10人が死亡した新疆ウイグル自治区ウルムチ市のマンション火災をきっかけに、上海や北京など中国各地で、政府の新型コロナウイルス対策への抗議活動が起きている。中国では共産党の一党支配のもと厳しい言論統制が敷かれているため、こうした大規模抗議活動は極めてまれだ。
しかし、これまでも草の根運動を通して、中国国民は民主主義や自由を訴えてきた。米国の人権団体フリーダムハウスは14日に報告書を発表し、政権による長年の検閲と社会維持にもかかわらず、「街頭や地域、横断幕、壁、サイバースペース、集団、個人で」抗議活動が毎日行われていると指摘した。
フリーダムハウスは、データベース「China Dissent Monitor(CDM)」を基に文章にまとめた。CDMによれば、2022年6月~9月に全国で記録された計668件の抗議活動を記録し、国民が住宅プロジェクトの遅延や新型コロナ政策に抗議している。一方、当局の弾圧はこうした抗議活動の4分の1で確認された。
白い紙を掲げ無言の抗議の意を表す「白紙革命」と呼ばれる中国の抗議デモも同サイトは観測しており、少なくとも11月26日から28日にかけて中国全土で少なくとも27件行われたと推定した。
さまざまな反抗の形
CDMのデータは、中国のデモの多様性を示している。中国本土の人々は、個人の小さな抵抗行為から様々な形態の集団行動まで、オンラインとオフラインで様々な方法を模索している。
CDMのデータにある636のオフラインの抗議運動に、6~9月の4カ月で少なくとも8775人が参加した。うち、214件(32%)が住宅プロジェクトの遅延、110件(17%)が給与と福利厚生、106件(16%)が不正に抗議していた。
668件の抗議活動うち、住宅建設プロジェクトや労働争議が半数を占めたが、詐欺、土地権利、ゼロコロナ政策、国家暴力などさまざまな問題も含まれている。
この調査から判断して、フリーダムハウスは、「6月以降、ほぼすべての省、直轄市で抗議行動が起きている」とツイートした。
さまざまな抑圧の形
中国共産党はこうした抗議運動をさまざまな形で取り締まっており、特に信仰団体に顕著に現れている。CDMデータベースに記録された抗議運動の2%を占めるに過ぎないが、6%が弾圧を受けている。
「これは信仰団体の活動に対する統制の厳しさを反映している」と報告書は指摘する。
記録されている弾圧には、拷問、処刑、罰金、移動制限、尋問、追放、監視、逮捕、拘留、妨害などがある。
CDMプロジェクトリーダーであるケビン・スラーテン氏は、弾圧がよく行われるのは、その行動が直接政権を脅かすからではなく、「集団かつ公権力に挑戦するという行為を、党が潜在的脅威として扱うからだ」と述べた。村役人や有力企業が不正に関与しており、抗議者たちが譲歩を勝ち取った場合は、特に潜在的脅威になると指摘した。
さらに「すべてのレベルの統治に『社会の安定』が求められる。その執行能力は党幹部昇進のために考慮される最高の指標の一つである」「政権の目標は市民の動員力を低下させることだ」と述べた。
報告書は、概説されている大半の統計は「大幅に過小評価されている可能性が高い」とした。その理由として、独裁政権下のメディア規制や反対意見・抗議行動についての国内情報収集に伴うリスクを挙げた。
中国で活動する各国記者で構成する中国外国人記者クラブ(FCCC)が1月に発表した報告書によれば、外国人記者の99%は、中国での取材状況は国際的な水準を満たしていないと認識している。「外国人ジャーナリストは、オンラインや、北京や上海などの都市で日常的に監視されている」と記した。
(翻訳・大室誠)
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