再エネ賦課金また値上げ…「実質増税だ」 強いられる“SDGs負担”

2024/11/30 更新: 2024/11/30

2024年4月15日に掲載した記事を再掲載

4月からの再エネ賦課金増額によって、電力料金が値上がりする。国民からは「実質増税だ」との批判の声が上がっている。再生可能エネルギー(再エネ)政策によって国民負担が増えるのはなぜか。専門家は「科学技術を理解していない政治家が、国連アジェンダ(行動計画)を優先させたためだ」と指摘する。

再エネ賦課金は、民主党政権時代に始まった固定価格買取制度(FIT)に由来する。太陽光や風力など、再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が高い価格で買い取り、その買取費用は、すべての電力利用者、つまり一般国民から徴収するというものだ。

「FIT制度は、再エネ普及促進のためにドイツの制度を借用したもので、運用に当たっては、日本特有の課題もあり、実情に合わせて柔軟な対応が求められる」。技術士事務所代表で技術コンサルタントの室中善博氏は大紀元の取材に語った。

室中氏は、オランダを拠点とする「Climate Intelligence Foundation(CLINTEL)」が宣言する、『World Climate Declaration(世界気候宣言)』に署名する6名の日本人のひとり。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏や慶應義塾大学産業研究所所長の野村浩二教授らが編著した日本のエネルギー政策提言書「エネルギー・ドミナンス」にも同意者として名を連ねている。

「再エネ発電は、既存の火力や原子力発電より、発電コストが高いといわれてきた。また、自然現象に制約されるため、再エネの設備利用率も従来型の1/5程度しかない。これでは普及しないためFIT制度が導入され、一般国民の賦課金を前提に、設置者には補助金が与えられるようになった。別の問題として、補助金で賄っている再エネの機器設備が人権問題を抱えており米国などから非難される中国製であり、セキュリティ・リスクを抱えてしまうことだ」と室中氏は指摘する。

FIT制度は、2015年に国連で採択された「17の持続可能な開発目標(SDGs)」とも深く関連している。

岸田政権は、再エネ還付金については「カーボンニュートラルの実現に向けて(中略)再エネ賦課金を含む現行の制度を着実に運用していくことが必要」(23年11月衆院本会議)と述べ、この制度の継続意向を示している。

SDGs、本当に有用なの?

再エネ政策が政府主体で進められるなか、社会では反対の声も上がっている。再エネを使っているかいないかに関わらず、一律徴収される再エネ賦課金は「実質増税だ」と批判する声も少なくない。

室中氏は、一般国民の賦課金という税金を前提に、FIT制度によって補助金をもらった設置者が利益を得るという不公平さがあると指摘する。

換言すれば、国民の税金を使って再エネ事業者を支援しているようなものだ。

このような不平等さは日本国民の間だけではなく、先進国と途上国の間でも見られており、構造的な問題となっている。内外のエネルギー事情を調査してきた室中氏によれば、アジアやアフリカなどの途上国において電力供給の中心は最も安価な石炭火力発電だという。途上国に、「石炭利用はまかりならぬ、ネットゼロを目指せ」と号令をかけても、それは、まさに彼らの暮らしを脅かすものであり、貧困を固定化させかねないと指摘する。

「(SDGsは)欧州の少数のグローバルエリートが空想的な未来を描いて、勝手に決めたことで、途上国などの事情を考慮していない。大きな影響を受けるのは、目標7でいうところの、『手ごろで信頼でき、持続可能な』エネルギー源を否定されようとしているグローバルサウス(南半球に集中する途上国)だ」と述べ、国際的な枠組みに疑問を呈した。

前出のエネルギー政策提言(エネルギー・ドミナンス)では、太陽光発電の大量導入について「太陽光発電は天候や気温に左右される間欠的なもので、既存の火力発電設備などに二重投資となるために経済性は本質的に悪い。すでに国民負担は増加している」とし、直ちに停止するよう求めている。このほか、災害時の感電・漏電の二次災害、森林伐採等に伴う環境破壊といった問題点を指摘した。

再エネ賦課金…実質負担は6万円以上とも

こうした問題をよそに、政府は今後10年間で150兆円ものグリーントランスフォーメーション(GX)投資を実現しようとしている。150兆円は国内総生産(GDP)の3%に相当する。

経済産業省が再生可能エネルギー賦課金の引き上げによる負担は、6万円以上に上るとの試算もある。前出の杉山大志氏はキヤノングローバル戦略研究所のコラムで見解を示した。

実際の負担額は企業の支払い分を含めるとさらに大きく、販売電力量から計算すると総額は2兆6897億円にのぼる。これは1人あたり2万2716円、3人世帯なら6万4554円にもなる。企業の負担分は最終的に家庭に転嫁されるため、再エネ推進のために家庭が年間6万4554円も負担していることになる。総務省の家計調査によると、3人世帯の年間電気料金は約12万円であり、再エネ賦課金によって事実上5割増しになっているのが現状だ。

パリ協定やSDGsを達成しようという政策は国民負担を強いることになると、室中氏は危機感を抱いている。「日本にもパリ協定離脱やWHO脱退などを決断する政治家がいればいいのだが…」と、混迷する日本政治の先行きについての不安を語った。

政党別で見ると、自民党は再エネ賦課金の見直しこそ掲げているものの、岸田政権は今回の訪米で脱炭素社会に向けたクリーンエネルギー推進をバイデン民主党政権と合意している。

立憲民主党や日本維新の会、公明党も再エネ政策推進派だ。再エネ賦課金の廃止を掲げているのは国民民主党および日本保守党(政治団体)となっている。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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