林芳正外相は10日の国会で、中国の呉江浩駐日大使が台湾有事にかかる日本の影響をめぐる発言について、外交ルートを通じて抗議したことを明らかにした。質問した松原仁議員(立憲民主)は「日本国民を脅す大使など言語道断」として、呉江浩氏の国外退去処分を求めた。
松原氏は10日の衆院外務委員会で、呉江浩氏の記者クラブ主催の会見における発言を取り上げた。呉氏は台湾統一に向け「武力行使の放棄は約束しない」としたうえで、台湾問題への関与によって「日本の民衆を火の中に連れ込むことになる」と述べた。
「日本の民間人に危害を加えることを示唆した」と松原氏は指摘。8日にカナダ政府が同国議員を脅迫した中国外交官に対する「ペルソナ・ノン・グラータ」(国外退去処分)適用になぞらえ、呉江浩氏の追放を林外相に求めた。
林外相は「極めて不適切」な発言であるとし、外交ルートを通じて中国側に厳重に抗議したと明らかにした。また4月の訪中時にも、秦剛国務委員兼外交部長との会談で「台湾海峡の平和と安定の重要性」について申し伝えたと述べた。
松原氏は同日のツイートで、政府の抗議が控えめであると批判した。「そもそも何故、私が質問するまでこの抗議がニュースにならなかったのか?本来なら政府が日本国民を代表して堂々と非難するべき案件だ。こそこそと遺憾を伝えるのでは中国に怯えているように見える」。
中国で3月に開催された全人代(全国人民代表大会)では、習近平国家主席が台湾について「祖国統一のプロセスを揺るぎなく推進する」と強調するなど、台湾統一に対する強い意欲を改めて示している。
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