「中国版リーマン・ショック」到来か 中国人民銀顧問、景気刺激策を呼びかけ

2023/08/21 更新: 2023/08/22

最近、中国の経済データは再び低調になり、不動産と金融セクターはともに急激な打撃を受けている。中国版リーマン・ショックがやってくるのだろうか。 

中国中央銀行の顧問は最近、「消費の緊急促進」を呼びかけた。 しかし専門家によれば、習近平氏はもう限界にきており、危機に瀕しているという。

不動産から金融界まで、中国の大手企業が転落

数日前、中国ではまたもや不動産大手と金融大手の債務不履行が市場に激震を与えていた。

月曜日(14日)、負債総額1兆4千億元(約28兆円)を中国最大のデベロッパー碧桂園(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は、11のオンショア社債の取引を停止し、株価は14日のうちに18%急落した。 

碧桂園の信用格付けは、ドル建て債 2本の総額2250万ドル(約31億5千万円)の利払いが、期限内で履行できなかったため、引き下げられた。

一方、中国最大の民営資産管理グループ「中植系」傘下の国有企業「中融信託」も大きな危機に見舞われた。

同社は今年返済期限を迎える270件、総額395億元(約7900億円)の商品を保有している。

8月8日以降、商品代金の支払いを停止しており、その額は少なくとも3500億元(約7兆円)にのぼる。これは1999年以来の最大の民営企業の資産管理危機である。

危機に瀕しているのは民間だけでなく、月曜日には、香港上場の中国不動産デベロッパーであるシノ・オーシャンが、来年を期限とする6%の有担保債券の利払いが滞り、債務不履行により取引が停止されたと発表した。

国有不動産デベロッパーが債務不履行により取引を停止したのは、民営不動産デベロッパーの碧桂園以来初めてのことである。
 
台湾の金融専門家である黄世聡氏は、15日エポックタイムズに対し、現在の危機の原因は不動産市場の下落にあると指摘した。「中植系」の一連の問題の多くが、不動産関連商品への投資に関連していると述べた。

かつては、銀行は特に不動産デベロッパーにとって資本提供者としての役割を果たした。デベロッパーは土地や建設プロジェクトの資金を調達するために銀行を通じて投資を受けていた。

しかしながら、現在の不動産市場の低迷において、デベロッパーは銀行に債務を委ねるようになり、この結果、不良債権や不良資産が大量に発生する状況が生まれている。

黄氏は、銀行が国の資本の流れを反映し、それがまるで血液の循環システムのようだと述べた。国内の不動産市場の変動や金融システムの影響が広がる限り、通常の結果は非常に厳しいものになると指摘した。この問題を解決するのは難しく、中国が現在この現象に直面している。

中国版のリーマン・ショック バイデン氏は「時限爆弾 」

「中植系」に関連した問題だけでなく、金融・資産運用業界全体に問題が存在している。ブルームバーグのデータによると、7月31日までに、合計106件、約440億ドル(約6兆1600億円)の信託商品があり、そのうち不動産投資関連の資産が74%を占めている。

昨年も数十億ドルの金融商品が貸し倒れになった。黄世聡氏によれば、中国はこれまで、建設業、金融業、理財製品、一般大衆を通じて不動産市場の価格を高く押し上げてきた。

しかし、今の問題は、不動産を購入する人々が急速に減少していることであり、この傾向が続けば不動産価格も今後は下落するということだ。

安値で不動産を売ろうとする人がほぼいないため、彼らはより深刻な景気後退の到来を待っている。その結果、中国の経済に対する影響は広範囲に及ぶだろう。

つまり、中国版のリーマン・ショックの瞬間が迫っているのか、あるいは長期的には20年にわたる中国の衰退が近づいている。

これに先立ち、バイデン米大統領は10日、中国が経済や社会問題において「時限爆弾」を抱えていると述べ、更に「悪い人々が問題を抱えると悪いことをするため、これは良くない」と懸念を表明した。

バイデン氏は2009年1月に副大統領に就任した。 黄氏は「米国は金融危機の真っ只中にあり、彼はそれを目の当たりにしていたので、何が起こっているのかうっすらと感じ取っていたと思う」と述べた。

黄氏は、「中国の金融不安を目の当たりにした今だからこそ、バイデン氏はこのような発言をしたと思われる。 そうでなければ、首脳が他国の経済を批判するのは異例だ」とし、 彼は最悪の事態に備えていると語った。

経済指標が予測を下回る中、中央銀行が「緊急アピール」

15日、中国統計局が発表した経済データによると、7月の工業生産高、小売販売額、固定資産投資はいずれも緩やかな成長にとどまり、予想を下回った。貨物の輸出入総額は、7月に前年比8.3%下落した。中国経済を牽引する3つの「エンジン」がまたもや力不足だ。
 
