2024年は2月10日が旧暦元旦。前日の9日は中国の大晦日にあたる。
例年であれば、この長期休暇に家族や親族が集まり、テーブルを囲んで賑やかに新年を迎える。しかし今年は、そうはいかなかった地方もある。
今年、中国の華中地域(河南・湖北・湖南)は、例年にないほどの降雪に見舞われた。そのため、湖北省の高速道路上では大渋滞が発生し、さらに続いた積雪と路面凍結のため身動きが取れず、立ち往生する車が続出。湖北高速道路での交通渋滞は数百キロに及んだ。
渋滞が発生した原因は複数あると見られるが、上り坂にかかった大型トラックが雪のためスリップして失速し、後方の車が長時間動けなかったところへ降雪が続いたことが一因であるという。
2月9日、帰省途中の大勢の市民が故郷の家にたどり着けず、大晦日の夜を高速道路上で過ごした。これまでの渋滞の日数は、長い箇所では7日間に及んでいる。
この1週間に起きた交通渋滞の様子、および渋滞にともない路上で立ち往生する人々の危機的な状況について伝える動画や、困窮する被害者から発信されたSOS情報は、9日になると、ほとんど消えていた。
その間に、地元政府による積極的な救援活動や除雪が行われた形跡はない。そのため、これらネット上のSOS情報などは、当局の検閲に遭って削除された可能性が高い。
そうだとすると、高速道路上には、寒さに凍え、飲まず食わずのままとり残された人々や、危険を承知で徒歩で脱出を試みた人が、まだ無数にいるとみられる。いずれの人々も、生命の危機が迫っているはずだが、それらの現状について中国メディアは一切報じていない。
その代わり、いま中国のネットを埋め尽くすのは、中共の官製メディアや網軍(中共のネット工作軍団)による「湖北省の高速道路は、地元当局の懸命の努力によって、全線スムーズに通行できるようになった」とするアピールだ。
これについて、多くの民衆が「前日まで、あれほど多くの人が立ち往生していた。本当に無事に帰宅できたのか?」と疑問を呈している。しかし当局が情報検閲を開始したため、外部から現地の実態を知ることはできない。
それでも当局による情報封鎖のなか、おそらくそれは氷山の一角であるが「9日になっても、湖北省の一部の高速道路上には、依然として大勢の市民が立ち往生している」ことを示す動画が流出している。
ネットに流出した複数の動画よると、2月8日深夜、凍結した路面でスリップする交通事故が頻発したため、せっかく少しずつ動き出した道路が再度渋滞する事態にもなっているという。
過去1週間に及ぶ大渋滞の事態をうけ、ネット上では「地方政府の職務怠慢」を批判する声が広がっている。
あるネットユーザーは、以下のように荒唐無稽なコメントを投稿して、政府の不作為を痛烈に皮肉った。
「いまや高速道路での渋滞情報は、もう発信できなくなった。なぜなら、前日までの数百キロにわたる大渋滞は一瞬で解決したからだ。空っぽになったガソリンは指で補充された。雪は運転手が小便をかけて、完全に融けた。そして路上で立ち往生していた全ての車は、羽が生えて、それぞれの家まで飛んで行った」
なお、今回の湖北高速道路の大渋滞に起因する凍死や病死、徒歩での脱出途中における遭難死などがどれほど発生したか、その実数は明らかになっていない。
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