バイデン政権は1月14日、中国およびロシア製の新車が米国内で販売されることを事実上禁止する規則を確定した。
商務省の産業安全保障局(BIS)が発表した新規則では、スマートカーや自動運転車に使用されるハードウェアおよびソフトウェアのうち、中国またはロシアに「十分な関連性」があるハードウェアやソフトウェアを組み込んだも車両の輸入を禁止する。
また、米国内で製造される新車についても、そのような部品が含まれている場合は販売が認められない。
ソフトウェアに関連する規制は2027年モデルから適用され、ハードウェアに関する規制は2030年モデルから、またモデル年が定められていない車両については2029年1月1日から適用される。
安全保障リスクへの対応
BISは、中国とロシアのコネクテッドカー技術は「アメリカの国家安全保障に過度かつ容認できないリスク」をもたらすと述べた。
コネクテッドカーとは、インターネットへの常時接続機能を具備した自動車のことを指す。
ジーナ・レモンド商務長官は声明で次のように述べた。
「現在の車両は単なる『車』ではなく、カメラ、マイク、GPSトラッキング、インターネット接続技術などを備えたコンピュータだ。この規則により、アメリカ政府は国家安全保障を守り、外国勢力がこれらの技術を操作して個人情報や機密情報にアクセスするリスクを軽減する」
また、ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官は、この措置は「重要なインフラと自動車サプライチェーンを保護することで」国家安全保障上のリスクからアメリカ国民を守ることになると述べた。
2024年9月に公表された規則案では、敵対国が接続車両の脆弱性を悪用し、運転者の「位置情報、速度、声紋、バッテリーの充電状態、その他の車両診断および運用情報」にアクセスしたり、マルウェアを用いて車両を制御する可能性があると警告していた。
BISによれば、受け取ったコメントの多くが同局のリスク評価に同意し、リスクを軽減するためにサプライチェーン規制を活用することを支持しているという。
商用車両市場への配慮
BISによれば、一部のコメント者は商用車市場を規則の対象外とするよう求めた。その理由として、商用車分野では規則の適用がより困難であると指摘された。
これを受けて、BISは最終規則の適用範囲を総重量1万ポンド未満の車両に限定した。この変更により、中国のバッテリーメーカーであるBYDは、カリフォルニア州での電気バスの組み立てを継続できるようになる。
BISは、トラックやバスといった接続型商用車両に関する追加規則を「近い将来」制定する予定であり、最終決定は次期トランプ政権が行うとしている。
規則の適用範囲と例外
コネクテッドカーや部品の輸入業者および製造業者は、規則遵守を証明する「適合宣言書」を毎年提出する必要がある。ただし、以下の場合には一般許可が発行される。
- 年間1千台未満を輸入または製造する小規模事業者。
- 公道での使用が年間30日未満の車両(RV、展示・試験用車両、研究・修理・改造用のハードウェアなど)
また、特定の許可を申請することも可能。さらに、新規則施行前に開発された中国製ソフトウェアについては、中国企業がメンテナンスを行っていない場合、規則の適用外となる。
つまり、ゼネラル・モーターズ(GM)とフォードは、アメリカの購入者向けに一部の中国製車両を輸入し続ける可能性があると、ある幹部が記者団に語った。
米中の緊張関係とさらなる規制
今回の規則確定は、FBIのクリストファー・レイ長官が、中国政府のサイバー攻撃プログラムについて「世界最大規模」と警告した直後に行われた。レイ長官は、「中国の悪意ある行為者がアメリカの重要インフラに侵入し、適切なタイミングで大きな被害を与える準備をしている」と述べた。
同日、元 MI6長官リチャード・ディアラブ卿はイギリスでも同様の 懸念を表明した。同氏はロンドンタイムズ紙に対し、「中国で製造されたインターネット接続デバイスは最終的に北京(中国共産党政府)の管理下に置かれる可能性がある」と指摘している。
2024年9月には、バイデン政権は中国製EVへの高関税を導入した。今月には中国の主要バッテリーメーカーCATLが、同国の軍事支援を行った疑いで制裁リストに追加された。
1月20日に就任するトランプ次期大統領は、中国からの自動車輸入を阻止する方針を示しているが、一方で、中国の自動車メーカーがアメリカ国内で車両を製造することには前向きな姿勢を見せている。
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