安倍元首相の遺志を継ぎ、花を咲かせたい…デジタル献花に52万人 実行委員が語る想い

2022/10/02 更新: 2023/06/26

「安倍さんが戦いの最前線で亡くなった今、残された我々がやるしかない」。大紀元の取材に対し、デジタル献花プロジェクトの実行委員は今の心境を語った。安倍元首相の遺志を継いでいきたいとの思いを持つ多くの方が弔辞を寄せていることも非常に印象的だったと振り返る。

安倍元首相を静かに見送りたい方の受け皿を作る。その一心でスタートしたデジタル献花プロジェクトには、最終的に52万429人からの献花が寄せられた。立ち上げの中心となったのは20代30代の会社経営者たち。費用は有志で出し合った。

「献花や弔辞を送ることによって気持ちの整理がついた」とのコメントも多いと実行委員は語る。「安倍さんに弔意を示すだけではなく、安倍さんが、国民が抱いている純粋な思いをつなげてくれたような、そういう場になったと、強く感じた」。

デジタル献花のウェブサイトに流れる「花は咲く」。プロジェクトを通して見えてきたのは、安倍元首相の遺志を継ぎ、芽を吹かせ、花を咲かせようとする人々の決意だった。

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――デジタル献花プロジェクト立ち上げのきっかけとは。

安倍さんが凶弾に倒れてから、色々なところに献花台が設置され、多くの方が花を手向けた。しかし、それらの献花台が比較的早い段階で撤去されてしまったため、弔意を示したいのに場所がなく、弔意が宙に浮いてしまっているような方が多くいたのではないかと考えた。

また、安倍さんを静かに見送り、安倍さんの死を静かに悼みたいと思っている方も全国に多数いるのではないかと思った。声を挙げないため、なかなか目立たないけれど、実は大勢いらっしゃる。そのような方の弔意の受け皿を作ることが必要だと思い、このプロジェクトを立ち上げた。

――一種のサイレントマジョリティーなのか。

多くいらっしゃるのではないかという想定の上で、このプロジェクトを立ち上げた。テレビが取り上げない中で、50万人の方がデジタル献花した。やはり大勢の方が安倍さんを慕っていて、弔意を示したいという純粋な気持ちをお持ちだったと思う。

デジタル献花8万人目の方の弔辞(安倍元総理デジタル献花プロジェクト提供)

――九段坂公園での献花には幅広い年齢層の方が参加した。

デジタル献花される方も年齢層が幅広い。10歳未満の子供から、80代の方まで、本当に幅広く思いを寄せていただいた。改めて安倍さんという方は国民から広く愛されていた政治家だったと思った。

――メディアでは安倍元首相亡き後も「もりかけさくら」問題を放送していた。

我々のプロジェクトについて、大手テレビ局の番組から取材は受けていたが、色々な事情で報道されなかった。実際に番組を見る限りは、(安倍元首相の国葬が)相当分断しているという視点から放送がなされている印象だ。

人数が全てではないが、デジタル献花は50万人が参加しているので、ニュースバリューとしてはきちんとあると思う。それを取り上げずに、分断や対立の様子を中心に番組を構成するのは残念だ。

――立ち上げに際して大変だったことは何か。

四十九日に当たる8月25日にプロジェクトを立ち上げたが、当日のアクセスが非常に多かった。国葬儀の前日から翌日にかけても、アクセス数が急増した。集中的なアクセスに対応し、サーバーがパンクしないようにする作業を行なっていた。これが非常に苦労した。

全体の献花数と比較してわずか0.2%程度だが、誹謗中傷のような投稿もあった。安倍昭恵夫人には全てのメッセージを後ほどお渡しするので、不適切な投稿のチェックも結構苦労している。人の目で50万人分を確認する作業だ。責任を持ってしっかり取り組みたい。

――9月8日に昭恵夫人にメッセージをお渡しした際、夫人はどのようなお言葉をかけられたのか。

昭恵夫人に確認ができないままプロジェクトをスタートしたので、夫人がどのようにお考えなのか、少し不安だったところもあった。9月8日の月命日に面会した際には、一つひとつ丁寧にメッセージをお読みになられて、多くの方が時間と労力までかけてメッセージまで書いてくださっていることに非常に感謝しておりました。

