「マイナ保険証」本格移行 医療機関でトラブルや混乱相次ぐ

2024/12/03 更新: 2024/12/03

日本の健康保険制度が大きく変わり、マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」を基本とする仕組みに移行する。

「マイナ保険証」の利用を促進するため、政府は2日から保険証の新規発行を停止。既存の健康保険証は最長1年間(2025年12月1日まで)使用可能である。マイナンバーカードを持っていない人や利用登録していない人には「資格確認書」が送付される。

医療機関での迅速な本人確認や、過去の検査結果や処方履歴の共有が可能となり、重複検査の防止や適切な医療提供が狙いだったが、医療現場や国民からの不安や批判の声が根強く、政治的な議論が続いている。

特に、マイナ保険証対応のシステム導入に伴うコストや運用負担が課題となっており、小規模なクリニックでは、導入費用が財務的な負担となり、導入をためらう要因となっている。

香川県保険医協会が2024年5月以降に実施した調査によると、回答した医療機関の約6割でマイナ保険証関連のトラブルが報告されている。医療機関に設置されたカードリーダーが正常に機能しない場合や、マイナ保険証の情報を読み取る際に、文字が正しく表示されない問題、マイナ保険証が使用できない状況などが発生している。

賛否両論の「マイナ保険証」 政府がメリット訴え 

マイナ保険証をめぐっては、期待できる点と問題点の双方ある。

顔認証付きカードリーダーを使用することで、迅速な本人確認が可能となり、医療機関での受付がスムーズとなるほか、過去の診療情報や薬剤情報、特定健診の結果を医師や薬剤師と共有でき、より適切な医療を受けることができるといった利便性がある。そのほか、 限度額適用認定証の提示が不要となり、窓口での高額療養費の支払いが軽減されるメリットもある。

一方、患者がマイナンバーカードを健康保険証として使用する場合、医療機関側はオンライン資格確認システムを通じて保険資格を確認するが、患者の保険情報がシステムに正しく登録されていなかったり、保険の変更が反映されていないと、「資格なし」と判断される場合がある。保険適用がされず、患者が医療費を全額自己負担しなければならない事態となる可能性がある。

また、保険者情報の入力ミスやシステムのアルゴリズムの不具合により、患者の保険情報が他人の情報と誤って紐付けられる場合があり、患者本人の保険資格が確認できなかったり、他人の情報が誤って使用される可能性がある。プライバシー侵害や医療安全性のリスクにさらされる恐れがある。

そのほか、災害時の停電やシステム障害によって、マイナ保険証での資格確認ができなくなるリスクが指摘されている。特に電力供給が途絶える場合や通信障害が発生する場合、利用が停止する恐れがある。

厚生労働省によると、10月末時点のマイナンバーカード保有率は全国で75.7%、うち82.0%が保険証の登録をしているが、医療機関や薬局でのマイナ保険証利用率は15.67%にとどまっており、利用率の低迷が問題視されている。

福岡資麿厚生労働相は先月12日、閣議後の記者会見で、「マイナ保険証」の利用登録の解除が可能となった10月下旬から、これまでに800件近く解除申請があったと明らかにした。

こうした中、林芳正官房長官は2日の記者会見で、「マイナ保険証」を基本とする体制に同日から移行したことに関し、「国民にメリットを伝えるとともに、(マイナ保険証の)未利用者も確実に保険診療が受けられるよう対応する」と述べた。

また、石破首相も「本人の健康医療情報を活用した適切な医療の提供に大きく寄与する」と利点を強調している。

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