駐日ウクライナ大使のセルギー・コルスンスキー氏は26日、ロシアによる武力侵攻が行われれば、外交問題の解決に軍事的手段を使うことを許した世界的な先例を作ることとなり、台湾などの地域で同じような状況が生じる恐れがあると強い懸念を示した。
日本外国特派員協会で会見したコルスンスキー氏は、ウクライナに戦争をする意図はないとしつつ、軍事的準備を整えていると述べた。そしてロシア側と外交交渉を通じて妥結点を模索していると強調した。
ロシアとドイツなどの欧州諸国を繋ぐ天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」については「欧州を恐喝するための政治的手段」であるとの見方を示した。長距離パイプラインが持つ脆弱性を挙げ、「万が一寸断されたら欧州諸国に打つ手はあるのか」と投げかけた。
コルスンスキー氏はまた、欧州で天然ガスなどのエネルギーに対する需要が高まれば、アジアそして日本も必然的に影響を受けると指摘した。
クリミア併合後の2015年、ロシアへの制裁を導入したアジアで唯一の国が日本であり、当時外相だった岸田首相は「事情を理解している」と今後の日本の対応に期待を示した。
中国共産党政権は東欧や中央アジアにまたがる大規模な投資計画「一帯一路」を持っているため、経由する地域での紛争は中共の利益にならないとの考えを示した。
同様に権威主義体制から軍事圧力を受ける台湾情勢をめぐっては「領有権の主張ではなく、武力を使った国境線の変更を許さないという原則に関わる」と強調。「もしロシアの軍事力による推進が許されれば、台湾や尖閣など世界の他の地域でも同様のことが起こるだろう」と強い懸念を示した。
緊迫化するウクライナ情勢では欧米とロシアとの外交交渉が続いている。ロシアは北大西洋条約機構(NATO)不拡大の確約を米国とNATOに要請していたが、ブリンケン米国務長官は27日の記者会見で、この要請を拒否したことを明らかにした。
米国防総省は軍用ヘリコプター5機をウクライナに引き渡す意向を議会に通知し、8500人の米軍即応部隊をNATO部隊の行動開始と共に支援するとした。このほか、ロシアの経済と金融システムに影響する制裁を用意していると語った。
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