中国DeepSeekが開発したAIモデルの公開後、ユーザー情報の過剰な収集や国家安全保障上のリスクが懸念され、いくつかの国の政府機関は利用を制限している。
韓国産業通商資源部は、職員にDeepSeekのAIサービスの使用を禁じる暫定措置を発表し、他の省庁や機関にもDeepSeekやChatGPTなどの生成AI技術を慎重に使用するよう呼びかけた。韓国メディア聯合ニュースは5日、韓国政府の一部機関も、安全保障上の懸念からDeepSeekの利用を制限し、公式サイトへのアクセスを遮断していると報じた。
これに先立ち、韓国水力原子力発電(KHNP)もDeepSeekやその他の生成AIサービスへのアクセスをブロックしている。
他国でも同様の動きが広がっている。各国政府は、データの安全性や、外国のAI技術による影響力の行使の可能性について警戒を強めている。現在、DeepSeekの使用を禁止している国には、オーストラリア、インド、イタリア、アメリカ、ベルギー、フランス、アイルランドが含まれる。
オーストラリア
オーストラリア政府は、国家安全保障上のリスクを理由に、政府機関のシステムや端末でDeepSeekの使用を禁止した。内務大臣のトニー・バーク氏は、この決定はDeepSeekの「中国企業としての出自」ではなく、オーストラリアの国家安全保障に対する潜在的な脅威に基づいたものであると強調した。
インド
ロイターによると、インド財務省は1月29日、職員向けに発出した通達で、「オフィスのコンピューターや機器における人工知能(AI)ツールやアプリケーション(ChatGPT、DeepSeekなど)が、政府のデータや文書の機密性に対するリスクをもたらすことが確認できた」と指摘した。職員に対し、業務でChatGPTやDeepSeekを含むAIツールを使用しないよう求めた。
イタリア
イタリアのデータ保護監督機関は、消費者データ保護を理由にDeepSeekをブロックし、同社のデータ収集に関する調査を開始した。
1月29日、イタリアではAppleやGoogleのアプリストアでDeepSeekがブロックされ、アクセスできなくなった。
アメリカ
アメリカ国防総省は先月、DeepSeekへのアクセスを遮断した。国防総省の最高管理責任者は、DeepSeekの利用は議会の公式業務で承認していないことを明言し、現在審査中であると説明している。また、中国製AIチャットボットによるリスクにも言及し、悪意のあるソフトウェアの拡散やデバイスの感染の可能性を指摘した。
台湾
台湾政府も、政府機関および重要インフラ事業者に対し、DeepSeekの使用を制限している。データの越境移転や情報漏洩のリスクが懸念されるためだ。台湾デジタル発展部は、「DeepSeekが中国当局と関連しているため、国家の情報セキュリティに脅威をもたらす」との見解を示している。
日本
政府は4日、中国企業が開発した生成AI DeepSeekの利用に関して個人情報保護の観点から注意を促した。林芳正官房長官は同日の記者会見で「個人情報を含むデータは中国のサーバーに保存される。そのデータは中国の法令が適用される」と述べ、利用時のリスクを指摘した。デジタル大臣の平将明氏も、DeepSeekの利用に関して個人情報の取り扱いに注意を促し、特に公的機関においては使用を避けるよう呼びかけている。
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