オランダのロベルト・ダイクラーフ(Robbert Dijkgraaf)教育文化科学相はこのほど、同国の大学と中国の大学の協力関係に強い懸念を示した。中国の大学が中国軍と強くつながっていると指摘した。
地元紙デ・テレグラーフ(De Telegraaf)などによると、ダイクラーフ氏は5月25日、同国の独立調査報道メディア「フォロー・ザ・マネー(Follow the Money、FTM)」の調査に応じた際、中国の大学との技術協力は「非常に懸念する問題だ」と述べた。
オランダ国内では近年、中国教育機関との技術協力が単なる協力だけでなく、中国への技術情報の漏えい、また中国政府がオランダの技術を反体制派への監視に利用する可能性がある、などの指摘が上がっている。
FTMの調査では、両国大学間の技術研究プロジェクトのうち、少なくとも400件に軍事利用の可能性がある。プロジェクトには人工知能(AI)、ロボット工学などの研究も含まれる。FTMはこれらの中国の大学は中国軍と関係があるとして「危険だ」と警告した。
FTMが主導し、他の欧州報道機関10社が参加する調査プロジェクト「中国科学調査(China Science Investigation)」によると、2000年以降、中国の軍事関連大学が欧州の大学との間で2994件の研究プロジェクトを行っている。
兵器技術、無人機、半導体、自動運転車などの重要分野に及んでいる。
オランダメディア「RTLニュース」は、中国側が海外の大学や研究機関から技術、ノウハウを取得するために莫大な資金を注ぎ込んだと報じた。
同国のシンクタンク、クリンゲンダール国際関係研究所の防衛問題専門家、ダニー・プロンク(Danny Pronk)氏は、オランダ及び欧州の重要技術はすでに中国に流出したとの認識を示し、中国政府は欧州の大学から得た技術で「中国軍の近代化を実現させているだろう」とした。
いっぽう、FTMの調査によると、オランダのロッテルダムに本拠を置くエラスムス大学医療センター (Erasmus University MC)、ライデン大学医療センター(LUMC)、オランダ法科学研究所(Netherlands Forensic Institute)は、中国公安部と間接的、また直接的な関係がある。
中国側の研究者は中国警察当局に雇われていたという。また中国との7つの研究プロジェクトは、新疆ウイグル自治区の住民の血液サンプルが使われた。エラスムス大学医療センターは、ウイグル人が自らDNAサンプルの提供に志願したと中国側から説明を受けたとした。
FTMなどは、中国政府がオランダと開発したDNA技術を利用してウイグル人などの少数民族、宗教的少数派に対する抑圧政策を強化する恐れがあると批判した。
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