「頭がおかしくなった」「精神病患者」「狂人」を中国語では「瘋」という。いま、中国の若者の間で「瘋遊」が流行している。
「瘋遊」は今月1日から始まった中国の長期休暇期間中に突然起きた。
その実態は、上の写真のように若者たちが遊びに出かけて精神病患者が着る入院着を着て団体で楽しむもの…といっても、頭だけでは理解しがたいので、ひとまず下記動画をご覧になっていただきたい。
(「瘋遊」中)
「瘋遊」の動画は中国SNSに大量に投稿されており、大炎上している。模倣者は増える一方で、それに伴いネット通販で同じ型の入院着の検索回数も販売量も急増し、「入院着がめちゃくちゃ売れています!」と中国のSNSのトレンド入りしているのだ。
一部のネット販売業者によると、この「瘋人用入院着 」は最近大人気で、これを着て動画をとるために購入する人が多いという。
なぜ「瘋遊」を?
野外でおかしな動きをとったり、変わったダンスをする。なぜ、そんな遊びを? という素朴な疑問について、「入院着」姿でダンスをするインフルエンサーの「娟子」さんにいわせれば、「入院着を着るのは面白いし、不安を和らげてくれる」そうだ。
「しかし、時には誤解を招くこともある」という。その誤解というのは、ある時、彼女が入院着姿で川辺でダンスをしていたら、「川に身を投げ自殺しようとしている若者がいる!」とある老人が110番通報したという。
ほかにも、「瘋遊は一種のストレス発散方法であり、仕事で消耗したメンタルを治癒できる」と解説する声も多く、「瘋人(瘋遊して)になってから、メンタル状態がものすごく良くなった!」というコメントも多く寄せられているのだ。
旅行項目にも
「瘋遊」はその人気ゆえに、ついには旅行項目の1つにもなったようだ。これまでは「貧乏旅行」が若者に人気だった。
あるツアーガイドが公開した動画のなかには、実に楽しそうに遊ぶ「瘋遊」項目の参加者たちの姿があった。「病人たちよ、集合~」の号令を聞いた若者たちは全員入院服に着替え、集団で芝生の上を転げ回ったり、そしてダンスしたり、奇妙な動きをして、とにかく楽しそうに遊んでいたのだ。
とまあ、本人たちは実に楽しそうだが、周りの目はどうか。
「あんな行動は普通じゃないから、さすがに近寄れない」「ちょっと怖い」と不安を感じるという声は多い。
現代中国の社会を映し出す「鏡」
経済低迷が続くなか、失業率はうなぎ登り、若者はかつてないほどの就職・生活の巨大なプレッシャーに晒されている。苦しい現状に希望を持てない明日への不安、ぎりぎりの精神状態が長く続くなかで、自ら死を選ぶ若者も近年急増している。
若者の間で急に流行り出したこの怪現象をめぐっては、「瘋人のように人の目など気にせず、あえて変な動きをして普段縮こまっていた自分を全開にする瘋游は確かにメンタルに良さそう、あまり人様に迷惑かけずに自分たちで楽しめるのもいいんじゃないか? 若者には息抜きが必要だ」といった包容的な意見もあるが、「この異常な現象は、現代中国の社会がいかに病んでいるかの状態を示す鏡」と考える人も少なくない。
(「瘋遊」中)
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