中国の刑務所におけるベッドは、睡眠のためだけのものではない。この事実を最もよく知るのは、神韻交響楽団の指揮者、陳纓氏である。
刑務所の看守たちの手にかかれば、床から約45センチの高さにあるベッドが拷問の道具となる。看守たちは、当時29歳だった陳纓氏の弟を縛り上げ、叫び声を上げられないよう口をテープで塞ぎ、その身体を折り曲げてベッドの下に押し込んだ。さらに、看守の一人がベッドの上に乗り、その背中に圧力をかけた。
この脊椎を折る可能性のある拷問は、真・善・忍を基盤とし、坐禅を伴う精神的修煉である法輪功の修煉者に対して、中国共産党(中共)当局が考案した数多の虐待の一つに過ぎない。
1999年当時、中国国内での法輪功の修煉者は7千万から1億人に上ると推定されていた。その人気を脅威とみなした無神論の中共は、同年からこの信仰を撲滅するキャンペーンを開始した。信仰を捨てることを拒否した人々は、強制労働や薬物による精神的拷問、さらには臓器を強制的に摘出し販売するといった残虐な仕打ちを受けた。
「彼らが行った犯罪は、言葉では言い表せないほど残酷なものでした」と陳氏は「大紀元」に語った。
物静かな性格だった弟は、真夜中に北京の自宅から連れ出され、18か月間の労働キャンプに送られた。陳氏によれば、弟が生き延びたことは「幸運」だったという。同じ拷問を受けた別の法輪功修煉者は、永久的な麻痺に陥った。
弟は死の淵で苦しみ、髪が白くなるまで追い詰められた。一方、アメリカに住む陳氏は、弟の窮状を世に知らせるため、地元メディアに助けを求めていた。このような拷問が中国で日常的に行われていることを知ることは、彼女にとって大きな苦痛であった。
「これは私たちにとって非常に現実的な問題です」
こうした物語が、共産党支配下のメディア環境では見出しに載ることはない。陳氏は、親しい友人が被害を受けない限り、中国内外の人々がその現状を知ることはないと指摘している。
2003年に弟が中国から脱出した後、陳氏は、両親が中国国家オーケストラで30年以上の経験を持つ一流音楽家であることもあり、自分がただ傍観することはできないと考えた。
2006年、ニューヨークで陳氏とその両親は、共産主義支配下の中国では不可能な方法で芸術表現を高めることを目指す志を共有する芸術家たちと合流した。そして、神韻芸術団が誕生した。
文化的ルネサンス
法輪大法情報センターの事務局長であるレビ・ブラウディ氏は、神韻の起源は、中国における草の根の反体制運動と並行していると述べている。
中共が1960~70年代に実施した文化大革命は、中国の貴重な文化財や多くの古代寺院を破壊した。その結果、1990年代には、気功という伝統的な中国の呼吸法、瞑想、緩やかな運動を組み合わせた修煉が、精神的な空白を埋める手段として注目されるようになった。
1992年に法輪功が世に伝え出された後、瞬く間に人気が広まり、修煉者たちはその心身への効果を家族や友人に教えた。その結果、7年後には、中国の13人に1人は法輪功を実践していると推定されるほど広がった。
「これは、共産党政権下で何十年もの間認められなかった伝統的な中国の精神性の復活であり、ルネサンスだった」とブラウディ氏は述べた。
1999年に弾圧が始まって以来、中国全土の法輪功修煉者たちは、政権が法輪功とその信者に対して行っている行為を明らかにするため、家でパンフレットを印刷し、夜の闇に紛れて地域の近隣に配布してきた。これは、圧倒的な国家プロパガンダによる中傷キャンペーンに対抗するためである。
その過程で、法輪功学習者全体は、弾圧だけでなく、さらに大きな問題に直面していることに気づいた。
「我々の社会全体が、自分たちの歴史について無知なのだ」とブラウディ氏は述べている。同氏の組織は、この運動を題材にした短編ドキュメンタリーを制作している。この気づきが、彼らをより深い掘り下げへと導き、「中共の本当の歴史や中国文化の核心について語ろう」という考えに至ったという。
舞踊、音楽、衣装、物語のいずれもが、共産主義の影響を排除し、中国の5千年にわたる伝統文化を顕す目的で制作されている。
「ある意味では、法輪功の窮状に耳を傾けるだけでなく、周囲を見渡して『これが中国なのか? 私たちは何になってしまったのか?』と自問するきっかけを与えた。人々の心が解放されたような気がする。これは大いなる覚醒だったのだ」
ブラウディ氏は、神韻が同様の目的を体現していると考えている。中国で現在も続いている悲劇を浮き彫りにするだけでなく、神韻公演では、すべての要素が入念に選ばれている。舞踊、音楽、衣装、物語のいずれもが、共産主義の影響を排除し、中国の5千年にわたる伝統的な文化遺産を顕す目的で制作されている。
「中国共産党の党文化と、その影響力や支配の方法には非常に暗く重いものがあると彼らは感じたのだと思う」とブラウディ氏は述べた。
一方で、古代中国の文化には「普遍的な宝石が存在している」
「それは普遍的な原則を持ち、人々を自分自身の人間性、より良い部分に再び結びつけ、神聖なものへと再びつなぐ方法を提供する。そして、それは人々を高揚させる力がある」と同氏は語った。
アメリカ国内での前例のない反法輪功キャンペーン
