政治と気候モデル
ベリー氏と同じく、前出のアレクサンダー氏も、科学は科学的というより政治的になっていると語った。「地球の気候が脅かされているというのは真実ではない。その主張は科学的というよりはるかに政治的だ」と彼は言った。
「科学は、証拠を理解するために、論理とともに観察的証拠に基づいている。人間によるCO2の排出が気温の上昇を引き起こすという証拠は、あるとしてもほとんど存在しない。両者の間には相関関係があるが、特に強くない。例えば、地球は1940~70年頃に地球は寒冷化したが、大気中のCO2レベルは上昇し続けた。コンピュータの気候モデルだけが、地球温暖化とCO2を結びつけている」
なぜCO2が気候緊急事態の原因として挙げられたのかとの質問に対し、アレクサンダー氏は、天体物理学者であり、1981年~2013年までNASAのゴダード宇宙科学研究所の所長を務めた熱心な環境保護主義者ジェームズ・ハンセン氏にまで遡ると述べた。
「ハンセン氏は、最初のコンピュータ気候モデルの1つを開発し、将来の温暖化について非常に誇張された予測を始めたが、どれも実現していない」とアレクサンダー氏は語る。「1986年の上院公聴会での彼の証言が、その後の人為的地球温暖化説の火付け役となった」
彼の予測は実現しなかったが、ハンセン氏の努力はIPCCの設立に貢献した、とアレクサンダー氏は言う。
「表向きIPCCは科学団体であるが、その科学者の調査結果は、組織を支配する政府やNGO官僚によってしばしば歪められ、誇大宣伝されている」
「官僚たちは、IPCCによる一連の報告書の科学的結論を誇張し、公式発表のレトリックをエスカレートさせる上で大きな役割を果たしてきた。それゆえ、国連事務総長は最近になって、地球が沸騰しているという宣言をしたのだ」
7月27日、グテーレス国連事務総長は「現在、地球は気候変動にある、恐ろしいことだ。これはほんの始まりに過ぎない。地球温暖化の時代は終わり、世界的な沸騰の時代が到来した。空気は呼吸できるようなものではなくなり、暑さには耐えられない。化石燃料の利益と気候変動の不作為のレベルは容認できない」と発表した。
アレクサンダー氏は、地球の温暖化の原因について、正直「現状ではよくわからない」と答えた。しかしそれは、科学者にアイデアが不足しているという意味ではない。
「CO2が一番の原因である可能性は非常に低い。CO2が寄与していることは間違いないが、寄与している可能性が高い自然サイクルもいくつかある」と彼は続けた。「それには、太陽変動と海洋サイクルが含まれるが、どちらも気候モデルでは無視されているか、それらを組み込む方法がわからないため、表現が不十分だ。気候活動家はそうではないと言うだろうが、気候科学はまだ揺籃期(ヨウランキ・物事の発展する初期の段階)にあり、気候についてまだ理解できていないことがたくさんある」
その一例が、太陽出力の変化で地球温暖化の70〜80%を説明できると推定した最近の研究論文だという。IPCCは人間のCO2が地球温暖化の原因であるという考えに固執しているため、このような研究はあまり支持されない。
さらなる批判として、「アラバマ大学ハンツビル校の気候学者で大気科学教授、地球システム科学センター所長のジョン・クリスティ氏が、 気候モデルが短期的な将来の温暖化を2〜3倍誇張していることを明確に示した」とアレクサンダー氏は述べた。
より正確な測定値を求めるため、クリスティ氏や気候学者で元NASAの科学者であり現在はハンツビルのアラバマ大学の主任研究員であるロイ・スペンサー氏は、マイクロ波衛星観測による地球全体の気温データセットを開発した。
両氏は1989年にプロジェクトを開始、1979年まで遡るデータを分析した。スペンサー氏のウェブサイトによると、その結果、1979年以降の地球の温度は10年ごとに華氏0.23度ずつ着実に上昇していることを発見した
気候モデルの精度が低い理由について、アレクサンダー氏は次のように語った。「コンピュータ・シミュレーションの信頼性は、コンピュータ・モデルの前提条件と同じ程度のものでしかない。気候モデルには多くの仮定があり、私たちが完全に理解していないプロセスに関する仮定は、近似値を必要とする。
「これらの大規模および小規模な近似はすべて、調整可能な数値パラメータという形でモデルに組み込まれている。科学者やエンジニアは『ファッジ・ファクター』と呼ぶことがある。有名な数学者ジョン・フォン・ノイマン氏はかつて、「4つのパラメータがあれば象にフィットさせることができ、5つならば象の鼻をくねくねと動かすことができる」と語った。
ノイマン氏のこの言葉は、十分なパラメーターがあれば、どんなデータセットにでもフィットさせることができるのだから、感心すべきではないことを物語っている。
ベナロヤ氏もアレクサンダー氏の批判に同調してはいるが気候モデリングに関してはさらに踏み込んだ発言をしている。
ベナロヤ氏は、「気候モデルの予測はすべて間違っている」とエポックタイムズに語った。「大気の計算モデルは、本質的に不正確であることを理解することが重要だが、これは研究者の責任ではない」
「それは、気候、化学、流体力学、熱伝導、太陽放射の影響、地球の影響、莫大な量の熱を保有する海洋のモデル化、雲の影響などが、非常に複雑なためである。コンピュータで解析できる形式に置き換えられた数学的モデルでは、これらの影響をすべて説明することはできない。これらの影響の多くは完全には理解されていない。また、これらの効果が互いにどのように結合しているのかも理解されていない」
