織がある。
当時、オーストラリアでの法輪功の情報収集は「約1000人のスパイと内通者」を通じて行われていた。アメリカでも、ほぼ同人数規模のスパイがいる。法輪功学習者がこの2カ国で最も多いからだ。中共政権は、各国政府、政治家、メディア、大学などに向けて徹底的なプロパガンダを展開し、中国当局の弾圧の「合法性」と法輪功の「危険性」を信じ込ませる。
担当外交官のもう一つの任務は、学習者の個人情報を調べ、ブラックリストに載せ、中国に帰国させないことだ。
中共は、新唐人テレビ(NTDTV)など法輪功学習者が海外で立ち上げたメディアを妨害している。また、法輪功を批判する活動にも資金を援助している。大学では、中国人留学生は大使館の指示を受け、反法輪功の活動を行っている。
報告書は、610オフィス自体は「中国(中共)の影響力作戦」の実行者ではないが、海外の法輪功学習者への妨害が当事国にとって内政干渉に当たる、と指摘した。
(翻訳編集・叶子)
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