2024米大統領選 「脱炭素」がプロパガンダの可能性? もしそうなら

トランプ、ハリス両氏の2024アメリカ大統領選のエネルギー政策比較

2024/11/01 更新: 2024/11/01

2024年アメリカ大統領選挙では、トランプ氏とハリス氏がエネルギー政策で異なるアプローチを提示している。トランプ氏は化石燃料の生産拡大と規制撤廃を目指し、ハリス氏は再生可能エネルギーへの移行と消費者コストの削減を目指す。この記事では、両候補の政策を比較し、それがアメリカの未来にどのような影響を与えるかを掘り下げよう。

トランプ氏は伝統的なエネルギー開発を重視し、石油、天然ガス、石炭の環境規制を撤廃し、アメリカを世界のエネルギーの主要製造国にすることを目指す。

一方、ハリス氏は石油と天然ガスの高い生産量がアメリカのエネルギー転換に寄与するとし、再生可能エネルギー技術への投資や、クリーンエネルギーの効率向上を進め、一般市民のエネルギーコストを下げることを目指す。

トランプ氏は化石燃料の採掘を強化し、アメリカのエネルギー産業を「黄金時代」に戻すことを目指す

トランプ氏の選挙公約によれば、彼の政策の中心は環境保護規制や産業規制の緩和、アメリカの石油と天然ガスの生産を大幅に増加させることを、化石燃料生産者に奨励することだ。また、彼は化石燃料生産者への税金を減らし、関税を引き下げることでエネルギー価格を下げ、アメリカのエネルギー産業を「黄金時代」に戻す計画を立てている。

トランプ氏は、このアプローチがエネルギー生産を増やし、経済成長を促進し、雇用機会を増やすことで、アメリカのエネルギー市場における競争力を強化すると考えているという。

トランプ氏は次のように述べた。

「私たちがインフレを排除し、価格を迅速に引き下げ、歴史的に偉大な経済を築き、国防産業基盤を活性化し、新興産業を推進し、アメリカを世界の製造業の超大国にするつもりなら、アメリカのエネルギーを解放する必要があります。……アメリカを世界のエネルギー独立国にしましょう。私たちの化石燃料資源は他のどの国よりも豊富です」

また、トランプ氏は当選した場合、就任初日に行政命令に署名し、バイデン政権の再生可能エネルギー政策を停止し、風力発電などへの補助金を終了し、エネルギー省の再生可能エネルギー研究を廃止すると約束した。

アメリカ環境保護庁(EPA)は今年4月に新しい規則を発表し、石炭火力発電所に2032年までに温室効果ガスの排出量を90%削減することを義務付けけている。そうしなければ、石炭火力発電所が閉鎖される可能性があるのだ。

トランプ氏は9月の演説でこの規則を厳しく批判する。

この規定は、アメリカに壊滅的なエネルギー不足を引き起こし、インフレをさらに悪化させるという。演説の中で、当選した場合には「直ちに国家緊急声明を発表し、国内のエネルギー供給を大幅に増加させる。……すべての官僚的障害を取り除き、新しい掘削、新しいパイプライン、新しい精製所、新しい発電所や原子炉が迅速に承認されるようにする」と約束した。

トランプ氏の選挙チームは、彼が前回任期中に手続きを簡素化し、アメリカのインフラ建設を加速させたことを強調し、今度当選してバイデン政権下の気候提案を撤回すれば、アメリカの化石燃料生産の主導的地位を拡大できると述べているのだ。

前回、トランプ氏が就任する前、アメリカの環境評価には通常10年から20年かかっていた。インフラ建設の進捗を加速させるため、彼は不必要な規制を排除し、すべての審査手続きを2年以内に完了させるよう求め、空港や高速道路などのプロジェクトを迅速に開始できるようにするという。しかし、審査のスピードを上げる一方で、数十年にわたって維持されてきた、空気と水質の清浄基準を確保するための環境保護も必要だ。

トランプ氏が再選されると、バイデン政権が導入した太陽光、風力、その他のクリーンエネルギー技術に対する連邦税控除や、ハイテク製造補助金、温室効果ガスの規制が変更される可能性があるという。

