ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、国会でリモート演説を行い、日本の迅速な援助に感謝の意を表した。ロシア軍による侵略行為を非難し、ミサイル攻撃等により多くの民間人が犠牲となっているとの現状を伝えた。侵略を阻止できなかった既存の国際機関に代わるツールを新たに作る必要があると訴えた。
ゼレンスキー氏は演説で、日本がすぐに支援の手を差し伸べたことに感謝の意を表した。アジアで最初にロシアに制裁を課した国であるとし、その継続を求めた。
ロシア軍による原発占領
ゼレンスキー氏は、ロシア軍によるチェルノブイリ原子力発電所の占領を非難した。
汚染が著しい「30キロゾーン」にロシア軍が進軍したことで放射性物質を含む粉塵が空気中を舞ったと述べ、「戦争が終わってから、どれだけ大きな環境被害があったのか、調査するために何年もかかるだろう」と訴えた。さらに、欧州最大の原発を含む様々な公共施設が非常に危険な状態に置かれていると述べた。
ロシア軍によるサリンなどの化学兵器や、核兵器の使用についても強い懸念を示した。
侵攻の被害
ゼレンスキー氏は、ロシア軍の攻撃で多数の民間人が犠牲になっていると訴えた。
「1000発以上のミサイルが落とされ、多くの町が破壊された。多くの町では家族や隣人が殺されたら、きちんと埋葬することもできない。埋葬は自宅の庭や道路にしなければならない」。
子供を含む多くの人々が殺害された。多数のウクライナ人が自宅を追われた。ウクライナの北方、南方、東方領土で人口が減少していると語った。
ロシア軍が海を封鎖し、通常の貿易路を封鎖している。海運を封鎖することで他国にも影響を与えるためだと述べた。
新しい安全保障ツール
ゼレンスキー氏は、国際連合や国連安保理などの既存の国際機関がロシアの侵攻を止めることができなかったことを挙げ、侵略を止められる新しいツールが必要だと訴えた。
「国際機関が機能しなかった。国連も安保理も機能しなかった。改革が必要だ」とゼレンスキー氏。「話し合いだけではなく、影響を与えることが必要だ」。
ウクライナ侵攻によって世界が不安定になり、環境と食料面では前例のない挑戦にさらされていると述べた。そして、今後戦争を起こそうとする侵略者を警戒し「平和を壊してはいけないという強いメッセージ」を発出するべきだと訴えた。
責任のある国家が一緒になって平和を守るために努力しなければならないとし、アジアで初めてロシアに圧力をかけた日本に感謝すると述べた。「ウクライナに対する侵略の津波」を止めるために、ロシアとの貿易を禁止し、企業を撤退させるべきだと提言した。
ゼレンスキー氏はまた、全世界が安全保障のために動けるツールが必要だと訴え、その開発で日本のリーダーシップが大きな役割を果たせると述べた。
ウクライナの復興と日本への親近感
ゼレンスキー氏は戦後の復興を見越して、人口が減少した地域の復興に言及した。「避難民が故郷に戻れるようにしなければならない」と述べた。
2019年の大統領就任からまもなくして、自身の妻オレナ氏が目の不自由な子供のために、日本昔話のウクライナ語オーディオブック作成に加わったエピソードを紹介。「ウクライナ人は日本文化が大好き」「距離は遠くても価値観は近い、心は同じように暖かい」と語った。「調和を作り、調和を維持する能力は素晴らしい。環境と文化を守ることは素晴らしい」と述べ、日本文化に対する親近感を表した。
演説の最後には日本語で「ありがとう」と述べ、続けてウクライナ語で「日本に栄光あれ、ウクライナに栄光あれ」と締めくくった。
細田博之衆院議長は大統領の演説に先立ち、ロシアの侵略で犠牲となったウクライナ人に哀悼の意を表した。日本はロシアによるウクライナ侵略を非難する決議を行なっているとし、国際社会と一致結束して協力していく決意があると述べた。
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