総務省はインターネット上の偽情報拡散に対応するため、違法情報の判断基準を示すガイドラインを2025年春を目途に策定する方針を明らかにした。村上誠一郎総務大臣が1月31日の閣議後記者会見で表明したもので、表現の自由に配慮しつつ総合的な対策を推進する構えだ。一方、中国共産党(中共)による国際的な情報操作への懸念がある。国外からの脅威への対策も議論が期待される。
総務省は2025年春をめどに、インターネット上の偽情報対策ガイドラインを策定する方針を明らかにした。村上誠一郎総務大臣が1月31日の閣議後会見で表明。誹謗中傷や選挙妨害など違法事例を類型化し、事業者の情報削除基準を明確化する。背景には国内での虚偽投稿問題や、中国共産党による国際的な情報操作への懸念がある。表現の自由に配慮しつつ、国内外の脅威に対する総合対策を進める。
同大臣は会見で「偽情報が短時間で広範に拡散し、国民生活や社会経済に重大な影響を与える深刻な課題と認識している」と問題の緊急性を指摘。具体的な対策として「情報流通プラットフォーム対処法の早期施行に取り組むとともに、違法性の判断基準を明文化したガイドライン作成を進める」と述べた。
ガイドラインでは、誹謗中傷や選挙妨害など具体的な違法事例を類型化し、事業者による情報削除の判断基準を明確化する方向性が示されている。併せて国民のメディアリテラシー向上策やAIを活用した検知技術の開発支援など、多角的な対策パッケージを構築する方針だ。
背景には兵庫県知事選挙を巡る偽情報の拡散問題がある。前県議の死去に関連し「逮捕直前だった」とする虚偽投稿が拡大した事例では、兵庫県警が異例の公式否定声明を発表。村井紀之本部長は「偽情報が社会に与える不利益は計り知れない」と警鐘を鳴らしている。
政府関係者によると、ガイドライン策定に先立ち有識者会議を設置し、法学者やIT企業関係者らとの調整を進める予定。表現の自由とのバランスをどう図るかが最大の焦点となり、2月上旬から本格的な議論が始まる見通しだ。
中共による偽情報の脅威
世界経済フォーラム(WEF)が2025年1月に発表した「グローバルリスク報告書」では、偽情報・誤報が「今後2年間で最も深刻な短期的リスク」と2年連続で認定された。同報告書は民主主義国家が直面する生成AIを活用した偽情報拡散の脅威を強調しているが、中国共産党の直接的関与には明言を避けている。
しかし米国務省グローバル・エンゲージメント・センター(GEC)の2023年報告書によれば、中国共産党は年間数十億ドル規模で国際的な情報操作を展開している。具体的には、在外メディアの買収や現地メディアとの「コンテンツ共有協定」を通じたプロパガンダ拡散、台湾問題や南シナ海問題で批判的報道を抑圧するための在外公館による圧力、ウェイボーやTikTok等のプラットフォームを活用した技術的検閲システムの輸出などがあげられる。
実際に2023年の福島原発処理水海洋放出では、中国国営メディアが英語・ドイツ語・クメール語で「汚染水」とデマを拡散。これに対し日本政府は#LetTheScienceTalkハッシュタグで科学的データを発信する反論キャンペーンを展開した。
AI分野では中国企業「ディープシーク」が開発した大規模言語モデルが、中国政府のプロパガンダを反映した回答を生成しているとの指摘がある。同社はユーザーデータを中国国内サーバーに保存し、当局との共有可能性を明記している。
総務省は今後、中共の偽情報対策についても議論を深める必要があるだろう。国民を偽情報から守るために、中国共産党など国外からの影響にも十分に対応することが期待されている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。