衆議院本会議では1日、中国の人権状況に懸念を示す決議が賛成多数で採択された。野党は「中国」や「非難」等の文言が削除されたことに対して批判的な姿勢を示し、中国人権問題には他の主要国議会と同様に党派を超えた強硬姿勢が形成されつつある。
維新の会・藤田文武幹事長は2日の記者会見で、「政府の弱腰対応や配慮により、せっかくの決議文が骨抜きになった」と指摘。「大手を上げて賛同するものではないが、あえて反対するものではない」と述べた。
長年人権問題に取り組んできた立憲民主党の松原仁衆院議員は「かえすがえすも『中国』の甚だしい『人権侵害』に対する『非難』という言葉を削られたことが口惜しい」とツイッターに投稿した。
立憲民主党の泉健太代表は1月21日の会見で、対中非難決議に対する党内合議は「既に去年6月に手続を終えている」と述べ、採決まで与党にすみやかな調整を促していた。
国民民主党は2月1日付の党の声明で「中国政府による新疆ウイグル自治区や香港などにおける人権侵害や力による現状変更の試みは国際社会に対する脅威」であるとし、中国当局に対し人権侵害行為の中止を申し出るよう改めて政府に要請した。
さらに、人権侵害者を制裁する法律や、人権侵害リスクの予防と対策の義務を企業に課す人権デューデリジェンス(DD)法の成立を推進し、人権外交に取り組むとの決意を示した。
日本共産党は機関紙「しんぶん赤旗」の2月2日付の記事で「人権侵害は人間の尊厳を掲げるオリンピック憲章の根本原則と相いれません」と指摘、女子テニスの彭帥選手などの例を挙げ、中国当局に人権を守るよう要求した。
すでにオランダ、カナダ、英国、フランスの各議会と米国務省はウイグル人に対する中国共産党の弾圧を「ジェノサイド」と例え非難している。日本の国会決議は、北京冬季五輪前に発表することで主要国と足並みを揃えた。しかし、決議文の主語のあいまいさには疑問を呈する専門家もいる。
国際政治学者の鶴岡路人慶應大学准教授は「懸念を示す主体が日本ではなく国際社会。要求は人権状況の改善ではなく『国際社会が納得する説明責任』となっている」「人権侵害が発生していることの認定を(日本が)避ける以上は、改善を求めるわけにはいかない構図」とツイートした。
決議はウイグル議連代表を務める古屋圭司衆議院議員らが提出した。産経新聞の報道によると、古屋氏は採択について「一定の成果を上げられた」と評価しつつ、文言の削除については「幅広い政党の了解がいるところが国会決議の難しさだ」と一定の理解を示した。
長尾敬元衆議院議員は1日出演のオンライン番組内で、中国人権決議は参議院でも採択に向けた調整が行われていると明らかにした。
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