2023年の大晦日の夜、香港のビクトリアハーバーでは、毎年恒例のカウントダウン花火イベントが開催された。
過去最大規模で最長時間(約12分間)と宣伝されたこのイベントを現地で見ようと、20万人ちかい中国本土からの観光客が香港を訪れた。
しかし、このうち少なくとも7割にあたる14万人の中国人観光客が、イベント終了後その日のうちに「帰国」を急いだ。そのため、香港側の出国ゲートや税関が大混雑し、一時は麻痺する事態にまでなった。
「一晩でもホテル代を使いたくない」。そのような意味にもとれる中国人観光客の行動について、ネット上では「香港への貧乏旅行」と揶揄されるとともに、香港人ネットユーザーからは非難の声が多く上がっている。
花火イベントの終了後、中国本土からの観光客は、帰国を目指して一斉に大移動を始めた。ところが、あまりに大勢であるため、出入境検査場である「皇崗口岸」や中国国境へ行くための香港側の通過駅である「上水駅」などで、足止めを余儀なくされてしまった。
ネットに投稿された情報によると、「上水駅」のバス待合所では、バスに乗るため並んだ行列が長く伸びて、近くの歩道橋にまで続いていたようだ。
このほか、花火イベント会場に近い尖沙咀エリアや付近のマクドナルドの店内で夜を明かす中国人観光客も少なくなかった。
あるマクドナルド店内は、床にべったり座って休んだり、携帯電話を操作する中国人客であふれた。皆、疲れ切っており「まるで難民キャンプに来たようだ」と不満を漏らす中国人も多かったという。
近年中国では、若者を中心に、出来るだけお金をかけずに即戦即決する「特殊部隊のような旅行スタイル」がブームとなっている。彼らはレンタル自転車などを使い、複数の観光ポイントを、すさまじい強行軍で回るのが常である。
香港人はこれを「(中国人の)貧困旅行」と呼ぶ。中国本土からの観光客に対して、ネット上では「花火は見たい。だけど(彼らは)ホテルには泊まりたくないし、できるだけお金も使いたくないのだ」と、香港人ネットユーザーの反応は冷ややかなものである。
「金がないなら、来るな」「一晩くらいホテルに泊まれよ」「貧乏くさくて、みっともない」。そこまで言っては身も蓋もないが、香港人から見た中国人観光客の印象は、総じて好ましくないものが多い。
なかには、中国人観光客による香港への貧乏旅行は「彼らを香港へ誘致して、大いに消費させようという香港政府の企てを失敗させた」という声もある。
香港旅遊促進会の崔定邦・総幹事はメディアに対し、同様の事態は2023年11月に開催された多くのコンサートでも発生していた、と明かしている。
崔氏は「中国本土からの大量の観光客が(香港に泊まらず)一斉に帰国しようとする事態、およびそれに伴う大混雑は予測できたはずだ」として、香港で足止めされる事態は香港のイメージを損なう、と当局を批判した。
その中国本土のほうでは、今年から「新年を祝うために人が集まるイベント」を突然、全国的に禁止している。
その理由について、中共当局は明言していないが「新年祝賀の行事が大規模な反政府デモに変わり、政権の安定を脅かすことを恐れているためだ」という見方がある。
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