米連邦下院の中国問題特別委員会委員長、共和党のジョン・ムーレナー(John Moolenaar)議員は、7月22日付の米国「ニューズウィーク」誌に寄稿し、中国が自国のインターネットを監視し、情報を制限する「ファイアウォール」を撤廃することを提案した。これにより、米中間のコミュニケーション障害を解消するとした。ムーレナー議員は、「ファイアウォール」の撤廃が、習近平が望む両国間のコミュニケーション障害を、解決するための第一歩であると述べている。
中国の「ファイアウォール」は2000年に設置され、当初は反共産主義のウェブサイトを遮断する目的であった。しかし、その範囲は次第に拡大され、Facebook、X(旧Twitter)、Instagram、YouTubeなどの西洋の主要なソーシャルメディアプラットフォームも対象となった。これらの技術を駆使し、中国共産党(中共)は国民と外部世界を隔離し、アクセスできる情報を厳しくコントロールしている。
ワシントンに本部を置く非営利団体フリーダム・ハウス(Freedom House)の「世界インターネット自由報告書」によると、中国のインターネット自由度は9年連続で世界最下位となっている。中国政府はアルゴリズム、合成メディア、人工知能(AI)などの技術を利用してインターネット環境を監視し、管理している。
新世代に歪んだ社会を作り出す
現状の「ファイアウォール」内で育った中国の新世代、いわゆるZ世代は、この閉鎖的なインターネット環境に慣れており、それを当然のものとして、受け入れている。
中国江蘇省出身の留学生、劉さんは、日本の大学院で学ぶ中で、日本に来る前、西洋のソーシャルメディアに触れたことがなく、ウィーチャットや百度(バイドゥ)などの国内プラットフォームで十分だと感じていたと語った。
このような環境は、若者たちの外部世界への理解を制限している。北京大学とスタンフォード大学が共同で行った研究によれば、中国の大学生は、未検閲の政治的問題に対して、興味を示さない傾向がある。
無料の「VPN(中国のネット規制を回避する)」ツールを提供しても、積極的に使用しようとする学生は少ないという結果が出ている。
ムーレナー議員は、中国共産党がインターネットを利用して人民を管理することで、社会全体のコントロールを強化していると指摘する。
中共は物質的、経済的、政治的、文化的、思想的な全ての面で完全な支配を目指しているので、それは実際、国内の治安維持にかかる予算は、軍事費を上回る額にのぼっているという。
前国務長官のマイク・ポンペオ氏もまた、中国人民が最終的に国の歴史的進路を決定するだろうと述べ、米国は中国人民が必要とする情報を提供し、彼らが自由にアクセスできるようにすることが重要であると強調した。
ポンペオ氏は、中国の一党支配を終わらせる日が来ると予見している。
国際社会へ
「ファイアウォール」の存在は、中国国内だけでなく、米中関係や国際社会全体にも大きな影響を与えている。中共の厳しいネット管理は、外部世界からの理解を妨げ、中国人民が外部情報にアクセスすることも困難にしている。ムーレナー議員はさらに、中国共産党当局は情報統制の技術を海外にも拡大していることを指摘した。
「ファーウェイ、ハイクビジョン、ZTEなどの国家支援企業の助けを借りて、中国共産党は迅速に監視技術を国外に輸出している」と述べた。
「ニコラス・マドゥロ(Nicolás Maduro)政権(ベネズエラ)からイランのアヤトラ(Ayatollah イスラム教シーア派の最高位の宗教指導者を指す称号)たちまで、中国共産党はその悪意のある技術を輸出し、権威主義的な政府がネットを制御し自国民を抑圧するのを支援している。これは世界的に人権を侵害するだけでなく、親中国共産党の政府ネットワークを構築することで、中国共産党に依存して権力を維持する政府が増え、米国の国家安全保障を脅かしている」
ムーレナー議員は、習近平が米中間のコミュニケーション障害を解決するための第一歩として、「ファイアウォール」を撤廃することを提案している。これにより、相互理解が促進され、中国社会がより開かれた自由なものとなることが期待される。
ムーレナー議員は、中国人民が多様な情報にアクセスできるようになることで、中国共産党の一党独裁体制が揺らぐ可能性があると指摘する。
情報の自由度は、国民が政府の政策や行動を批判的に評価するために不可欠である。これが実現すれば、中国共産党の統治は一層困難になり、最終的にはその解体に至る可能性がある。情報の自由度は、中国がより開かれた社会に向かうための重要なステップであり、国際社会との相互理解を深めるためにも不可欠である。
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