中共政権は神韻に対する敵意を公然と示し、長年にわたり公演会場に圧力をかけて公演中止を求め、政府関係者に支持を撤回し公演に出席しないよう要求するキャンペーンを展開している。神韻芸術団のツアーバスのタイヤが傷つけられ、走行中に破裂するよう細工されるといった妨害を繰り返し受けている。
最近、この妨害活動はさらに悪質な様相を呈している。
2022年の秘密会議と新たな戦略
2022年、中共トップ習近平は、SNSや中共との直接的な関連が表立たないメディアを通じて偽情報を拡散する戦略を打ち出す秘密会議を開催した。この新戦略には、アメリカ政府機関を取り込んで法輪功に反対する行動を取らせる努力も含まれていた。この秘密会議については「大紀元」が2022年12月に報じている。
最近の内部告発者の証言や裁判記録によれば、中国政府当局者はこの指示に忠実に従っていることを確認している。
2023年5月以降、少なくとも3回の上層会合で、中国の政治および法執行当局の幹部らは、「法輪功コミュニティの信用を失墜させ、西側の支援的な政府関係者との関係を断つ」ことを繰り返し強調している。大統領選挙後に行われた会議では、「法輪功とアメリカ政府の関係を破壊するためにあらゆる手段を講じよ」という具体的な指示が漏洩している。
中共政権は、密かな経路を通じて歪曲された情報を流す戦術にますます重きを置いている。この取り組みは、中国の工作員に対する少なくとも2件の現行の連邦検察案件の文書に記されている。
2023年4月、ロサンゼルス在住の中国人工作員、陳軍が、もう一人の男性(現在アメリカの政治を中共政権に有利に誘導しようとした疑いで捜査中)とともに、法輪功を中傷する記事をシェアしていた。さらに、「重大なプロジェクトを中共当局に報告する計画がある」と述べていたことが裁判資料により明らかになっている。
陳はニューヨーク州北部に赴き、法輪功修煉者の監視を行った。さらに、彼らの活動を妨害する目的で環境訴訟に関する情報を収集していた。この訴訟は、地域における法輪功コミュニティの成長を抑制する目的があるとしている。陳容疑者は最近、プロパガンダを事実として装った告訴状を提出し、IRS(アメリカ内国歳入庁)を買収し、神韻を調査させようとした罪で有罪判決を受けた。この告訴状についてFBIは「表面的に不十分」と評価している。
他の上層会合では、神韻関係者に対して脅迫的な発言を行い、西側メディア(ニューヨーク・タイムズなど)の神韻批判記事に貢献する資料を提供している中国系アメリカ人YouTuberに対する全面的な支持を表明した。これらの記事の多くは、中国メディアや当局によってさらに拡散している。
ブラウディ氏は「現在、アメリカ国内で非常に組織的かつ前例のない反法輪功キャンペーンが進行中だ」と述べた。
また、中国工作員による活動と中国当局から漏洩した指令が「完全に一致している」と指摘している。
世界をより良い場所にするために
習近平は2022年の秘密会議で、法輪功が中共政権の世界的な批判者としてその影響力を高めていることに懸念を示した。しかし、中共政権が神韻に特に執着する理由について、ブラウディ氏は次のように語る。
「神韻を中共の視点から見る必要がある。中共は巨大な嘘を基盤に権力を握った共産主義の全体主義政権だ」と彼は言う。
その「嘘」とは、中共が中国そのものであるとする主張だ。
中共は自らを「中国人民の真の守護者」と位置付け、「自分たちなしでは現代中国は存在しない」と宣伝している。
一方で、神韻は「共産主義以前の中国がいかに美しく、精神的で豊かな文化を持っていたか」を明確に示しているとブラウディ氏は述べる。
「中共の目から見れば、それは共産主義が消えた後の中国がどうなるかを暗示している。そのため、彼らにとってこのショーは存在そのものへの脅威だ」と同氏は続けた。
飛天大学での勉強
ブラウディ氏は、神韻のダンサーや音楽家を育成する飛天大学および飛天芸術学院に息子2人を通わせる決断を誇りに思っている。
「私は高校を首席で卒業したが、2人の息子は私よりも高いSATスコア(アメリカの高校生が受ける大学進学のための標準テスト)を取った。彼らは踊りや訓練、他の活動に多くの時間を費やしているのに、それでも私を上回った」
現在、2人の息子は学生実習プログラムの一環として神韻のツアーに参加しており、公演活動を通じて単位を取得している。神韻は8つの団体が世界各地を同時に巡演し、毎年100万人以上の観客がその公演を目にしている。
本物の自分を見せる魅力
神韻のパフォーマーたちが観客を惹きつける理由は、自分たちの「本物の姿」を見せているからだと陳氏とブラウディ氏は語った。
「それは単なる演技ではない」忠誠心や思いやりといった価値観を「瞬間ごとに」体現しようと努力しており、「観客がそれを感じ取っているのだ」。
陳纓氏は、「希望とインスピレーションに満ちたもの、そして共産主義がない世界がいかに素晴らしいものになり得るかを世界と共有したい」と述べた。
同氏は「私たちはこの世界をより良い場所にしたいのです」と締めくくった。
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