専守防衛では国民を守れない

2023/04/23 更新: 2023/04/24

世界から戦争が消えない

日本では戦争を放棄すれば平和が得られると考える人達がいる。さらに憲法9条が有るから日本は平和を得たと主張する人達がいる。世界を見れば戦争を放棄した国は無いし憲法9条を採用した国も存在しない。中国共産党により建国された現在の中国は建国と同時にチベット・東トルキスタンに侵攻して併合した。北朝鮮は日本に向けて弾道ミサイルを発射しており平和よりも戦争を求める道を進んでおり、さらに北朝鮮と韓国の内戦は今も続いている。

最近であればロシアがウクライナに侵攻したことで戦争放棄と憲法9条は無意味だと証明している。日本が戦争を放棄しても世界各地で戦争は続いており、日本の平和はアメリカの核の傘の下で得られている現実を理解していない。

 

専守防衛は国民を戦争の惨禍に巻き込む

結論から言えば、専守防衛は国民を戦争に巻き込むことを前提とした国防の失敗。だから専守防衛を求める者は沖縄戦を再現したい者たちだ。なぜ専守防衛は沖縄戦を再現するのか?理由は簡単だ、敵軍が日本の国土に侵攻しているので敵軍は国民の生活を破壊しているからだ。

戦域の区分
国土戦域:国家主権として主張できる地域
前方戦域:領域線と国防線の間の緩衝地帯
覇権戦域:国防線よりさらに前方で覇権を争う地域

戦域の区分から見れば、国境の内側は国土戦域になる。そして国境から外側の緩衝地帯を置いて国防線を引くのが国防の基本。海洋国家である日本であれば大陸の海岸線が国防線となる。大陸に置かれた国防線と国境の間が緩衝地帯であり仮想敵国が国防線に戦力を集めたら警戒し反撃できる態勢を整える。つまり大陸の海岸線から国境の海と空が日本の戦場なのだ。

専守防衛は国土に敵軍が侵攻してから反撃するから、この段階で沖縄戦を再現する。これでは戦争に勝っても国民を守ったとは言えない。家で例えれば不審者が家の中に侵入してから反撃することと同じ。仮に不審者に勝っても家の中で戦うから屋内は荒れている。さらに家族が巻き込まれて怪我をすれば守ったとは言えない。だから不審者を家の外で迎撃するのが基本となる。

不審者が敷地に侵入したら家の外で対応し敷地から出るように警告する。それでも不審者が襲ってくるなら迎撃することで家族を巻き込むことは無い。専守防衛は美しい言葉だが、実際は国民を戦争に巻き込む悪しき考えなのだ。

アメリカの場合は国防線の外側で覇権を争っている。だから覇権戦域に仮想敵国がいると警戒し、常にアメリカ軍を対応できる様にしている。これで反アメリカの国だとしても自国の軍隊でアメリカを攻撃できない。アメリカは国境の外で対応するから国民を守っている。これが国防なのだ。

 

ウクライナの現実

ではロシアから侵攻を受けたウクライナはどうなった?日本と異なり陸続きの違いは有るが民間人を戦争に巻き込んだ。ウクライナ国民から難民が発生し周辺国に逃げることになった。海外に出られない者は国内で戦争の惨禍に巻き込まれた。これは専守防衛の結果だ。敵軍に侵攻されてから反撃したことで国民を巻き込んでいる。

日本で専守防衛を行えばどうなる?中国の人民解放軍が日本に侵攻すると島嶼で生活する国民は巻き込まれ生命財産を失うことになる。島外に逃げても難民として生活することになる。さらに人民解放軍の占領が拡大すれば日本人も難民として海外に出ることになる。これでも専守防衛は正しいと言えるのか?

