社会問題 民衆の苦しみを認めず「それは存在しない」とする当局

封殺された中国の「貧困」【動画あり】

2025/02/16 更新: 2025/02/16

中共は、共同富裕を目指す社会主義国家を自称している。2021年、最高指導者の習近平は「貧困撲滅戦で全面的な勝利を収めた」と宣言した。

しかし、現実には多くの人々が依然として貧困状態にあるか、貧困線以下で生活しているが、その「リアルな貧困」は禁忌の話題である。

2023年、中国のネット規制機関である「国家インターネット情報弁公室」は、「悲壮感をあおり対立を引き起こし、党と政府のイメージを損ない、経済社会の発展を妨げる動画や記事を投稿する者を取り締まる」と発表している。

これにより、高齢者、障害者、子供に関する悲壮な動画の投稿までもが禁じられるようになった。

 

「呼び出し」

最近も、中国の低所得層市民の生活とそのリアルな姿を題材に、動画づくりをする動画配信者「這是個令人疑惑的星球(ここはややこしい惑星だ)」は学生、農民、労働者ら各業界の低所得層市民の真実を記録する動画をシリーズで配信してきたが、いまでは165本あった動画も、残りわずか10本になったのだ。

 

「ここはややこしい惑星だ」の削除された動画。(NTD新唐人テレビより)
165本あった動画もいまは残り10本になった中国のSNSアカウント「這是個令人疑惑的星球(ここはややこしい惑星だ)」。(スクリーンショット)

 

封殺された「貧困」

2024年に中国当局に封殺されたコンテンツのなかで「中国 活著(中国 生きる)」という動画がある。その動画にも登場する有名なシーンが以下の写真だ。

写真には昼夜を問わず娯楽で公園や広場で思い思いに踊る「広場舞(スクエアダンス)」のご婦人たちの姿と野菜売りのおばあさんが映っている。

ダンスや人生を堪能するご婦人たちはたいていは十分な年金をもらっている政府機関からの退職者およびその家族だろう。その楽しそうな姿を羨ましそうに眺めているのはそのすぐそばの地べたのボロイイスに腰かけて野菜売りをする高齢女性。

この写真は「中国における貧富の差が一目でわかる写真」として華人圏で広く拡散されている。

 

中国における「貧富の差」がよくわかる1枚の写真。(SNSより)

 

( 2024年に中国当局に封殺された動画『中国 活著』)

 

民衆の苦しみを「存在しないこと」にする当局

2023年3月、中国の庶民のなかでも、とくに弱い立場におかれた貧困老人の姿を撮影し、SNSに投稿したインフルエンサー・戸晨風氏の複数のSNSアカウントが中国当局によって封鎖されたこともあった。

戸晨風(としんぷう)氏のアカウント凍結の件を取り上げた米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)は同公式X(旧ツイッター)アカウントでこう問いかけた。

「民衆の苦しみは、カメラに撮影されなければ存在しない、ということか?」

この問いかけに答える形で、ネットユーザーは相次ぎコメントを寄せた。

「私(政府)は見ようとしない。あなた(外界の人)は見ちゃダメ!」

「習主席は、小康社会(ややゆとりのある社会)の実現を宣言した。そこへ貧困や不幸を叫ぶ声が上がれば、習主席の顔に泥を塗ることになる。そういうことか?」

「中国の繁栄。それは人為的に作り出された幻だ」

 

封殺に遭った戸晨風氏の投稿動画のシーン。(動画よりスクリーンショット)

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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