米国の上院議員2人は9日、幼少時に米国に入国した不法移民に合法的な地位を与える「2023年ドリーム法」を提出した。この法案により、約200万人に合法的な永住権が与えられることになる。いっぽうで、財政を大きく圧迫するのではないかとの懸念も上がる。
法案は、上院司法委員会のディック・ダービン委員長(民主党)と司法委員会のリンゼイ・グラハム議員(共和党)が提出した。両氏は、不法移民を強制送還から保護する同様の法案を過去3回、議会で提出しているが、いずれも可決には至っていない。
2023年ドリーム法が成立すれば、およそ190万人の不法移民が米国で生活し、働くための法的地位を得ることが可能になる。これには、オバマ政権が2012年に不法移民保護を目的として実施した「若年移民に対する国外強制退去の延期措置(DACA)」プログラムの申請者約60万人が含まれている。
いっぽう、不法移民受け入れには課題も残る。グラハム氏は、ドリーム法を実現するためには、厳格な移民法改革が必要だと示唆した。
グラハム氏は10日に発表した声明のなかで「私はドリーマー(不法移民)の救済を支持し続ける。しかし民主党の同僚に理解して欲しいのは、先ずは壊れた国境を修復し、不法移民の津波に対処しなければならないことだ」と強調した。
「ドリーマーは、親に連れられてきた未成年であり、米国は彼らの故郷となった。彼らは、多くの公的支持を得ている不法移民の一群を代表している。しかし彼らを救済するためには、まず国民に絶えることのない不法移民の波が止むことを確信させなければならない」
納税者にのしかかる移民政策費
ドリーム法により、190万人が米国市民権を取得すると推定されているが、実際の数字はさらに多くなると予想される。新たに帰化した米国人も含め、米国では家族がスポンサーとなって永住権を申請することが可能になるからだ。
米国立医学図書館に掲載された2014年の研究によると、1981年から1985年の間に米国に入国した移民100人あたり、平均260人の家族のスポンサーになっていた。この数字は、1996年から2000年にかけて345人の家族に急増した。
ダービン氏とグラハム氏は、2017年からドリーム法を提案している。議会予算局(CBO)の報告書によれば、2017年のドリーム法で200万人の不法移民に合法的な地位を提供した場合、10年間で259億ドルの追加コストが納税者に発生すると試算されている。
ドリーム法の資格条件
2023年ドリーム法の条件付永住資格を得るには、不法移民が17歳以下で入国し、法案制定前に継続して4年間米国に居住していることを証明する必要がある。また、大学に入学したこと、高校卒業資格を得たこと、あるいは取得過程にあることを示す必要がある。
さらに、「善良な道徳的人格」を示し、政府の身元調査に合格するほか、重罪などの前科があってはならないことも条件に含まれている。
条件付永住権保持者は、英語の読み書きのほか、大学の卒業、2年間の兵役、または3年間就労するという3条件のいずれかを満たせば、永住権を取得することができる。
ただし、条件付永住資格を得た者が重大な犯罪を犯したり、法案の規定を満たさない場合は、永住権を失う可能性があるとした。
(翻訳・大室誠)
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