国防総省 墜落や作戦失敗を受けオスプレイの将来を見直し

2025/01/04 更新: 2025/01/04

アメリカ海兵隊、空軍、海軍は12月初めに飛行を停止していた全米で運用されているオスプレイについて、飛行再開を決定した。再開にあたり、厳格な「リスク軽減措置」を導入している。これには、従来より厳格な点検体制の導入や飛行時間の記録と監視の徹底が含まれる。

しかし、オスプレイの飛行が再開されたものの、根本的な問題は解決されていない。今回の運航停止は、オスプレイの長年にわたる技術的課題や事故の歴史に再び注目を集める結果となった。2023年11月には、8名の海兵隊員が死亡する事故が発生している。

今回の運航停止の原因は、オスプレイ特有のティルトローター式トランスミッション(動力伝達装置)の主要部品が設計上の想定を超える負荷に耐えられず、通常より早く劣化が進行していることにあるとされる。この問題は全てのオスプレイに共通しており、米国防総省は12月9日に全機の運航停止を命じた。

オスプレイが43年にわたり多くの問題を抱えている事実は、いくつかの疑問を生じさせる。まず、100億ドル(約1兆6千億円)以上を費やし、1989年の初飛行から現在に至るまでなぜ多くの課題や事故、運航停止を繰り返しているのか。次に、数百億ドルもの税金を投じて取得したV-22オスプレイが、信頼性に欠け、安全性も十分でないことに加え、ヘリコプターや固定翼機の代替として十分な能力を発揮していないのではないかという疑問だ。最後に、すでに投じたコストを考慮しつつも、V-22の今後を見直し、より能力の高いヘリコプターや固定翼機への回帰を検討すべき時期ではないかという点だ。

ティルトローター機が安全かつ信頼性の高い設計を実現できる可能性はあるかもしれない。しかし、数十年にわたる事故や機械的故障を踏まえると、V-22の設計が重大な欠陥を抱え、信頼性に欠けることは明白だ。そのため、オスプレイの採用が結果的に能力を損なう結果をもたらした可能性を考慮し、オスプレイでしか遂行できない限定的な任務や作業に使用を制限する方向性を検討する必要がある。

具体的には、オスプレイはヘリコプターと固定翼機の両方の役割を果たせる点が特徴である。この特性は、ヘリコプターをオスプレイで代替しようとする動きを促す。一方で、固定翼機をオスプレイに置き換えることで、航空機としての能力に加えてヘリコプターの利点も得られると期待される。

一見すると利点が多いように思える。しかし、たとえオスプレイが安全で信頼性が高く、運用コストも低かったとしても、現実にはティルトローター機はヘリコプターとしても航空機としても中途半端な性能しか発揮できない。

オスプレイはなぜヘリコプターとして不向きなのか

オスプレイはティルトローター機であり、垂直離着陸が可能だ。しかし、そのプロップローター(主翼についているローター)が生み出す激しい下向きの風はヘリコプターのローターによる風よりも集中度が高く、激しい。この特性により、多くの任務や作業においてヘリコプターよりも劣る。

最大の弱点は、プロップローターの激しい下向きの風と高温の排気が地面に強い力で吹き付ける点である。これにより、岩、砂、土が巻き上げられ、一部の場合ではヘリポートさえ破壊される。これらは周囲の人々に危険を及ぼすだけでなく、巻き上げられた物質がエンジンに吸い込まれ、エンジンの損傷や故障を引き起こす可能性がある。また、オスプレイの下向きの風が発生させる砂塵や煙の雲が視界を遮ることで、パイロットは安全な着陸操作ができなくなる場合もある。

またこの激しい風のため、ホバリングを必要とする任務、例えば海上救助や兵員の急速な降下、吊り荷の運搬などはより高いホバリング高度で行う必要がある。この点でオスプレイはヘリコプターに劣る。また、遮蔽された雲に囲まれた状況でのホバリング時間は60秒以内に制限される。さらに、排気熱の問題により、一般的なホバリング時間もヘリコプターよりはるかに短い。

オスプレイの激しいプロップウォッシュ(後方気流)と排気は、ヘリコプターに対応した艦船の甲板を損傷させる。このため、揚陸艦などヘリコプターの運用を前提として設計された艦船に対して、高価な甲板改修が必要になる。この点も、ヘリコプターが着陸地点の柔軟性において圧倒的に優れていることを示している。

最後に、オスプレイは動力を失った場合、ヘリコプターのように安全なオートローテーション(自動回転)を行うことができず、固定翼機と比べても滑空性能が劣る。このため、動力を失うと乗員や乗客の生存率が低下する。この特性からオスプレイは「未亡人製造機(Widow Maker)」と揶揄されている。

オスプレイが平凡な航空機である理由

オスプレイが航空機として平凡である理由は、複雑で信頼性が低いことに加え、そのプロップローターが標準的なプロペラに比べて効率が低い点にある。この効率の低さは、燃料消費の増加や、同規模のターボプロップ機よりも低い最高速度となって現れる。

これらの問題がある一方で、安全で信頼性の高いティルトローター機があれば特定の任務において最良の選択肢となり得るのも事実である。しかし、オスプレイの運用コストが1時間あたり8万ドル(約1千3百万円)に達する現状では、信頼性が高く、より費用対効果の高いヘリコプターや固定翼機をオスプレイで代替する決定を再考すべきだ。

オスプレイの抱える未解決の問題や高い運用コストを考慮すると、ペンタゴンはオスプレイを「埋没費用」と見なし、V-22でしか遂行できない限られた任務や作業にのみ使用を限定するべきである。それ以外の任務や作業については、適したヘリコプターや固定翼機に移行するべきである。

最後に、陸軍がヘリコプターから新型の未検証のティルトローター機「V-280 Valor」への移行を計画していることについても、慎重な再評価が必要である。

国防改革を中心に軍事技術や国防に関する記事を執筆。機械工学の学士号と生産オペレーション管理の修士号を取得。
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