米国務省は9日、中国伝統気功・法輪功の学習者に対する迫害に関与したとして、中国高官とその親族に制裁を科したと発表した。バイデン政権下で法輪功迫害に関与したとして制裁を受けた中国高官はこれで2人目。ブリンケン国務長官は「すべての人が差別なく自由に行使できるべき権利」を侵害したと非難した。
制裁対象となったのは、中国南西部・重慶地区刑務所で副所長と務めていた唐勇氏とその親族。第7031条に基づき今後、米国への入国が禁じられる。国務省は、唐氏が「法輪功学習者への恣意的な拘束という重大な人権侵害を行なった。これは深刻な信教の自由の侵害にも相当する」と指摘した。
国務省が世界人権デーに先立ち発表した制裁対象リストには、唐氏のほかチベット人への人権侵害に関わる中国高官や、北朝鮮国境警備総局、イランの法執行部隊司令官、ロシアの選挙管理委員会ら40あまりの個人と団体が含まれる。
当時の中国国家主席・江沢民が1999年7月20日に法輪功への弾圧政策を実施して以来、学習者は不当な投獄や拷問、臓器収奪の犠牲者となっている。中国全土にある収容施設には、現在も数百万人が収容されている。
法輪大法情報センターのスポークスマン張爾平氏は、米国が法輪功学習者への迫害に関与している中国共産党幹部を制裁したことに支持を示し「国際社会もこれに続くよう呼びかける」と述べた。
いっぽうで国際NGO「法輪功迫害追跡調査国際組織(WOIPFG)」の汪志遠会長は、中国で法輪功学習者が直面している虐待の規模や蛮行を考えると、米国の行動は十分とは言えないと指摘した。ウイグル迫害に対する制裁同様に、中国全土で広範にわたって行われている法輪功迫害にも厳しく対処すべきだと強調した。
筆舌に尽くしがたい拷問
法輪功情報サイト「明慧ネット」の統計によると、人口3200万人を超える中国最大の都市・重慶で、当局は信仰を理由に少なくとも数百人の法輪功学習者に不当な判決を下しているという。同サイトは、中国共産党による悪虐非道な弾圧の詳細を報告している。
重慶社会工作職業学院(元重慶市民政校)の副教授・張魯元さんは、労働教養強いられたほか、洗脳班に送られるなど数々の迫害を受けた。29本の歯を失い、足は変形した。自力で歩くことも食べることもできなくなり、2018年に76歳で亡くなった。張さんの夫も迫害により2004年に命を落としている。
国有光学機器工場に務めていた劉范欽さんは、2003年に投獄された同僚の法輪功学習者が受けた性的虐待を海外メディアに暴露したことで迫害された。30時間以上手錠をかけられたことで手に障害を負った。後に重慶女子刑務所に9年間収容され、毎日17時間低いスツールに座らせられるなどの虐待を受けた。
拷問に加担した女性看守は、心身ともに衰弱しきった劉范欽さんに「牢屋で死んでも構わない。80元(約1500円)で処理してあげる」と言い放ったという。1500円は火葬代と見られる。
バイデン政権は2021年5月に「610」弁公室の元主任・余輝氏とその親族に制裁を科した。トランプ政権下では福建省厦門市警察梧村派出所の黄元雄所長を制裁対象とし、入国を禁じている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。