また、中共当局は若者失業率の発表を一時的に停止した。これまで若者失業率は数か月連続で上昇しており、北京大学の学者である張丹丹氏は、実際の若者失業率が46%に達する可能性を推定した。
 
さらに15日、オンショア人民元の対ドル相場が一時、昨年11月以来の最安値となる1ドル=7.2875元となり、オフショア人民元も7.32元を割り込んだ。

ブルームバーグによれば、経済状況は悪化しており、銀行融資は7月に14年ぶりの低水準にまで落ち込み、輸出の縮小やデフレも進行しているという。習近平氏はもう限界にきている。
 
中央銀行のコンサルタントは、要するに、「不動産セクターを支援し、国民により多くの資金を供給する」ことが現在の「最も緊急な任務」であると述べた。

また、中央銀行金融政策委員会のメンバーである蔡昉氏は、「中国金融四十人論壇」にて「現在の最も緊急な目標は、個人消費を刺激し、あらゆる方法で国民所得を増加させることだ」と語った。
 
蔡昉氏は、消費支出を増やすために消費者に直接刺激を与えることに賛成しており、今年初めには国民に直接4兆元(約80兆円)の刺激を与えることが、個人消費の回復を促すための選択肢になる可能性があると述べていた。しかし、中共当局は現時点でこの方法を採用していない。
 

「危機に瀕した状況」の中で任命された行長 打ち出さない習近平氏

経済を刺激すべく、中国中央銀行は火曜日、1年物ローン(中期貸付枠)の金利を15ベーシスポイント引き下げ
、2.5%にした。 数時間後、他の金利も引き下げられた。中国の専門家である王赫氏は、中共には経済問題の解決に2つの政策があると考える。

1つは財政政策であり、地方に債券を発行することだ。しかし、現在の債務危機の状況では、地方債務が膨大であり、特例債は経済効率が悪く、財政政策の余地は限られていると指摘した。

2つに、金融政策である。中国と米国の金融政策の対立が、中国の金融政策の有効性を制約しているという。また、中国は現在デフレに直面しており、経済成長を支える通貨発行に頼ることは、年々効果が薄れており、未来はないと述べた。

王赫氏によれば、中共は金利を下げることで人々の心理的な期待を変え、経済を救い、支えるジェスチャーをしようとしているが、実際には経済的、実質的な意味はほとんどないという。 「我々は馬鹿ではない」とした。

また、「危機に瀕した状況」の中の中央銀行長・潘功勝氏が、中国経済を救い出せる力があるかどうかも懸念されている。

昨年の中国共産党第20回全国代表大会で、習近平氏は上層部を自分の腹心に入れ替え、潘功勝氏は中央委員でも補欠委員でもなく、政治的な立場ではない存在と見なされた。しかし、コロナの影響により、中国の経済は衰退の一途をたどった結果、6月25日、潘功勝氏が第13代中央銀行行長に任命された。

王赫氏は、「習近平氏には2つの考えがある」と述べ、1つは潘功勝氏に現在の経済を救わせることであり、もう1つは他の派閥にメッセージを送る。そして、政治的な緩和を図り、他の派閥の関係を改善する狙いがあると分析した。

フリーアジアの番組「中南海夜話」の司会者である高新氏は、「危機に瀕した状況」の中で潘功勝氏が任命され、就任当初には「対策を実行する時間さえなかった」が財政破綻が相次いだと述べた。

習近平氏は実は潘氏の「会計専門学校」という学歴に注目しており、中央銀行行長は習近平政権の出納長に過ぎないと皮肉られている。

高新氏は、「中国で最も短命だった秦剛外相の次に『短命』なのは、おそらく新中央銀行総裁になる」と指摘した。

秦氏は就任からわずか7か月で様々なスキャンダルに巻き込まれ、その後1か月以上も姿を見せなかった後、今年6月に解任された。

アメリカ在住の経済学者である李恒清氏は、中国経済の現状について、エポックタイムズに「習近平氏の決断だけが重要だ」が、過去11年間における「ほとんどの政策決定が誤った選択であり、最悪の結果につながったため、中国の経済は習近平の手で救われない」と述べた。

王赫氏はさらに、「中国の経済は崩壊しており、国内外の情勢も悪化しているため、中共がこの災難をから逃れるチャンスはほとんどない。現在の状況で誰がリーダーシップに立とうと、どれほど優れた能力を持っていても、好転させるのは難しい。せいぜい中共の衰退速度を遅くすることができるが、その可能性も非常に低い」と明らかにした。
 
 

程静
駱亞
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