韓国半導体産業 中国のダンピング圧力で政府が支援策発表

2024/12/03 更新: 2024/12/03

韓国の主要輸出産業である半導体分野が、中国ダンピング(不当廉売)による深刻な影響を受けている。特に、一般向けメモリチップにおいて中国製品が市場を圧迫しており、韓国政府は自国の半導体企業を支援するため、約100億ドル規模の財政支援を打ち出した。

台湾メディアDIGITIMESが11月に報じたところによると、中国のメモリチップメーカーが生産する消費者向けDDR4製品の価格は、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンという世界3大DRAM(半導体メモリの一種)企業の製品価格の半分程度であり、最安値の製品よりも5%安いという。

中国の半導体メーカーは、トランプ次期大統領は就任後、半導体分野での中国共産党(中共)への制裁を強化すると見込んでおり、政権移行前に低価格戦略で海外市場を広げようとしている。業界関係者によると、中共政府の補助金政策により、中国のメーカーは赤字を恐れず、通用DRAMの生産量を大幅に増加させている。

野村証券の2024年9月の試算では、中国最大手の半導体メーカーである長鑫存儲技術(CXMT)は、2024年末までに月産能力を20万枚に引き上げ、世界のDRAM生産量の約11%を占める見通しである。同社の製品はサムスン電子やSKハイニックスに劣り、知的財産の問題で輸出製品の取り扱いが難しい。しかし、中共政府の支援を受け、中国市場でスマートフォンやPC向けに一定のシェアを確保する可能性がある。

韓国が中国に輸出するチップのほとんどは汎用メモリのDRAMだ。チップ輸出を中国市場に大きく依存している韓国にとって、これは間違いなく打撃だ。

韓国の対中半導体輸出、12年ぶりに40%を下回る

韓国は、半導体、特にメモリチップ分野で世界強国の一つであり、その輸出は中国市場に大きく依存してきた。

韓国貿易協会のデータによると、2022年と2023年に、韓国のメモリ半導体輸出に占める中国向けの割合は、それぞれ51.4%と44.7%だった。しかし、2024年の1月から9月までは37.9%にまで低下し、12年ぶりに40%台を下回った。

中国製の安価なDRAMは、韓国の半導体大手サムスン電子にとって大きな打撃となっている。サムスン電子は、韓国の輸出全体の約18%を占める基幹企業。その輸出は韓国の総輸出の約18%を占め、韓国経済において極めて重要な位置を占めている。

しかし、同社の業績は中国市場に大きく依存している。サムスン電子が10月末に発表した今年第3四半期の半導体部門の営業利益は3兆8600億ウォン(約4127億8762万円)で、前年同期比40%減少し、市場予想を大幅に下回った。

現在、AIの普及により世界的に「半導体の春」とも呼ばれる好況が訪れているが、サムスン電子は業績が低迷している。市場が活況を呈している時期に業績が悪化したのは、同社にとって今回が初めて。

サムスン電子は10月に第3四半期の決算を発表した際、業績不振の理由の一つとして、「中国のメモリ企業による汎用チップ供給量の増加が同社の業績に悪影響を与えた」と異例の発表を行った。

SKハイニックスは人工知能(AI)向けメモリチップで世界最高の競争力を持ち、第3四半期には過去最高の業績を記録した。しかし、一般向けメモリ製品では予想を下回る結果となった。

現在、サムスン電子とSKハイニックスは汎用DRAMの生産を抑え、高付加価値の製品に特化した先進的な製造プロセスに注力している。

SKハイニックスは最近、世界的な投資銀行であるゴールドマン・サックスとの会合で、DDR4 DRAMメモリと低電力(LP)DDR4の生産比率を、第2四半期の40%から第3四半期には30%に引き下げたと発表した。さらに、第4四半期にはこの比率を20%まで削減する計画である。

また、サムスン電子も10月に行った第3四半期決算説明会で、汎用DRAMの生産比率を引き下げる計画について言及した。

韓国政府、半導体産業への大規模支援策を発表

韓国銀行は11月の「経済展望報告書」で、世界の半導体産業が高帯域幅メモリ(HBM)などの高性能製品を中心に急速に再編されていると指摘した。これに伴い、韓国の半導体輸出も増加が見込まれるが、中国の追い上げが大きな脅威となっていると警告している。

 

米国の経済学者、デイビー・ウォン氏は、大紀元の取材に対し、韓国の主要産業が直面する困難は、中国の現在の競争モデルが世界の経済、政治、軍事、技術分野の既存のルールに対する深刻な挑戦であることを浮き彫りにしていると述べた。

ウォン氏は、韓国政府が今後、政策面で技術開発を強化し、製品の付加価値を高める必要があると指摘している。また、市場の多様化を迅速に進めることも求められるとしている。

韓国政府は11月に、半導体生態系の強化と国際競争力の確保を目的に、半導体関連企業向けの政策支援を発表した。

計画によると、2024年には、材料、部品、設備、ファブレス(設計会社)などの分野に対し、総額14兆ウォン(約100億ドル)以上の資金を低利で提供する予定である。また、京畿道龍仁と平沢に建設中の半導体クラスターにおけるインフラ整備費用の企業負担を大幅に軽減する計画である。半導体企業の研究開発や設備投資に対する税制支援も拡大する予定だ。

韓国の主要輸出産業に中国市場依存の影響

中国市場への依存が深刻であることから、韓国の多くの主要輸出産業が影響を受けている。韓亜金融経営研究所が今年6月に発表した報告によれば、中国が生産量を大幅に増加させている製品の多くが、韓国が輸出する同種の主要製品であることが明らかになっている。韓国と中国の上位15品目の輸出品のうち、10品目が競合している状況である。

報告によると、2024年1~3月の平均輸出単価を基準とした場合、半導体、車両、バッテリー、造船、鉄鋼といった両国の主要競争品目において、中国製品の輸出単価は韓国製品の30~70%に過ぎない。中国の廉価輸出により、韓国の輸出競争力が弱まることは避けられないと指摘されている。

 

吳歡心
寧芯
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