国際専門家らはこのほど、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参加した途上国で二酸化炭素(CO2)排出量が増えていると批判した。米ラジオ・フリー・アジア(RFA)が15日、報じた。
米デンバー大学ジョゼフ・コーベル国際研究大学院のアルビン・カンバ(Alvin Camba)助教授は15日、米シンクタンクのウイルソン・センターが開催した討論会に参加した。カンバ氏は、「途上国のインフラ建設ラッシュと(一帯一路に関わる)多くの国の政策は、明らかに中国の発展計画に追随していることがわかる。フィリピン、インドネシア、ベトナム、パキスタンでは、(中国と)似た発展計画を目にする」と指摘した。
同氏は、中国国内と同じインフラ建設を行うことで、「鉄やセメントなどへの需要が自ずと高まる。これらの国の自然環境が脅かされることになる」と述べた。
カンバ氏が提示したデータによると、フィリピンが「一帯一路」に参加した後、特に2016年以降、フィリピンで新しく設立された中国企業の数が急増した。現地の米国や日本などの企業より多い。中国企業の多くは不動産関連事業に携わる。同時に、中国からのフィリピン向けセメントや鉄鋼材料の輸出は、「日本、韓国、ロシアなどと比べてはるかに多い」という。
香港科技大学公共政策大学院のアンジェラ・トリット(Angela Tritto)助教授の研究では、インドネシアが「一帯一路」に参加して以降、中国当局のインドネシアへの投資モデルが変化した。参加前、当局はインドネシアで主に鉱石などの採掘に投資していた。参加後は、同国の石炭火力発電所や金属製錬工場などへの投資を拡大したという。
トリット氏の研究データでは、「一帯一路」に関わる前、インドネシアには石炭火力発電所が7カ所あった。参加後、インドネシア政府の発表では同様の発電所が新たに17カ所増えた。
「うち一部の石炭火力発電所は公共用エネルギーを生産しているわけではない。民間鉄鋼製造大手にエネルギーを提供しているのだ。これらの発電所の技術は高くないため、環境にマイナスの影響を与えている」
トリット氏によれば、現地の住民は「インドネシアの環境基準は元々低いのに、それでも中国資金を受けているこれらの発電所は環境基準を守らない」と不満を抱いている。住民らは環境汚染による健康被害を心配しているという。
米NGO団体、グローバル・エナジー・モニター(Global Energy Monitor、GEM)は20年にも同じ見方を示した。
GEMは、中国当局が16年にパリ協定に署名し温室効果ガス排出量の削減に努めると国際社会に向けて宣言した一方で、中国国有企業は「一帯一路」を通じて海外石炭火力発電所への投資を増やしているとし、当局の言動不一致を非難した。
科学ニュースサイト「Phys.org」20年12月の報道は、中国当局がジンバブエからインドネシアまで、数十カ国の石炭火力発電所に資金を提供し、主要先進国を上回る排出量を占めていると警告した。GEMの責任者であるクリスティーン・シアラー(Christine Shearer)氏は「Phys.org」に対して、一部の石炭火力発電所は「30年以降も何年も稼働する可能性がある」とし、「気候変動と封じ込めるための各国の取り組み」を脅かすと警告した。
中国の習近平国家主席は20年9月、国連総会で「中国は30年までに二酸化炭素排出量をピークアウトさせ、60年までにカーボンニュートラル(炭素中立)の実現を目指す」と宣言した。
カンバ氏とトリット氏は、フィリピンやインドネシアなどのエリート層はCO2排出量削減を重要視しておらず、中国側の投資を歓迎していると指摘した。
(翻訳編集・張哲)
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