ウクライナが国境の外でロシア軍を迎撃すればどうなった?ウクライナ国内でロシア軍に占領される地域は小さくなったはずだ。では、ウクライナ軍は国境の外で迎撃できたのか?それは、できた。

先制攻撃の区分
攻勢攻撃(Offensive Attack):国際社会で否定される
敵国の国防線を踏み破って奇襲攻撃を仕掛ける。

防勢攻撃(Defensive Attack):国際社会で肯定される
自国の国防線の中で脅威国が戦争準備した段階で先制攻撃する。

国際社会では先制攻撃を国際社会が否定する攻勢攻撃と国際社会が肯定する防勢攻撃に分けている。なぜなら、そうしなければ自国の防衛が出来ないからだ。ロシア軍が行ったのは攻勢攻撃だから今の平和を否定する行為。だから国際社会はロシアを今の平和を否定する悪の国と見なした。

国際社会では国境付近に4万人以上の戦力を集めないのがマナーになっている。これは白人世界のルールだが白人世界も馬鹿ではない。戦争の経験から少しでも戦争を回避することと戦争規模を小さくする経験則が生まれ、国防と隣国に緊張を高めないことから国境に4万人以上の戦力を置かないようになった。

陸戦では4万人の戦力を威力偵察に使うので開戦するなら最適な戦力。だからロシア軍が国境付近に20万人の戦力を置いたことで侵攻すると予測されたのだ。この段階でウクライナは防勢攻撃としての先制攻撃を行わなかったから侵攻を受けたのだ。

では防勢攻撃としての先制攻撃を行っても批判されないのか?防勢攻撃を多用するのはアメリカで、イラクのフセイン大統領がWMD(大量破壊兵器)の保有意志を公言すると、アメリカは国連決議を間接的な宣戦布告に変えてイラク戦争を開始した。

これが現実だから、日本の場合は仮想敵国が国防線に4万人以上の戦力が集めれば戦闘態勢に入れる。さらに仮想敵国が緩衝地帯に集まれば迎撃態勢を行える有利な点が有る。それは日本が海に囲まれているので日本の戦場は空と海になる。この点で日本はウクライナとは異なり国防が容易なのだが、専守防衛を選ぶ限り沖縄戦の再現を回避できない。

 

ウクライナとドローン

ロシア軍がウクライナに侵攻すると両軍の損害の多さに驚かされる。さらに実際の損害は戦後にならないと判明しないが、現段階でもロシア軍の損害は18万人を超える死傷者数になっている。これは3000年の戦争史から見れば異常な数字なのだ.

結論から言えば3000年前の損害を1とすると現代では10分の1まで激減している。この理由は3000年前の兵士同士は1mの間隔だったが、10mまで離すと損害は10分の1まで激減している。軍隊は損害回避を優先するので経験則から10m離す様になっている。

ロシア軍の戦車は砲弾の上に座るから被弾すれば砲塔が吹き飛ぶことになる。さらに歩兵の間隔が1mであれば損害が激増する理由になる。さらに損害を増大させた理由にドローンが挙げられる。簡単に言えばドローンを偵察に使うことで既存の偵察活動の時間を短縮したのだ。
 
既存は地上の歩兵部隊が偵察を行い敵と接触。その後味方の砲兵部隊に通信し砲撃を行なうことになる。だがドローンを偵察に使うと空の移動だから地上よりも早いし広範囲を見ることができる。これで偵察活動が短縮され砲兵部隊による攻撃が正確で損害を多くしたと推測する。

 

日本の国防に活かす

このことから、ドローンを使うと少数の戦力で軍隊を維持できる主張は無意味。逆に戦力を多くしなければ損害回復が出来ないことを意味している。このことをウクライナ軍とロシア軍が血で証明している。

ドローンで敵を発見して攻撃する時間が短くなった。これで兵士の死傷者数が激増。日本は他人事ではなく敵が使えば自衛隊の損害も増大する。ならばドローン迎撃兵器開発と配備は必須だが、同時に自衛隊総兵力を今の23万人から50万人まで増員しなければ対応できない。

常備軍の総兵力は総人口の1%が限界。少子高齢化の要素を加えれば自衛隊総兵力は80万人で軍縮レベルは50万人。今の自衛隊総兵力は23万人だから軍縮レベル以下なのだ。これでは損害回復に対応できないから、自衛官の待遇改善と総兵力を50万人にしなければならない。そして日本の専守防衛を捨て国境の外で戦え。そうしなければ国民を守れない。

戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。
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