またベナロヤ氏は、気候の複雑さを完全に理解していないことに加えて、利用可能なデータは不完全であるか、場合によってはナラティブに合うように操作されていると述べた。
「気候災害の到来を示す結果を保証するために、データが不正に操作されているという報告が何件もある。すべての予測は間違っていた。私は、気候が科学において非政治的であってほしい。政策は科学に基づくべきだ。政策とは事実ではなく、政治が関与するものだ」
さらにベナロヤ氏は、なぜ 「気候非常事態」を宣言しようとする動きがあるのかについて、権力とカネだけでなく、より大きな政治的力が関係していると述べた。
「一部の人たちは、大企業、大きな石油、テクノロジーを憎んでいるかもしれない。西洋や資本主義を嫌う人たちがいるかもしれない。これらすべてが一役買っている可能性がある」
アレクサンダー氏も「権力と金」について同意した。
「当初、キーワードは単に『地球温暖化』だった。それがほとんど興味をそそらなかったとき、誰かが「気候変動」というフレーズに置き換えるという賢いアイデアを思いついた。気温に関係なく、地球の気候は絶えず変化しているので、しばらくの間、このフレーズは非常に効果的だった」と彼は語る。
「その後、これらを信じない者が再びメッセージを無視し始めると、マントラは「気候危機」になった。そして、実際に人々を行動に駆り立て、CO2ネットゼロやその他の対策への支持につながると期待して、現在の『気候緊急事態』へとエスカレートした」
もう1つの要素は、資本主義システム全体を打倒したいという極左の願望である。彼らは資本主義システムを悪でありすべての社会の問題の原因と見なしているため、気候危機や緊急事態は、彼らの目的を達成するための便利な手段になった」
2050年までにCO2を実質ゼロにするという国連の推進について、アレクサンダー氏は「それは時間と資源の完全な浪費であり、多くの西側経済を貧しくする可能性がある。中国とインドはいかなる場合でも協力するつもりはないし、それは全体の努力を無意味にしている」
貧困と人間の健康
環境倫理の専門家であり、創造と管理のためのコーンウォール・アライアンスの創設者兼全国スポークスパーソンであるカルバン・バイスナー氏は、気候変動の原因の大半は人間ではなく自然であることに同意している。化石燃料から再生可能エネルギーへの転換によってCO2を減らそうという動きは、世界中の人々を極度の貧困に陥れているという。
「私は議会の委員会で『人間の活動に起因する地球温暖化の量はごくわずかであり、人間の幸福にほとんど影響を与えないと証言した』」と、米国上院と下院の委員会で証言したバイスナー氏はエポックタイムズに語った。
「しかし、温暖化を減らすために、石炭、石油、天然ガスから風力や太陽光、その他のいわゆる再生可能エネルギー源への急速な移行を強制する試みは、世界中の人々の貧困からの脱却を遅らせ、止め、または逆行させる。そして、貧困は人間の健康と生命にとって、気候に関連するものよりはるかに大きなリスクなのだ」
バイスナー氏は、人々は富を持っていれば、北極圏からサハラ砂漠、ブラジルの熱帯雨林まで、あらゆる気候で繁栄できると説明した。しかし、毎日数ドルでの生活ともなれば、「最高の熱帯の楽園でさえ」繁栄することはできない。
同氏は、「安価な化石燃料のおかげで、アメリカやヨーロッパの国々は、経済が発展し繁栄することができた」と述べている。「しかし、現在、国連が2050年までにCO2を正味ゼロにすることを推進しているため、先進国は、サハラ以南のアフリカやアジア、ラテンアメリカの国々に対して、豊富で手頃な価格の、しかも信頼のおける化石燃料によるエネルギーの使用を控え、拡散性が高く、高価で信頼性の低い風力や太陽光の使用に自らを制限するよう促している。その結果、彼らの貧困からの脱却を遅らせている」と語った。
「これは、西側諸国がイデオロギーを他国に押し付けているのだ」とバイスナー氏は言う。「それは倫理的に良心的ではない。皮肉なことに、進歩的またはウォーク・イデオロギーを受け入れ、過去の植民地主義を非難する傾向のある多くの環境保護主義者たちが、現在のこの新植民地主義運動を受け入れているのだ」
アレクサンダー氏と同様に、バイスナー氏は、クリスティ氏の地球全体の気温に関するデータを指摘し、「私たちは氷河期から抜け出したか、1350年~1850年まで続いた小さな氷河期から抜け出したところにいる」と述べた
「1979年に衛星の記録が始まって以降、世界の平均気温の上昇率は10年当たり約0.13℃であったというデータが残っている。私は、この衛星データの内容に同意する。それは1世紀あたり約1.3℃になる。確かに、この程度の温度上昇なら、人類に災いをもたらすようなことは何もない」
「良心の形成が不十分な政治家は、危機や緊急事態への恐怖に訴えることで、権力拡大の正当化が容易になる。今日の米国の政治家たちは、民衆のために働くよりも権力に飢えている。気候緊急事態を宣言しようという動きがあるのは、こうしたことを懸念してのことだ」とバイスナー氏は語った。
(つづく)
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