今月1日、浙江省寧波市の川で、インフルエンサーの「馬さん」が遺体で発見された。
馬さんは、同市で不動産仲介業を営んでいるが、その経営方針は非常に良心的で「病気治療のための家売却は、手数料を無料にする」など低料金に努める「仁徳の人」であった。そのため、利用者の人気は高かったが、同業者から恨みを買っていたといわれる。
「身の危険を発信した日」に事件は起きた
事件は、馬さんが「(私は)生命の脅迫を受けている」と明かす動画をSNSに投稿したその日のうちに起きた。ネット上には「同業者の利益を損ない、業界のルールを破ったから殺されたのだ」とする噂も流れている。
馬さんは自身のSNSアカウント「馬哥聊房」のなかで、たびたび不動産仲介の業界に関して、その黒幕や「闇の部分」について暴露してきた。また、自身が経営する仲介企業の料金設定も市場より安く、利用者には喜ばれていたが、そのぶん業界仲間からは妬まれていたという。
現地公安は4日、ネット上に流れている「同業者による殺害」の噂を「デマ」と否定し、「馬さんは6月30日夜に友人と酒を飲んだ後、誤って川に転落した」と主張している。
川面に浮かぶ遺体を救助隊が引き上げる動画もネット上に流れており、この遺体は馬さんのものとされている。
ある動画を見る限り、馬さんの遺体が浮かんでいた川は、住宅地に近い水路のようなもので、ほとんど流れはなく、その岸には「柵」もついている。酒に酔って転落して死んだ、とする現地公安の説明にどれほど妥当性があるか、疑問は残る。
関連ニュースは今、中国のネット上で物議を醸している。「不動産業界が低迷していることは知っていたが、まさか仲介手数料をめぐって人が殺されるなんて」といった驚きと悲しみの声が広がっている。
「仲介業の黒幕」を消滅させる、義の人だった
馬さんはこれまで、利用者を騙して高額請求するなど、不動産の仲介業界に存在する各種の悪質な手口について暴露してきた。
まさに「義の人」である馬さんは、こうした人を罠にはめるような業界の現状が許せず「仲介業に存在する黒幕を消滅させる」とまで揚言していた。
しかし馬さんは、最後に発信した動画(6月30日投稿)のなかで「同業者が私を殺そうとしている。命が脅かされている」と訴えていた。
「昨夜も眠れなかった。というのは、昨日の深夜にある電話を受けたからだ。電話の向こうで、業界仲間の経営者がこっそり教えてくれたんだ。私の料金設定があまりに低いから(同業者の)恨みを買っている。私を殺すと言う人までいる、と。本当に怖いよ。よく眠れず、食事ものどを通らない。私の料金設定が低いのは、私の店でそうやっているからだ。他人は関係ないだろう。なのに、なんで私がこんなに恨まれなければならないのか。人間であることは、本当に難しい」
動画のなかでそう語っていた馬さんは、もうこの世の人ではない。この動画を投稿した日の夜、彼は「川に落ちた」という。人情味あふれる優しい経営者・馬さんのその口は、二度と開くことはなかった。
馬さんのSNSのプロフィールのなかには、自社の料金設定について明記されていた。
それによると、馬さんに不動産仲介を依頼する場合、物件の総額に関係なく仲介手数料は一律7,000元(約14万円)となっている。また、抵当権設定、譲渡などの手続きの手数料は一律3,000元(約6万円)。それ以上の追加料金はない。
なお、病気やケガの治療費を捻出するため緊急に不動産を売却する場合、馬さんが受け取る仲介手数料は「一律無料」と設定している。
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