攻撃型無人機、自衛隊が導入急ぐ理由…ゲームチェンジャーとなりうる2つの優位性

2022/09/14 更新: 2022/09/14

無人機は「革新的なゲームチェンジャー」。防衛省は23年度予算の概算要求で強調した。島嶼防衛の重要性が増すなか、新型地対艦ミサイルや極超音速ミサイルの開発と並行して、攻撃型無人機の研究と導入を進める方針だ。航空自衛隊出身の軍事専門家は大紀元の取材に対し、無人機は従来の兵器にはない2つの優位性があると指摘した。

攻撃型無人機が持つ特有の性能

読売新聞は14日付の報道で、防衛相が島嶼防衛の強化のために外国製攻撃型無人機を試験導入する方向で調整していると報じた。将来的には国産化し、配備規模は数百機に上るという。防衛省は無人機などの「早期取得・運用開始が必要」と導入を急ぐ。

爆薬や兵器を搭載した攻撃型無人機は、ミサイルなど既存の兵器と比較してどのような優位性を持つのか。軍事専門家で元航空自衛官の鍛治俊樹氏は大紀元の取材に対し、無人機はミサイルと比して探知が困難だと指摘する。

「(既存の防空システムは)ミサイルを防衛できるのに、UAV(無人機)はなかなか落とせない。しかも高度数十メートルを飛行でき、レーダーにも探知されにくい」

ドローンのこのような性質はウクライナ戦場でも明らかになっている。鍛冶氏によると、無人機はロシアの高性能な対空ミサイルシステム「S-400」でさえもすり抜けた。

ミサイルを発射するロシアのS-400長距離対空ミサイルシステム。2020年9月撮影 (Photo by DIMITAR DILKOFF/AFP via Getty Images)

鍛冶氏はまた、通常のミサイルは標的を確認してから発射するが、攻撃型無人機は飛行しながら標的を探す(索敵)ことができると述べた。標的がいると思われる地点の上空で留まり(滞空)、標的を発見すれば即座に攻撃することができる。

防衛省は無人機等を運用することで、人的損耗を抑えつつ、「非対称的に優勢を獲得」することが可能だとしている。さらに警戒監視や情報収集などに運用することで、「隙のない警戒監視態勢などを構築することが重要」だと強調した。

自衛隊員の安全リスク削減

自衛隊が無人機の導入を進めるもう一つの理由は、人的損耗を避けられるためだ。無人機であれば、管制室を攻撃されなければ人員に支障はなく、他の機体に操縦を切り替えることで再出撃できる。

通常の航空機の場合、墜落または撃墜されたときにパイロットが死傷するリスクがある。鍛冶氏は、無人機であれば撃墜されても人的損失がなく、心理的負担が少ないと指摘する。

同様の発想から、大きな危険を伴う機雷除去作業に対応可能な水上無人機(USV)の整備も方針として示されている。防衛省は、水上無人機を最新式の「もがみ」型護衛艦(FFM)に装備することで、機雷の敷設された危険な海域に進入することなく機雷を処理できる能力を付与する考えだ。

防衛省は23年度予算の概算要求のなかで、「無人アセット防衛能力」として、攻撃型無人機などの無人兵器を装備する方針を示した。具体的な金額は明示せず、事項請求として予算を突き詰める。

政府は国家安全保障戦略等の戦略3文書のなかで、無人機等の整備・開発を行う方針を示してきた。現在の中期防衛力整備計画(中期防)でも無人機に関する記述は複数確認できる。

無人機を巡る「矛と盾」

ウクライナ戦場では双方によって無人機が盛んに使用されている。鍛冶氏は各国が勇んで無人兵器の開発に乗り出す現状について、「ロボット兵器」の時代が来るのではないかと語った。

軍事専門家の鍛冶俊樹氏(王文亮/大紀元)

いっぽう、西側先進国の無人機が独裁政権の手に落ち、コピーされるケースもあるという。

「10年ほど前、米国の偵察型無人機がイランに押収された。イランはコピー品を作成した。ミサイル技術を模倣するのは困難だが、無人機は仕組みが単純なだけに模倣が容易だ」

鍛冶氏によると、その後無人機はイランから中国に渡った。中国はコピー商品を生産し、その性能は米国製を上回っているとも言われている。

また、人員の損耗を抑えられるという無人機のメリットは攻勢側に有利だという。「人が死ぬことがないから攻める側に有利だが、守る側にとっては結構厄介だ」と鍛冶氏。「専守防衛がますます難しくなるだろう」。

鍛冶俊樹

軍事ジャーナリスト。大学卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、11年にわたり情報通信関係の将校として勤務。著作に「戦争の常識」(文春新書)、「領土の常識」(角川新書)など。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
関連特集: 日本の防衛