今年に入ってから、金の現物価格と先物価格は相次いで過去最高値を更新している。10月21日には現物価格が1オンス(約28.3グラム)あたり2730ドル(約41万円)の高値をつけ、中国の多くのブランドの金飾品が1グラムあたり800元(約1万2千円)を超えた。アナリストたちは、今後も金価格の上昇圧力が強いと見ている。中国の消費者はこれまで、価格が下がるよりも上がる時に購入するという心理が見られたが、今回の金価格の上昇に追随しなかった。
国際市場での金の高騰
21日、アジア市場で金の現物価格は一時、1オンスあたり2732.84ドルの史上最高値に達し、その後、ヨーロッパ市場の早盤で2730ドルに下落した。同日、周生生(Chow Sang Sang)、周大福(Chow Tai Fook)、老廟黄金(Lao Miao Gold)などのブランドの金飾品は、いずれも1グラムあたり800元以上の価格で取引された。
ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のデータによれば、今年の金価格はすでに30%以上の上昇を見せており、1979年以来最大の年間上昇率を記録している。先週までに、金先物は34回の取引で過去最高値を更新している。
世界金協会が発表した最新の報告によると、9月には現物資産を担保とした金ETF「金の上場投資信託(Exchange-Traded Fund)」のことで、証券取引所で取引される投資信託が5か月連続で資金の純流入を記録し、総保有量は3200トンに増加した。これは、投資家が金に強い関心を寄せていることを示している。
情報サービスプロバイダーであるキットコ(Kitco)の金調査に参加した16人のアナリストのうち、15人(94%)が、今後1週間の金価格がさらに上昇すると予想しており、1人(6%)は中立の立場を取った。価格が下落すると予測した者はいなかった。
また、個人投資家の間でも強い関心が見られる。Kitcoのオンライン調査には159件の投票が集まり、72%の個人投資家(115人)が金価格の上昇を予想しており、17%(27人)が下落を見込んでいる。残りの11%(17人)は横ばいを予想している。
アナリストたちは、金価格の上昇の動きが依然として強いと考えている。主な要因として、国際的な地政学的緊張、各国中央銀行の利下げ、市場の不確実性、そして物理的な金需要の高まりが挙げられる。
最近では、地政学的紛争が続き、安全資産への避難の動きが活発化している。朝鮮半島の情勢が緊迫し、北朝鮮がミサイルを頻繁に発射し、無人機が境界を越えるなどの事態が続いており、韓米合同軍事演習も規模を拡大している。また、中東の紛争はさらなるエスカレーションのリスクを孕んでいる。
また、世界の主要な中央銀行が相次いで利下げを行ったことも、金の需要を押し上げている。
各国の中央銀行の動向
10月12日、欧州中央銀行は25ベーシスポイント(金融や経済で用いられる単位で、1ベーシスポイント(bp)は0.01%変動させること)の利下げを実施し、今後3回の会合で同様の利下げが予想されている。
米連邦準備制度(FRB)は9月に50ベーシスポイントの利下げを行い、CMEの「FRBウォッチ」によれば、11月にはさらに25ベーシスポイントの利下げが99.3%の確率で見込まれている。
21日、中国人民銀行は新しい貸出市場金利(LPR)を引き下げ、1年と5年以上の貸出市場金利(LPR)がそれぞれ前月より25ベーシスポイント低下した。
中国市場の動向
不動産市場や株式市場とは異なり、中国の消費者はこの金の高騰にはあまり反応していない。
ジュエリー大手の六福集団が発表した最新の財務報告によると、7月1日~9月30日の売上高は前年同期比で16%減少し、店舗数も76店減少した。
今年に入ってから六福集団と周大福ジュエリーの株価はそれぞれ28%、36%下落し、時価総額は1千億香港ドル近く消失している。
今年上半期には、周生生が22店舗を閉鎖し、周大福は3か月間で95店舗を閉店した。中国では「代替品」や「必要でないものは買わない」といった消費トレンドが広がっており、一般消費者の支出が減少しているため、金製品などの高級品は特に影響を受けている。
中国共産党統計局のデータによると、2024年上半期の全国住民の一人当たり可処分所得(税金や社会保障費を差し引いた後に自由に使える所得)は5.4%の増加にとどまっているが、金製品の価格は24.28%も上昇している。
中国紙「魯中晨報」によれば、金価格の上昇が続く中、婚礼需要を除いた金製品の消費が減少し、さらなる店舗閉鎖につながる可能性がある。
また、金店の在庫状況、資金不足による在庫の減少などが閉店の背景にあるとされている。
「紅星新聞」が業界関係者の話として伝えたところによれば、多くの金ブランドの加盟店は、以前に、金価格の下落を見越して、保有していない金を借りて売却し、その後価格が下がった時に買い直すことで利益を得る投資手法で、金をショートセール(空売り)しており、金価格が上昇すればするほど損失が増大していると指摘している。過去の価格上昇局面でも、こうした要因で多くの店舗が閉店に追い込まれたという。
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