中国の前副首相に性的関係を強要されたと暴露した女子プロテニスの彭帥選手の安否について、国際社会の懸念が高まっている。中国外務省の趙立堅副報道局長は18日の記者会見で、同選手の所在について「外交問題ではない。状況を把握していない」と述べた。
その後、外務省がウェブサイト上に掲載したこの記者会見の記録から、彭選手に関連するすべての質問が消えている。
彭選手は告発後、消息が不明のままである。中国政府系メディア「中国国際テレビ(CGTN)」は17日、彭選手の女子テニス協会(WTA)宛への電子メールをツイッターで公開した。「自宅で休んでおり、すべては順調だ」などと書かれている。
メールでは、張高麗前副首相から「性的暴行を受けていない」「私は消息不明になっておらず、無事だ」とも主張した。
WTAのスティーブ・サイモン最高経営責任者(CEO)は、電子メールの公開を受け、「彼女の安全と所在について、私の不安はさらに高まった」とする声明を公開した。サイモン氏は「様々な方法で彼女と連絡を取ろうとしたが、すべて無駄だった」と彭選手と連絡が取れない状況を明かした。
サイモンCEOは14日にも声明を発表し、彭選手の告発について「検閲されることなく、徹底的かつ公正、透明な調査を行うべきだ」と求めた。
同CEOは18日、中国で行われる予定のWTAの試合を取り消すことを検討していると明かした。「商業利益よりも大事な問題だ。女性の権利は守られるべきだ」という。
近年、WTAは積極的に中国で展開しており、昨年9大会を開催した。
中国国内で検閲強まる
一方、中国国営メディアなどは彭選手について沈黙を貫いている。インターネット上やソーシャルメディアでも、彭氏に関する投稿は見当たらない。中国SNS微博(ウェイボー)の彭選手のアカウントでは、コメント機能が停止されている。検索エンジン「捜狗(Sogou)」で「彭帥」を入力して検索すると、過去に彭選手が国際テニス大会に参加したことに関する報道だけが表示される。
日本女子プロテニスの大坂なおみ選手は16日、ツイッター上で彭選手の安否について懸念を示した。中国の一部のネットユーザーは微博上で、大坂選手の投稿について言及したが、書き込みは全部削除された。
中国当局は18日、国内で米CNNの放映を一時遮断した。彭選手に関するCNNの報道が国民に知られないように講じた措置だとみられる。
豪シンクタンク、ローウィー研究所のジェニファー・シュー研究員は同日、CNNの取材に対し、中国共産党は彭選手の告発が党にマイナスのイメージを与えたと強く認識していると指摘した。同氏は、CGTNが電子メールを公表したのは「中国当局に対する国際社会の監視の目を逃れるためである」との認識を示した。
国際テニス連盟のスポークスウーマン、ヘザー・ボウラー氏は同日、同連盟は現在、中国テニス協会(CTA)、WTA、国際オリンピック委員会(IOC)と連絡し合っていると明かした。ボウラー氏は、彭選手の告発をめぐり「徹底的かつ透明性のある調査を支持する」と示した。
(翻訳編集・張哲)
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