中国で人気のネットショートムービー「嗨!在靠近一點(邦訳:HI!もう少し近寄って)」について、なぜか中国での公開が遅れていた。その理由が、台湾メディアの報道で明らかになった。
それによると、同作品の主演女優である台湾人の呉沐玹氏が「台湾は中国のものである」という立場を表明する承諾書へサインしなかったことにある、という。
旧暦の大晦日(2024年は2月9日)の夜から元旦にかけて行われた中国中央電視台(CCTV)による中共賛美番組「春晩(春節連歓晩会)」に、今年は台湾から6人のアーティストが参加した。
その6人は全て「中国台湾」と表記された。同じく、香港やマカオ出身のアーティストも「中国香港」「中国澳門(マカオ)」などと表記され、物議を醸していた。
台湾メディア『三立新聞網」によると、今年から中国で活動する台湾人アーティストは全員「自身の政治的立場を明確にする承諾書」へのサインが義務付けられたという。つまり「台湾は中国のもの」という承諾書に、サインすることが求められるのだ。
しかし呉沐玹氏は、この「承諾書」にサインしなかった。その結果、彼女が主演するネットショートムービー「嗨!在靠近一點(邦訳:HI!もう少し近寄って!)」はテンセント(騰訊)の動画プラットフォームで放送禁止になった。そのうえ呉氏は、500万元(約1億円以上)の賠償金を請求されているという。
呉沐玹氏のマネージャーである陳孝志氏によると「公開遅延の原因は、提出書類に1つ漏れがあっただけであり、政治的な要因とは関係ない」としている。
香港紙「蘋果日報(アップルデイリー、2021年6月廃刊)」は2020年5月、中共を支持しない台湾や香港出身のアーティストに向けられた「中共当局による弾圧」について暴露している。
それによると、中国の「国家電影局(映画業界を所管する行政機関)」および「中国廣電總局(テレビ、映画、コンテンツなどをつかさどる当局)」は、中国国内の大手動画配信プラットフォームの「iQiYi(愛奇芸)」「Yokuku(優酷)」「テンセント(騰訊)」などに対して、「政治的な立場が明らかでない香港や台湾のアーティストをできるだけ起用しないこと。起用する場合は『10年間、正しい思想を持つこと』を保証する書類にサインしなければならない。これに違反した場合は、補償金を支払わなければならないことを口頭で通達していた」という。
現在、中国のラッパー・劉聰宣氏による台湾ツアーが予定されている。その宣伝ポスターには、台北を「中華台北」と表記していることが、物議を醸している。ネット上で「それほど台湾を軽んじるなら、台湾ドルを稼ぎに来るな」といった非難が殺到している。
台湾の与党である民進党の吳思瑤・立法委員(国会議員)は、次のように訴える。
「世界に『中華台北』という地名はない。これが意図的な弾圧であれば、厳しく非難しなければならない。音楽に、政治は介入すべきではない」
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。