国連人権高等弁務官の訪中期間…新疆の弾圧明かす内部文書を公開

2022/05/26 更新: 2022/05/26

新疆ウイグル自治区における中国共産党の人権侵害の最新証拠が明らかになった。中国の人権侵害を調査する共産主義犠牲者記念財団の中国研究ディレクター、エイドリアン・ゼンツ氏は24日、「新疆公安ファイル」と名づけた中国共産党の新疆における「再教育」政策の内部文書を発表した。米英などは改めて中国の深刻な人権侵害を批判した。

明らかになった資料には15人の子供を含む2万人以上の個人情報や、収容施設内で撮影された画像、中国共産党幹部の演説を通じた刑務所内の統制に関する指示がある。匿名の人物が新疆警察・公安のコンピューターサーバーをハッキングして、ゼンツ氏の元に渡されたという。

資料からは拘束された人々が非人道的な管理のもとに置かれていることが窺える。例えば2017年5月の幹部の演説では、拘束した者に「手錠をかけ目隠しをして、必要に応じて足首を束縛する」とあり、同年の別の演説には「数歩でも逃げようとした者は撃つ」よう指示している。

ゼンツ氏の資料は発表前、米英仏独日などの14のメディアに事前提供され、専門家の鑑定や写真に写る人物の情報確認などが行われた上で、世界でほぼ同時に公開された。

トラス英外相は報道後ただちに「衝撃的な詳細だ」と声明を発表。「ウイグル人に対して強制労働のほか信教の制限、親子の引き離し、強制堕胎、集団監禁がおびただしい範囲にわたり行われていることを示している」「英国は国際的なパートナーとともに、中国によるウイグル人イスラム教徒やその他の少数民族に対する酷い迫害を訴え続け、中国の責任を追及することに尽力する」と述べた。

ベアボック外相はこの日、王毅外相とのオンライン会談を行っており、今回の新疆公安ファイルについて取り上げ「透明性のある調査」を要請した。ハーベック副首相兼経済・気候保護相は人権問題の懸念を表明し、対中経済政策を見直して人権問題の優先度を高める方針を示した。

日本政府はこの資料について直接言及していないが、23日に行われた日米首脳会談の共同声明には過去の公式文書同様に「新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する」とある。日米豪印(クアッド)首脳会合の共同声明では中国人権問題に触れていない。

人権高等弁務官訪中の最中 公開された新疆公安ファイル

今回の新疆の資料は、国連のバチェレ人権高等弁務官による23日から6日間の中国視察期間に公開された。しかし、米英はこの視察がウイグル人の拘束や虐待問題解決の一助になるとはみていない。トラス氏は、今回の訪中において長年要求されてきた「完全なるアクセス」が実現しないなら「中国の行動の真実を隠そうとする試みを強調することにしかならない」と指摘した。

米国務省のプライス報道官は国連の中国訪問を「間違いだ」と述べた。「中国が新疆の人権状況について完全で操作されていない評価を行うために必要なアクセスを認めるとは思わない」とし、残虐行為や人道に対する犯罪、ジェノサイド(大量虐殺)の全体像を把握することはできないとした。

中国国営メディアによれば新疆訪問を控えたバチェレ氏は25日、習近平国家主席とオンラインで会談。習氏は「人権を口実に他国の内政に干渉してはならない」と述べ、バチェレ氏をけん制した。同氏と対面式会談をした王毅外相も「人権を政治化せず」と話したという。

バチェレ氏は25日、広州大学人権研究所で演説し、国連人権高等弁務事務所が「人権の多国間主義を形成し、建設的な関与を促進する上で重要な役割を続けることを約束する」と語った。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。