日本とフィリピン、防衛関係を鋭意強化へ

2023/02/22 更新: 2023/02/22

日本とフィリピンの首脳は2023年2月初旬、防衛関係を大幅に強化し、中国の主張の強まりを受けてインド太平洋地域の緊張が高まる中、日本の自衛隊のフィリピン領土へのアクセス拡大を認めることで合意した。

フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、ロイド・オースティン(Lloyd Austin)米国国防長官と、中国の領土的野心を抑制するためにフィリピン軍基地への米国軍のアクセス拡大を認めることで合意した直後に日本を訪問した。

マルコス大統領と岸田首相が署名した防衛協定は、日本の自衛隊がフィリピンの自然災害や人道的ニーズに対応するための訓練に参加することを認めるものだが、 この協定は、より広範な軍事協力への一歩と考えられており、日本と他の東南アジア諸国との間の同様の協定につながる可能性がある。

岸田首相は、両国は共同演習やその他の作戦を引き続き強化・合理化し、日本の防衛装備や技術のフィリピンへの移転を拡大し、米国との三国間協力を強化することを目指すと述べた。

岸田首相との記者会見でマルコス大統領は、「両国の戦略的パートナーシップは、この地域を襲う荒波を共に乗り越えていく中で、これまで以上に強くなっていると自信を持って言うことができる」と述べ、さらに 「両国関係の将来は、互恵的な協力関係を幅広く深め、拡大し続けることで期待に満ちている」と語った。

日本政府は防衛協定に共同軍事訓練、協力、相互訪問を含めるようアップグレードすることを望んでいると、政府関係者は述べた。

共同声明には、両首脳はまた、国防能力を高め、相互の寄港や航空機の訪問で安全保障協力を強化することを決議し、日本はフィリピンに航空監視レーダーシステムを移転し、関連訓練を提供すると記されている。

岸田首相とマルコス大統領は、東シナ海および南シナ海の状況に深刻な懸念を示し、「緊張を高める可能性のある武力や強制を含む行動に強く反対する」と声明は述べている。

また、サイバーセキュリティと経済セキュリティの強化に合意し、旧米国海軍基地のスービック湾の港湾施設の整備など、フィリピン沿岸警備隊の能力強化に向けた日本の継続的な支援を確認した。

2022年には、島国である両国の防衛・外務大臣による初の安全保障協議が行われ、防衛関係の強化で合意した。

岸田内閣は2022年12月、第二次世界大戦後の日本の防衛原則から脱却した反撃能力を含む安全保障と防衛の主要なアップグレードを採択し、同時に防衛費を5年間で倍増させることを決定した。

さらに、この新戦略の下、日本は開発援助を通じて、各国が海上安全保障やその他の安全保障能力を強化することを支援するとしている。

岸田首相は「マルコス大統領の訪問は、日本とフィリピンが地域と国際社会の平和と安定に貢献するために、近年の協力関係をさらに高いレベルに引き上げる原動力となる」と述べた。

また、2024年3月までにフィリピンに対して官民合同で約6,152億円(46億ドル)の経済支援を行うことを発表し、主に通勤鉄道の建設などのインフラ整備や、災害対策に充てることを明らかにした。 両国は、情報通信技術、エネルギー安全保障、産業開発などで協力することでも合意した。

拓殖大学教授で防衛・安全保障に詳しい佐藤 丙午氏は、「地域の安定やシーレーン、中国の海洋での主張に対する抑止力を考えると、フィリピンとの協力関係を深めることは、日米の安全保障にとって極めて重要だ」と指摘し、 「フィリピンの基地にアクセスできるようになれば、台湾や中国が関与する有事の際に、日米同盟の戦略的選択肢が拡大する」と述べた。

Indo-Pacific Defence Forum