ESGスコア、なぜタバコ産業が電気自動車メーカーを上回るのか マスク氏も疑問視

2023/06/26 更新: 2023/06/26

歪められた尺度であるESG(環境、社会、ガバナンス)基準が普及されれば、実際の環境や社会に対して肯定的な影響を与えるよりも、「包括的な」価値観と進歩的なアジェンダを持つ企業を応援することになる。

最近、S&Pグローバルは、テスラにESGスコア37を与え、テスラは「環境」の面で60ポイント、「ガバナンスと経済」で34ポイント、「社会的」で20ポイントを獲得した。テスラとは対照的に、フィリップモリス、アルトリア、インペリアル・ブランズなどのタバコ企業のESGスコアは高かった。6月13日のジャーナリストのアーロン・シバリウムによるツイートに応えながら、テスラのマスクは「なぜESGが悪魔なのか」と、ESG格付けが企業をどのように差別しているのかを説明した。

6月13日のツイートで、ワシントン・フリー・ビーコンの記者であるシバリウムは、「S&P グローバルからロンドン証券取引所に至るまで、ESG格付けにおいて、タバコ会社はテスラを圧勝している。年間8万人以上を死亡させるタバコが、EVよりも倫理的な投資と見なされる理由はどこにあるのだろうか」と述べた。

S&P グローバルは、マールボロを製造しているフィリップモリスに対して、ESGスコア84を与え、同社は「社会的」側面で85ポイント、「ガバナンスと経済」で83ポイントを獲得した。

タバコ企業のアルトリアのESGスコアは42で、「社会的」と「ガバナンスと経済」スコアの両方でテスラを凌駕した。インペリアル・ブランズもESGスコア42を獲得し、テスラを上回った。

ESG基準は、株主や企業利益に焦点を当てるのではなく、企業が「多様性やトランスジェンダー、気候変動」に対して、どれほど献身的に取り組んでいるのか、つまり企業の本気度によって、企業ブランドを判断するものである。

S&P グローバルは、モーガン・スタンレー・キャピタル、サステナリティックス、ムーディーズ、フィッチなどのESG格付けプロバイダーの1つであり、同社によると、世界の時価総額の99%を占める1万3000社以上の企業からデータを収集しているという。

ESGポイントの獲得

テスラと異なり、タバコブランドは、多様性や包摂性などの「進歩的な」理念を公然と推進しており、より多くのESGポイントを獲得する傾向がある。例えば、アルトリアのウェブサイトでは、「当社のコーポレートガバナンスガイドラインは、新しい取締役候補に女性と有色人種を含めることを要求している」と明確に記載している。

アルトリアは、2020年6月「当社は、アメリカ黒人が直面する組織的人種差別に対処し、社会および経済的平等を促進する」ために500万ドルを準備していると発表した。

2021年2月、同社はヒューマンライツ・キャンペーン財団2021年企業平等指数の100点を獲得したことを発表した。この指数は、LGBT従業員の平等に関する企業の方針や慣行を測定する全米随一のベンチマークツールである。

また、同社は、トランスジェンダーが女性スポーツに参加することを禁止するアイダホ州の法律に反対する法廷助言を提出した。

フィリップモリスの2022年報告書では、同社が 男女平等の推進という名目で、差別的な雇用と昇進を行う政策をとっていたことを明らかにしている。

「当社が熱望しているのは、管理職におけるジェンダーバランスを維持することであり、世界全体で管理職に占める女性の割合を40%以上にすることを目標としている」と。

また、インペリアル・ブランズは、2022年ESGレビューの中で、「意識向上キャンペーン、キャリア・トーク、無意識の偏見トレーニング、多様性の称賛を通じて、企業内の多様性を推進している。リーダーたちが無意識の偏見と自覚なき差別の問題を理解できるよう、特注のeラーニングコースを11の言語で作成し提供している」と述べた。

テスラは、多様性に妥協しようとはしていない。昨年6月、同社はLGBTコミュニティの社長と、同社の多様性と包摂性の取り組みに携わっていたリーダー一人を解雇した。

汚染産業

フィリップモリス、アルトリア、インペリアル・ブランズのタバコ会社3社は、S&P グローバルから「環境」カテゴリーで良いスコアを獲得した。フィリップモリスは87ポイントを獲得し、テスラの60ポイントを大きく上回った一方で、アルトリアとインペリアル・ブランドはそれぞれ51ポイントと、僅差で及第点を獲得した。

タバコ産業は汚染度が高いことが知られているにもかかわらず、S&P グローバルは、こうした点数をつけたのである。

2022年5月、世界保健機関(WHO)は、タバコ産業が環境に与えている影響について「警鐘」を鳴らした。

昨年5月31日、WHOは「このセクターでは、毎年800万人以上の人命、6億の樹木、220億トンの水、8400万トンのCO2、2万ヘクタールの土地が失われている」と発表した。

「地球上で最もポイ捨てされるタバコ製品には7000を超える有毒化学物質が含まれており、廃棄されると環境に浸出する。WHOの健康増進ディレクターであるリュディガー・クレッチ博士は、「毎年約4.5兆ものタバコフィルターが海や川、都市の歩道や公園、土壌、ビーチを汚染している」と述べている。

人気コメンテーターたちは、オンラインで、S&PグローバルのESG評価基準を批判した。著者のパトリック・ベット・デイビッドは6月15日のツイートで、「タバコはテスラよりも気候に良いのか?ESGスコアの偽善。テスラは100点満点中37点、フィリップモリスは84点を獲得した。誰がこのナンセンスを信じるのか?」と述べた。

現実の環境要因を考慮すればEVのパフォーマンスは低いという事実は変わらない。仮に、テスラがESGの採点方法を理解して進歩的なイデオロギーに従えば、テスラのESG評価はもっと良くなるだろう。

ESG基準を採用している企業は、これらの指標を使用して投資するかどうかを評価するブラックロックのような大規模な投資家の顔色を窺っているためだ。

バドライトやターゲットのような大手小売ブランドが、最近、市場シェアと資本を大幅に失い、このESG基準が注目を集めている。この基準に則ったマーケティングのやり方が、主要顧客層をうんざりさせた結果だ。

これらのブランドは、ガイドラインに従ってESGが推進させようという価値観を広めたが、それは顧客の大部分には響かなかったのである。

※タイトルを一部変更しました。

英語大紀元記者。担当は経済と国際。
関連特集: 米国経済