日本と真逆の動きに 米下院議長 連邦議会議事堂の女性用トイレへの男性の立ち入りを禁止

2024/11/21 更新: 2024/11/21

経産省は11月8日、性同一性障害と診断され女性として社会生活を送っている経済産業省のトランスジェンダー(male to female)の職員に対して、省内のすべての女性用トイレの使用を許可した。一方、これまでLGBTアジェンダが推進されてきたアメリカでは真逆の動きが出ている。

11月20日、アメリカのジョンソン下院議長は、議会議事堂内のトイレ利用について「生物学的性別に基づく」制限を設ける方針を発表した。この新たな措置により、議会施設内のトイレやロッカールームなどの利用が、生物学的性別に限定されることとなった。

トランスジェンダー議員の当選が背景

今年の総選挙で、サラ・マクブライド州上院議員が、全米初のトランスジェンダーの議員として米下院に選出された。この結果を受け、ナンシー・メイス下院議員は、マクブライド氏の女性用トイレ利用を禁止する決議案を提出する意向を表明した。この動きに対し、下院民主党議員から強い反発が起こった。

ジョンソン議長は20日に「生物学的性別に基づく利用制限」を正式に発表した。この制限により、女性として生きることを選んだマクブライド氏は、女性用トイレを利用することが事実上禁止されることになった。

ジョンソン議長は声明で「議会議事堂および下院オフィスビル内の全ての単一性別施設(トイレ、更衣室、ロッカールームなど)は、生物学的性別に基づいて利用が許可される」と述べ「各議員事務所には専用のトイレがあり、議事堂内には男女共用トイレも設置されている。女性には女性専用の空間が必要だ」と強調した。

なお、この規定は上院の施設には適用されない。上院の施設管理権限は多数党院内総務に属し、2025年1月3日には上院の多数派が共和党に移行する見通しだ。

ジョンソン氏の措置は、2025年1月3日に採択される第119議会の下院規則パッケージで共和党議員団によって支持される可能性が高い。一方、下院少数党院内総務のハキーム・ジェフリーズ議員は11月19日の記者会見で、この制限措置を強く非難した。

「新しい下院共和党多数派が議会運営の開始にあたり、議員に対するいじめからスタートするというのか?これが11月の選挙から得た教訓なのか?」

同氏は「我々は、こうした行為を見逃さず指摘していく」と明言している。

メイス議員は、11月20日に連邦施設内で生物学的性別と一致しないトイレ利用を禁止する法案を提出する意向を発表した。共和党議員の間では、男性が女性のスポーツに参加することへの反対も相次いでおり、今回の措置はこの議論と同様の立場を反映しているとされる。

異なる方向性を取る背景

日本とアメリカの政策が異なる方向性を見せている背景には、それぞれの文化的価値観や政治的状況が影響していると考えられる。

日本では、LGBTQ+に関する取り組みが推進されている。昨年6月15日、参議院内閣委員会でLGBT法案が賛成多数で可決された。米エマニュエル駐日大使は「LGBT理解増進法」を支持し、日本政府に対してLGBTQの権利を保護するための強化を求めている。自民党の有村治子参議院議員は同日、主権への干渉と批判した。



有村治子議員、米エマニュエル大使言動を批判 「国会を愚弄している」

自民党の有村治子参院議員は15日、国会審議中のLGBT法案をめぐる米エマニュエル駐日大使の発言は「国会を愚弄」するものであり、その「不遜な態度」は日米関係に悪影響を及ぼすと強く批判した。

経産省がトランスジェンダーの女性職員に対し、省内のすべての女性用トイレの使用を認めるのは、職場環境の改善を図り、トランスジェンダー職員を含む全ての職員が安心して働ける環境を目的としている。

一方で、アメリカでは近年、LGBTに関連する政策や動向に対する批判の声が高まっている。

民主党系の世論調査会社Blueprintは出口調査で、「なぜハリス氏ではなくトランプ氏に投票したのか」について、理由の重要度を評価してところ「カマラ・ハリスは中流階級を助けることよりも、トランスジェンダー問題のような文化的な問題に重点を置いている」が3位にランクインした。

Foxニュースの出口調査では、3万人以上の有権者を対象に「政府や社会でのトランスジェンダー権利の支援は行き過ぎた」と回答した人が54%に上り、22%は「適切だった」、22%は「まだ不十分」と回答している。

清川茜
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