動員の波
ラテンアメリカでは、ヒズボラは何十年もの間、静かに根を下ろしており、米政府もそれを認識している。
2012年の米国対テロ・情報小委員会の報告書は「ヒズボラがラテンアメリカの犯罪グループやテロリストグループと築いてきた関係は、マネーロンダリング、密輸、資金調達の分野における相互の融和と利益の関係から、より直接的で致命的な形態の協力へとエスカレートしていることに注意する必要がある」と指摘した。
9月12日、米財務省はラテンアメリカにおけるヒズボラの不正な金融活動に関連する3人に対する制裁を発動した。
「過去数十年にわたり、ヒズボラはラテンアメリカで、西半球の複数の中継地を通じて組織犯罪の不正な利益を浄化する数十億ドルのマネーロンダリングと麻薬密売の体制を構築してきた」とエマヌエーレ・オットレンギ民主主義防衛財団上級研究員はいう。
一方、南米で活動するヒズボラのようなテロ組織は、米国の安全保障上の利益を損なうため、それほど直接的なアプローチをとらないだろうと考える情報機関関係者もいる。
「これは長期的な戦略的駆け引きになるだろう」とラテンアメリカ・アナリストで米陸軍士官学校教授のエバン・エリス氏は、エポックタイムズに語った。
ハマスとの紛争でイスラエルを支援する資源を使い果たし、米国は「深刻な問題」を抱える可能性があるという。エリス氏はまた、イランが最近、ラテンアメリカの「反米の友人」と静かに工作し、再び関わりを持とうとしていることを指摘した。これらの国にはキューバ、ベネズエラ、ニカラグアが含まれる。
6月、イランのエブラヒム・ライシ大統領とベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、複数の分野で二国間協力を深める新たな協定に署名した。その1つが安全保障協力である。
「我々は歴史の正しい側にいる。イランとベネズエラ。共に無敵になろう」とマドゥロ氏はは調印式で述べた。
トランプ政権時代に米国税関・国境警備局長官代理を務めたマーク・モーガン氏によれば、「ベネズエラ政権が同国から犯罪者を積極的に釈放し、米国に来るよう促している」ことは周知の事実だという。
「中東での新たな戦争は、世界的なテロリズムが健在であることを物語っている。そして彼らは全世界に触手を伸ばしている。彼らはできるだけ多くの人々を過激化させようとしている」
アメリカ大陸や他の地域におけるイスラムテロ組織の動きは、すべてイランからの知識、同意、または支援を受けている。イランはアルカイダ、ヒズボラ、ハマスなどのイスラム過激派グループを通じて、反米のイデオロギーやアジェンダを振りかざしてきた。
イランはまた、ベネズエラのような権威主義政権と予測可能な同盟関係以外でも、ラテンアメリカでのつながりを強化している。
2月には、イランの軍艦2隻がブラジルの有名なリオデジャネイロに停泊した。7月には、ボリビアとイランが正式な防衛協定締結を発表し、アルゼンチンなど近隣諸国から安全保障上の懸念の声が上がった。
安全保障アナリストによれば、イランはこの地域の代理グループを通じて、麻薬や武器の密売といった不法活動から豊富な資金を得ているという。
エリス氏は「ボリビアなどはイランからの資金調達とネットワーク構築のための地域」であることは間違いないが、現在こうした要素が重なり「完璧な嵐を巻き起こすチャンスが集まっている」と警告した。
地域アナリストのツカーマン氏も同様の見解だ。
「ハマスとヒズボラの連携レベルや、現在動員の波が押し寄せていることを考えると、この2つのテロ組織が手を組み、米国内の相手に武器やその他の物質的支援を提供したり、南米の拠点から攻撃やその他の破壊活動を計画したりする可能性があるのは明らかだ」
国境の現実
過密状態にある米国の国境は、国の安全を脅威に晒す要因だ。モーガン氏は、手薄になった国境警備隊では、潜在的なテロリストを特定するための徹底的な情報聴取ができないと主張する。
国境職員はせいぜい、国家安全保障上の懸念がある外国人を入国させる前に「初歩的なチェック」をする時間と資源しかないとモーガン氏はいう。法律上、彼らは徹底的な審査プロセスと亡命申請の結果が出るまで、すべて拘留されるべきだと強調した。
国境警備隊は過去11か月の間に280万人以上の不法移民を逮捕しており、同期間における逮捕数では過去最多を記録した。
「国の主権に反し、法の支配に反し、不法に国境に侵入した者がいた場合でも、米国は『困っている人たち』を助ける道徳的義務があるとして手を差し伸べてきた。しかし、それが裏目となり、我々の善意が踏みにじにられている」
「そして、我が国の安全と国家安全保障に悪影響を及ぼす可能性があるにもかかわらず、その潜在的な負の影響を無視してきた」
エポックタイムズは税関・国境警備局に、過去1年間に国境で逮捕された、あるいは米国内に釈放された国家安全保障上の懸念がある外国人の数について問い合わせたが、本記事掲載までに返答は得られなかった。
モーガン氏は、米国の現在の最優先事項は、FBIの統合テロ対策本部が、過去数年間に米国で釈放された数万人の国家安全保障上の懸念がある外国人に対する広範な事情聴取と身元調査を行うべきだと示唆した。
「それが今一番の課題だ。テロリズムを支援し、匿い、助長する国から来たのだから」とモーガン氏はいう。
「彼らが過激なイデオロギーを共有していないことを確認したい。これは妥当で合理的だ」
(完)
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