ハリス氏は、高水準の石油と天然ガスの生産がエネルギー転換に寄与する

カマラ・ハリス氏は、この生産がアメリカのエネルギー転換に有益であり、クリーンエネルギーへの移行時に消費者が低価格でエネルギーを得る手助けをすると考える。

ハリス氏のエネルギー政策は、再生可能エネルギーの発展を推進し、民主党が提案した「グリーンニューディール」決議を支持することだ。

彼女が支持する「インフラ投資と雇用法案」、「インフレ削減法案」、および「チップと科学法案」には、電力インフラとクリーンエネルギーへの大規模な投資が含まれ、アメリカのグリーン再生製造分野での競争力を高め、中国との競争力を強化することを目指す。

同時に、彼女は低排出または無排出エネルギー事業の行政承認を加速し、クリーンエネルギーの発展を促進することを約束する。

ハリス氏の選挙キャンペーンのウェブサイトでは、「ハリス氏とウォルツ氏の政府は、クリーンエネルギー経済への投資を通じて、目標を達成し、行政プロセスを簡素化し、不必要な手続きを削減して、これらの投資が最大の効果を発揮できるようにする」と述べている。

さらに、ハリス氏は水圧破砕禁止令を支持しないことを明らかにした。バイデン政権はこの禁止令を推進しようとしたが、複数の州からの異議申し立てにより、最終的には実施されなかった。

アメリカ合衆国エネルギー省のデータによると、アメリカでは少なくとも200万本の油・ガス井が水圧破砕技術を用いて採掘されている。新たに掘削された油・ガス井の95%がこの技術を採用し、これらの井戸の生産量は全米の石油総生産量の43%と天然ガス総生産量の67%を占める。

インフレ削減法案

トランプ氏は「インフレ削減法案」に関して、未支出の資金をすべて撤回する意向を示している。この法案には、多くのクリーンエネルギー産業のアメリカでの製造投資を促進し、電気自動車や太陽光、風力などのクリーンエネルギー技術への補助金が含まれいる。

トランプ氏は彼の政策の中で、「(前政権の)未使用の予算をすべて道路や橋、水ダムなどの重要なインフラに再投資し、無意味な『グリーンニューディール』には使わせない」と述べている。

しかし、トランプ氏が「インフレ削減法案」の資金を撤回したり、他の用途に転用したりするには議会での投票が必要だ。現在、数人の共和党議員がこの法案を支持するが、一部の条項を維持する必要性を示している。

ハリス氏はこの法案を引き続き支持し、当選した場合には彼女の政府がクリーンエネルギー分野への投資を続けると約束する。

さらに、ハリス氏の選挙本部は8月14日に声明を発表し、食品価格の上昇を抑制するために「史上初の連邦禁止令」を推進し、連邦当局にこの措置を実施する新たな権限を与えることを発表した。

パリ協定

トランプ氏は2017年から2021年にアメリカの大統領を務めていた際に、アメリカをこの協定から脱退させ、世界的な注目を集めた。

彼は当時、この協定がアメリカのビジネス、労働者、国民、納税者に深刻な損害を与えると主張した。国家経済研究協会の研究によれば、2040年までにパリ協定は、アメリカの国内総生産(GDP)に3兆ドルの損失をもたらし、650万の工業分野の雇用が失われるとされるとした。

さらに、この協定は署名国に法的拘束力がなく、各国の扱いが異なるため、トランプ氏は悲観的な見方を持ち、再交渉を希望している。

トランプ氏の選挙チームは、彼が再選された場合、再びパリ協定から脱退すると述べているという。

ハリス氏は、反対に、アメリカがこの協定に引き続き参加することを確実にすると述べたという。

液化天然ガスの輸出戦略

バイデン政権は、今年初めに新しい液化天然ガスの輸出許可の発行を一時停止し、環境影響評価を行うことを決定した。この決定は一部の環境保護団体から支持を受けるが、エネルギー業界からの不満も引き起こす。

トランプ氏は、当選した場合、この禁止令を即座に解除し、液化天然ガスの輸出を促進してアメリカのエネルギー分野での主導権を強化すると述べた。

一方、ハリス氏は、環境評価の結果に基づいて政策を調整し、環境保護と経済発展のバランスを取るよう努めると指摘している。

曾子衡
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