日弁連「スパイ防止法」に警鐘

2026/02/27 更新: 2026/02/27

日本弁護士連合会(日弁連)は2026年2月20日、政府や各政党が制定に向けて動いているいわゆる「スパイ防止法」(インテリジェンス機関強化法制及び外国代理人登録制度)に関する意見書を取りまとめ、同月24日に内閣総理大臣や衆参両院議長らに提出した。日弁連は、これらの制度が憲法で保障された人権を侵害する恐れがあるとして、制度の必要性も含めた慎重な審議を強く求めている。

意見書の3つの柱

日弁連が公表した意見書の趣旨は、大きく以下の3点に集約される。

  1. 第三者機関による監督の制度化: インテリジェンス機関の監視権限とその行使について厳格な制限を定め、独立した第三者機関による監督を制度化すべきである。
  2. インテリジェンス機関増強への慎重な審議: 機関の統合機能強化や格上げなどにつながる立法は、憲法上の重要な人権侵害につながる可能性があるため、必要性等について慎重な審議を行うべきである。
  3. 外国代理人登録制度への慎重な審議: 当該制度については、自衛隊法等の既存法制で一定程度の対応が可能であること、また重大な人権侵害につながる恐れがあることから、慎重な審議を行うべきである。

市民監視の拡大と外国代理人登録制度への懸念

現在、自由民主党、日本維新の会、国民民主党、参政党などの間で、「スパイ防止法」の制定やインテリジェンス機能の強化を目指す動きが活発化している。しかし日弁連は、スパイ防止という名目で機関が強化された場合、その調査対象が一般市民にまで及び、プライバシー権や思想・良心の自由、表現の自由などが侵害される危険性があると指摘している。過去には公安警察や自衛隊情報保全隊による市民運動等に対する監視が、裁判でプライバシー侵害と認定された事例も存在している。

また、外国政府等の利益のために活動する者に登録を義務付ける「外国代理人登録制度」についても強い懸念を示している。適用要件が曖昧であれば、報道機関が外国政府関係者との関係を登録させられ取材源の秘匿ができなくなる恐れや、弁護士が外国政府からの依頼を登録させられることで守秘義務と抵触する恐れがある。これらは、国民の知る権利や裁判を受ける権利への重大な侵害につながると警告している。

既存ルールの活用で防げている実態と新法の不必要性

日弁連は、日本においてスパイ対策が一切不要であると主張しているわけではない。2000年代初頭のボガチョンコフ事件など、過去に外国政府関係者が関与した情報漏えい事件が発生した事実を踏まえ、すでに重要な対策が講じられてきたと指摘する。

具体的には、各国駐在武官等と接触する際の事前了解を義務付ける「接触要領の制度化」といった未然防止策や、2001年の自衛隊法改正による「防衛秘密制度」の導入(罰則強化)などである。なお、政府はその後2013年に「特定秘密保護法」も制定しているが、日弁連はこれについては「知る権利を侵害し、国民主権を形骸化するもの」として、一貫して廃止を求めている立場である。

日弁連が重視しているのは、自衛隊法の改正や実務的な接触ルールの厳格化といった「既存の取り組み」によって、すでに十分な成果が上がっているという事実である。実際、これらの対策が行われて以降、防衛省等における情報漏えいは職員の規範意識の欠如等によるものが主となり、外国政府関係者からの働きかけによる漏えい事案は報告されなくなっていると述べている。

日弁連は、既存の枠組みですでに一定の実効性が確保されており、それが不十分であるという具体的事例もない現状において、重大な人権侵害を引き起こしかねないインテリジェンス機関の増強や新たな「外国代理人登録制度」の導入に踏み切ることは正当化できないとし、その必要性について徹底した慎重な審議を行うべきであると結んでいる。

大紀元日本の速報記者。東京を拠点に活動。主に社会面を担当。その他、政治・経済等幅広く執筆。
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