米ニューヨーク連邦地裁がドナルド・トランプ前大統領(76)に民事上の損害賠償として500万ドル(約6億7600万円)の支払いを命じた判決について、顧問弁護士のジョセフ・タコピナ氏はエポックタイムズに対し、トランプ氏は控訴する予定だと語った。ハーバード大で長年教鞭を執った法律家は取材に対し、この事件は「そもそも裁判すべきでない」と指摘した。
食い違う双方の訴え
トランプ氏を提訴した元コラムニストのジーン・キャロルさん(79)は、1990年代中頃にマンハッタンの高級デパートの試着室で同氏にレイプされたと主張。さらに、トランプ氏が関与を否定したことで、ジャーナリストとしてのキャリアが損なわれたと述べた。
時効を過ぎた性被害を1年間(2022年11月24日〜2023年11月24日)に限り訴えることができる法改正がニューヨーク州で行われたことを受けて、キャロルさんは昨年11月24日に訴えを提起した。民事裁判は、クリントン時代に任命されたルイス・カプラン判事の主導のもと、9人の陪審員団とともに進められた。1週間にわたる議論の末、9日に結審した。
裁判において最大の争点となったのは、トランプ氏からレイプされたというキャロルさんの証言の信憑性だった。
キャロルさんの弁護士ロバータ・カプラン氏(カプラン判事とは無関係)は、トランプ氏の過去の発言を取り上げた。2005年に出演したテレビ番組『アクセス・ハリウッド』の収録前の録音記録「あなたがスターならば、何でもできる」についてだ。著名人による女性への不適切な行為を肯定しているとして「彼が女性をどのように扱っているか、彼は自身の言葉で語っている」と強調した。
対するトランプ氏側のタコピナ弁護士は、キャロルさんは事件当時の重要な詳細を思い出せないため、その主張は信憑性に欠けると指摘した。「彼女は、100パーセントの確信がないため、事件当日の曜日を言わなかったと主張した。 彼女はあなたの目の前で自身の証言を変更したのだ」。
キャロルさんは2019年にもトランプ氏の言葉「彼女はタイプじゃない」が名誉毀損に当たるとして複数の裁判を提起したが、有利な判決は得られなかった。トランプ氏は一貫してキャロルさんの主張を否定してきた。
原告側の証拠不十分としてレイプの主張は認められず、性的暴行と名誉毀損でトランプ氏に責任ありと判断した。
トランプ氏は判決を受けて「この女性が誰なのか全く分からない。恥ずべき判決であり、史上最大の魔女狩りの続きだ」と自身のSNSトゥルース・ソーシャルに書いた。タコピナ弁護士は「奇妙な判決」であるとし、「最初はレイプ事件だった。そして陪審員はそれを認めなかった」と述べた。
トランプ氏陣営の報道官はエポックタイムズの取材に対し、訴訟は「民主党によるトランプ大統領に対する終わりのない魔女狩り」であるとし、その目的は選挙活動を妨害することだと主張した。
エポックタイムズはキャロルさんの弁護士にもコメントを求めている。
法律家「そもそも裁判すべきでない事件」
ハーバード大学の法科大学院で50年間教鞭を執ったアラン・ダーショウィッツ教授は8日、エポックタイムズの取材に対し、「こうした訴訟は決して提起されるべきではなかった」と述べた。
「なぜ時効というものが歴史のなかで誕生したのか。その目的は、25年も前に起きた出来事について裁判を受けなくてもいいようにするためだ」とダーショウィッツ氏。「どうやって当時のことを覚えていられるというのか。自分がどこにいて何をしていたのか、どうやってわかるのか。彼はそのときヨーロッパにいた可能性もある。彼女は事件のあった日付と時刻さえ話さなかった」。
ダーショウィッツ氏はまた「通常なら無視されるべき事件だが、ドナルド・トランプ氏が関わってくるとそうもいかないようだ」と述べ、大統領再選を目指すトランプ氏にとって、一連の訴訟は痛手になるだろうと語った。
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