イタリアの研究者らが行なった最新の研究により、ヒトの母乳から初めてマイクロプラスチックが検出されたことがわかった。乳児に与える健康被害について懸念が広がっている。論文は学術雑誌「Polymers」に掲載された。
マイクロプラスチックとは、直径5ミリ未満のプラスチック粒子を指す。
研究者らは出産後1週間が経過した34人の女性を対象に母乳を採取し、ラマン分光顕微鏡で分析した。その結果、26人の女性から2~12マイクロメートルのポリエチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレンなどのマイクロプラスチックが検出された。
また、プラスチック容器に入った飲食物の摂取やプラスチックを含むパーソナルケア製品の使用などとの因果関係は認められなかったとした。一方で「マイクロプラスチックは普遍的な存在であり、人体への影響は避けられない」と述べた。
研究者らは2020年に行った別の研究で、ヒトの胎盤からマイクロプラスチックが検出されたことと、今回の研究結果を踏まえて、「乳児という極めて脆弱な集団に対してリスクが考えられるため、大きな懸念を抱いている」と述べた。
「授乳中の母親が摂取した食品、飲料、パーソナルケア製品に含まれる化学物質は、胎児に移行し、毒性を発揮する可能性がある」とした。
母乳育児のメリットはデメリットを上回る
イタリアのマルケ工科大学のバレンティーナ・ステファノ氏は、母乳育児のメリットが、マイクロプラスチックを取り込むことのデメリットを上回ると訴える。
実際、母乳には乳幼児に必要な栄養素がすべて含まれているほか、健康な歯の基礎作り、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを減らすなどの優れた点が挙げられる。
「子どもの母乳育児を減らすのではなく、国民の意識を高めて環境汚染を減らす法律を推進すべきだ」とステファノ氏は英紙ガーディアンに語った。
赤ちゃんの体内には「成人の10倍以上」のマイクロプラスチック
2021年9月に米国化学会のオープンアクセス論文誌に発表された別の研究では、乳児の体内には成人の少なくとも10倍以上のマイクロプラスチックが存在する可能性があると述べた。乳児が這うカーペットの上にも、マイクロプラスチックが含まれていると指摘した。
今年4月には、英国のハルヨーク医科大学の研究チームが生きている人間の肺から初めてマイクロプラスチックを検出したと発表した。最も多く見つかったマイクロプラスチックはポリプロピレン(PP)とポリエチレンテレフタレート(PET)で、微粒子が到達しにくいと思われる肺の下部まで達していた。
(翻訳編集・徳山忠之助)
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