近年のジェンダー・アファーミング・ケア(性自認を尊重する医療)の推進は、人の生殖機能に関わる技術産業を創出し、その行き着く先はトランスヒューマニズムであるという。調査ジャーナリストのジェニファー・バイレク氏が指摘している。
ジェンダー・アファーミング・ケアは、性自認が出生時の性別と一致しない人々に提供される医療措置だ。
卵子凍結、代理出産、遺伝子操作などの医療技術は、大きな利益を生む産業となり、特に大手製薬会社(ビッグファーマ)や巨大IT企業(ビッグテック)が儲かる市場を生むという。
バイレク氏は、先月19日にEpoch TVの番組「米国思想リーダー」に出演し、自身の見解を述べた。
彼女によると、トランスジェンダリズムは男女を同化することを目標にしているという。現在、西洋社会では、法律や言葉遣いが改変され、男性が女性スペースに入ったり女子スポーツに参加できるようになっている。
「人々が思っているようなこととは全く違う。レズビアンやゲイの人も家庭を築くのに生殖補助医療を必要とするので、ジェンダー・アファーミング・ケアはLGBの公民権運動の旗の下に位置づけられているが、それは弱者の人権に関するものでは全くない」
今や、ホワイトハウスにトランスジェンダー・フラッグが掲げられ、その他の政府機関も同様の運動を推進している。
そうした動きに対しバイレク氏は、「人権は社会の上層から生まれるものではない。社会の底部、草の根の組織から生まれるものだ」と述べている。
性的二型の崩壊
バイレク氏によれば、ジェンダー・イデオロギーの根底には「性スペクトラム」という概念があるという。
「彼らは人々に、人類は性的二型の種ではなく、性別はスペクトラムのように存在するという考え方を信じさせ、受け入れさせようとしている」
この考え方が、学校教育やハリウッド映画、メディアの言説、図書館、書籍に浸透しており、性別を記入するフォームにまで「男性」と「女性」に加えて「X」のオプションが用意されているとバイレク氏は指摘している。
「彼らは文化の中で性を次々と解体している」と主張する彼女は、それを「性的二型の崩壊」と呼んでいる。
また、彼女は「子供たちを性的に目覚めさせる動きもあるが、これもLGBT運動の一環だ」と主張している。ジェンダー・イデオロギーの標的にされるのは、年配の人ではなく若者や次世代だという。
「子供が取り込まれていることから、多くの人はこれが小児性愛に関係していると考えている。それはある意味正しいかもしれないが、私はむしろそれ以上だと考えている。これはむしろ、彼らの身体への更なる介入に向けた洗脳だと確信している」
実際、子供たちは、医療技術の助けを借りることで、男の子から女の子になることも女の子から男の子になることもできると教わるという。
バイレク氏は「あらゆるバイオテクノロジーの進歩は、遺伝子工学や人体への介入に関連している」と指摘する。
最近、米国食品医薬品局(FDA)は、イーロン・マスク氏が共同設立したニューラリンクによる脳インプラントの臨床研究を承認した。
バイレク氏は「これは人の心理や身体への大規模な介入であり、このようなことはますます増えるだろう」と述べている。
ニューラリンクのウェブサイトによれば、同社は「コンピュータやモバイルデバイスをどこに行ってもコントロールできる初の脳インプラント」の開発を目指している。
以前マスク氏は、同社が将来的に、深刻な脊髄損傷や筋萎縮性側索硬化症(ALS)のほか、肥満、自閉症、うつ病、統合失調症などの状態を持つ人々の助けになることを願っていると述べていた。
彼はまた、このテクノロジーがウェブブラウジングやテレパシーを可能にするといった楽観的な見解を持っている。
性別違和
バイレク氏は、たとえジェンダー移行の目標が性別違和を抱く当事者の支援だとしても、それを「前向きなライフスタイル」として宣伝できるわけではないと考えている。
「それは性的二型の崩壊以外の何ものでもない。それがまさに起こっている」
現代人は周囲との関係が断たれた環境で生活しているため、あらゆる種類の身体的な不快感を抱いていると彼女は指摘している。
「人々はテクノロジーを用い、離れ離れに生活し、機械を通じてコミュニケーションを取っているため、土地との、あるいは食物の源との、そして他者との関係が断たれている」
「これらは、新型コロナの流行によって悪化している。しかし私たちは、他の不快感、例えば拒食症や身体完全同一性障害(BIID)をアイデンティティーとして歓迎することはない」