(夫人が)感謝していたので、我々としてもやってよかったのだと、その時改めて思った。献花の締め切り後にも、昭恵夫人に改めて最終報告という形でお伺いする。

――献花プロジェクトの今後のご予定について。

当面はメッセージを閲覧できるようにしたいと思う。実は、メッセージを本にしてくれないか、という話も各方面からいただいている。何をするのか全く決まっていないが、場合によっては本にまとめることもあるかもしれない。

全部のメッセージを載せると50万ページになってしまい現実的ではないので、本にする場合には一部ピックアップすることになるだろう。それともデジタルでもっと見せ方を工夫するのか。昭恵夫人にもご相談の上決めていきたい。

デジタル献花9万人目の方の弔辞(安倍元総理デジタル献花プロジェクト提供)

――本として出版することにも意義があるのではないか。

デジタル空間にとどまらず、思いのこもった手で触れられるものを作ることも我々の責務なのではないか、と思っている。その場合はクラウドファンディングなどの形で費用を捻出しなくてはならないが、色々と考えてみたい。

――デジタル献花サイトのBGMに「花は咲く」を選ばれた理由は。

安倍さんを一番よく表している曲だと思った。音色も安倍さんの人柄を写していると思う。

――安倍さんが弾くピアノの音色には色々と感じさせるものがある。

安倍さんならではの音色だと思う。技術的な上手い下手ではなく、人柄が滲み出るような音色になっていて、安倍さんを非常によく表した曲だと思う。

「花は咲く」は、東日本大震災の被災者に向けた音楽ということもあり、安倍さんがピアノで弾くに当たって選曲されたということは、被災地への思いも当然あると思う。安倍さんの思いもよく現れている曲だと思う。

また、昭恵夫人の誕生日にサプライズで披露したとの報道もある。安倍さんは60年ぶりにピアノを練習したという。ご自身のこの曲にかける想いも相当あったのではないだろうか。

――デジタル献花に寄せられた弔辞について。

弔辞については、いくつかをTwitterでも共有した。安倍さんの遺志を継いで、日本のために努力していくというメッセージが全体的に非常に多い。若い層を中心にそのようなメッセージが多いことが非常に印象的だった。

――昭恵夫人は増上寺の葬儀で、安倍元首相が多くの種をまいたと語った。その種が芽を出したということか。

芽が出てきていると思う。逆に安倍さんがそのような形で亡くなったことで目が覚めた、芽を出さなければと思った方が多いのではないだろうか。

私自身もその一人だ。安倍さんがご存命だった頃は、恐らく無意識に甘えていた部分があった。安倍さんがいるからこの国は大丈夫だろうというような、非常に抽象的で漠然とした安心感があったと思う。

先日ツイッター上でシェアした22歳の方の弔辞にもある通り、我々は(安倍さんが)与えてくれた安心感に甘えていたということを深く実感させられた。

デジタル献花した22歳の方の弔辞(安倍元総理デジタル献花プロジェクト提供)

安倍さんが戦いの最前線で亡くなった今、残された我々がやるしかない。しっかりと安倍さんの遺志を継いで、芽を吹かせ、花を咲かせるということが大事なのだと私自身も思っている。また、同じような思いを持った多くの方が弔辞を寄せていることが非常に印象的だった。

菅元首相も弔辞の中で、20代、30代の方について言及した。デジタル献花だけではなく、一般献花でも若い世代の姿がより目立ってきているように感じる。

――献花プロジェクトを通して気づいたことは。

我々は安倍さんに対する思いの受け皿としてプロジェクトを立ち上げた。実際にはデジタル献花をされた方が、献花や弔辞を送ることにより、自分自身の気持ちの整理がついた、というコメントも多い。

他の方の弔辞を読んで、心が洗われたという声もあった。さらに、我々プロジェクト実行委員に対する感謝の言葉も非常に多い。安倍さんに弔意を示すだけではなく、安倍さんが、国民が抱いている純粋な思いをつなげてくれたような、そういう場になったと、強く感じた。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
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