トランプ前米政権の元大統領補佐官(通商担当)であるピーター・ナバロ氏は最近、ホワイトハウスでの実体験を綴った『In Trump Time: A Journal of America’s Plague Year(仮邦訳:トランプの時代=アメリカの疫病年代記)』を出版した。
本書では、2019年から2020年にかけてのパンデミックと、その影響に対するトランプ政権の取り組みに焦点を当てている。他にも、ナバロ氏がトランプ前大統領の製造業政策「アメリカ・ファースト」に協力したことや、ワクチンの遅延の根本原因、2020年米大統領選を取り巻く状況などのトピックが取り上げられている。
ここで特筆すべきは、ナバロ氏が新著の中で、パンデミックで中国共産党政権が犯した「5つの大罪」についてまとめていることだ。中国共産党がいかにしてウイルス感染をパンデミックに変え、世界に深刻な災害をもたらしたかを明確かつ簡潔に説明している。
第一の罪は、パンデミックの可能性を60日以上にわたって世界に隠したことである。この間、中国政府は、世界保健機関(WHO)やその事務局長であるテドロス・アダノム氏の協力を得て、世界から隠蔽することができた。これが原因で、世界はパンデミックに備え、食い止めるための最良の時期を失ってしまった。
第二の罪は、中国政府が武漢の肺炎患者から検出され新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム情報を開示しなかった(国内の研究者に検体破棄を求めた)ことである。そのため、ウイルスへの理解、治療法やワクチンの開発などが遅れてしまった。
第三の罪は、中国共産党の隠蔽体質である。中国政府は、ウイルスの発生源を隠すために、初期の感染者が多く発見された武漢の華南海鮮卸売市場を含め、ウイルスの証拠をすべて破壊した。また、中国政府は、武漢のウイルス研究所から物理的・電子的(デジタル)証拠を破壊し、複数の研究者や情報提供者が謎の失踪を遂げた。
第四の罪は、中国政府が、初めて感染者が確認された武漢市を封鎖し、中国国内の移動を制限した一方で、何十万人もの旅行者が中国から世界各国に飛ぶことを許可し、COVID-19を急速に世界に広めたことである。
第五の罪は、中国政府が、これから起こる悪夢のシナリオを事前に知っていたため、医療従事者が使う個人防護具 (PPE) を大量に備蓄し、その一部を世界市場で法外な価格で転売したことである。
中国共産党政権の卑劣な行動からナバロ氏が導き出した結論の一つは、その嘘、ごまかし、悪質な行為がパンデミックを引き起こし、世界中の無数の医師、介護士、救急隊員を死に至らしめたというものであった。同様に、感染した友人や親戚、その他の大切な人たちのことも忘れてはいけない。
ナバロ氏の話を聞いていると、中国共産党の責任追及を考えさせられる。ナバロ氏は、パンデミックの起源、コスト、地政学的影響を調査するための大統領委員会の設立に向けた取り組みや、米国の国内総生産に相当する約20兆ドルと推定される損害賠償額を求める賠償法案などについて語った。しかし、残念なことに、これらの施策はトランプ政権の幕引きによって中断された。
これらの取り組みの意義は明確で、正当なものである。ナポレオン戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦といった大規模な戦争の後、主要国が一堂に会し、このような大惨事がいかにして起きたのか、そしてどのようにすればそれを回避できるのかを検討した。壊滅的なパンデミックの発生は、大規模な戦争の影響の多くと似ている。したがって、パンデミックを研究し、次のパンデミックの発生を回避または軽減するために正義を貫くことが重要である。
このような取り組み(パンデミックに対する責任追及)を成功させるためには、米国政府が主導し、同盟国やその他の国々が支援する必要がある。このプロセスが始まれば、パンデミックの被害を受けた何百万人もの人々が喜んでついてくるだろう。しかし、中国共産党政権はこれを全力で阻止するだろう。彼らは、この取り組みの指導者や支持者を典型的な罵詈雑言で攻撃し、この取り組みを支持する国々に圧力をかけるために、あらゆる手段を講じる。
ナバロ氏の著書は、フランスの文豪エミール・ゾラの有名な公開告発状『J’accuse(私は弾劾する)』を思い起こさせる。この告発は、不正の是正を求めるものである。そのおかげで、上官から冤罪を着せられていたフランス軍のアルフレッド・ドレフュス大尉は、ようやく無罪放免となった。
ナバロ氏の本も同様に価値がある。中国共産党は、感染症をパンデミック化し、嘘で世界を欺き、各国の医療機関がウイルスを理解するのを妨げ、何百万人もの死傷者を出した。今日に至るまで、ウイルスの影響の全容は明らかになっていない。これらの変異株が、従来株と同じように、あるいはそれ以上に致命的な破壊力を持つかどうかはまだ不明である。
もしも正義が果たされ、中国共産党政権が責任を問われるならば、ナバロ氏の努力は報われるだろう。同様に、中国共産党が清算の試みを阻止するのであれば、世界はナバロ氏に感謝しなければならない。彼は、中国共産党政権が行ったこと、それが世界にもたらした代価、そして中国政府の責任を追及するためのトランプ政権の努力を示す貴重な記録を提供したからである。
執筆者プロフィール
ブラッドリー A. セイヤー(Bradley A. Thayer)は、シンクタンク「現在の危険に関する委員会:中国(CPDC)」の創設メンバーであり、『How China Sees the World: Han-Centrism and the Balance of Power in International Politics(仮邦訳:中国の世界観:国際政治における漢民族中心主義と勢力均衡)の共著者でもある。
オリジナル記事:英文大紀元「Navarro’s J’Accuse: Holding the Chinese Regime Accountable for the Pandemic」より
(翻訳:王君宜)
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