拒食症は、体重が増えることに対する強烈な恐怖心や体重に対する歪んだ認識によって引き起こされる接食障害であり、BIIDは、自分の四肢が自分のものではないと感じる状態である。
バイレク氏は、トランスジェンダリズムは「科学的でも現実的でもない」と述べた。
「それは男女の同化を進めるための信念体系であり、彼らは生殖をテクノロジーの領域に移そうとしている。そうなれば、男も女も関係ない。男女の生殖機能はテクノロジーで創り出されることになるだろう」
「身体的な不快感は、自分の性別を逆の性別に当てはめる理由にはならないし、社会のためにそれを行う理由にもならない。巻き込まれるすべての人々に混乱と損害をもたらすのは明らかだ」
「トランスジェンダーからトランスヒューマンへ」
バイレク氏は、米国人起業家のマーティン・ロスブラット氏がトランスジェンダリズムの発展において重要な人物の一人であるとした。
ロスブラット氏は書籍「From Transgender to Transhuman: A Manifesto on the Freedom of Form(仮題:トランスジェンダーからトランスヒューマンへ、形態の自由に関する宣言)」の著者だ。
また、同氏は、全米トップクラスの総合病院「メイヨー・クリニック」の理事会メンバーを務めるほか、国際法曹協会のバイオポリティクス・プロジェクトを率いて、国連のための「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」を起草した。同宣言は1997年にユネスコによって採択され、翌年には国連総会によって承認された。
ロスブラット氏は、生物学的な性別は男性でありながら女性だと自認しており、2015年にプレゼンテーション番組「TEDトーク」に出演した際、自分の魂が常に女性であると感じていることを妻と4人の子供と相談した末に性転換を決断したと語った。
また、2016年にカナダのビクトリア大学で開催されたトランスジェンダー・カンファレンスでは、「多くの人々が男性・女性であることを辞め、ジェンダー・スペクトラムに沿って自己表現をする」ことについて講演した。
カンファレンスの基調講演で、ロスブラット氏は、「トランスジェンダー・テクノロジーとトランスヒューマン・テクノロジーは非常に似ているが、前者は個人の性的特徴のみを変えるのに対し、後者は個人の遺伝的特徴を変えるという点で異なっている」と述べた。
同氏によると、テクノロジーに基づくトランスヒューマニズムの最終形態は、個人の意識をダウンロードして、人格や思い出をソーシャルメディア上で複製できるようにすることだという。
同氏がTEDトークで語ったところによれば、人々はソーシャルメディアへの投稿から、自分の仕草や個性、思い出、感情、信念、態度、価値観の集合体である「マインドファイル」を作成できるという。
「自覚があろうがなかろうが、歴史上初めて、自分たちの意識の大部分が、実際に脳の外部にあるサーバーに保存される」と、ロスブラット氏はビクトリア大学での講演で述べている。
「ダウンロードされた意識を再構築するテクノロジーは今はまだ存在しないが、このままいけば、今世紀の中頃までには存在するだろう」
ロスブラット氏は、人の身体が「廃棄」された後、ダウンロードされた意識が、進歩したドローン技術を用いた「ナノボット」によって生体の特性を持つことができるようになることを思い描いている。「数千のこれらのナノボットが無線ネットワークを通じて連結され、様々な形態で群飛行することができるようになるだろう」とカンファレンスで述べている。
また、ロスブラット氏は、AIとロボット技術の企業に依頼し、自身の妻のロボットバージョンを作成している。TEDのイベントでは、「将来的には、世界中の人々が自分自身のマインドクローンを開発し、ウェブ上で独自の生活を送れるようになるだろう」と述べた。
他にも、バイレク氏は、ジェンダーイデオロギーの主要な推進者として、退役軍人で億万長者のジェニファー・プリツカー氏の名前を挙げた。同氏が所有する財団は、トランスジェンダーの原則を採用した文化機関に寄付を行っているという。
シカゴ・トリビューン氏によると、プリツカー氏は、2016年にカナダのビクトリア大学に200万ドルを寄付し、トランスジェンダー研究の教授職を設立・支援した。
プリツカー氏は生まれは男性で、3人の子供の父だが、2013年に女性への性別移行を発表した。
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