18日、中国で1月に公開されたアニメ映画「ナタ2（哪吒2、Ne Zha 、哪吒之魔童閙海）が世界歴代アニメ映画興行収入ランキング1位になった」と中国官製メディアが報じた。

同映画に関しては「空前の大ヒット」「関連グッズの爆売れ」などと同国官製メディアが一斉に大々的に宣伝してきたため、関連話題は中国SNSで何度もトレンド入りしている。

しかし、その輝かしい興行成績については、中国当局は国内の学校や国有企業、軍隊に至るまで、集団で観賞するよう要請していたことが指摘され、「詐欺だ」「国を挙げてのサクラ作戦」など批判の声も寄せられている。

いっぽうで、この中国が国を挙げておススメする同映画、「これには毒がある」として、中国共産党（中共）による洗脳に対する警戒を呼びかける声が華人圏で多く上がっている。

中国のネットにおいて、同映画に関する質疑は許されず、その内容を批判し、評判を落とすような声はことごとく封殺に遭っている。

「文化の歪曲」

本来、「ナタ（哪吒）」は古代中国の神話に登場する勇敢と善良の化身であり、中国人にとっては馴染み深い子供の姿をしたわんぱくな神である。

しかし、映画のなかでは下品な振る舞いと凶暴な気質を持つ「悪魔の子（中国語：魔童）」として描かれた。

いっぽう、中国明代の小説「封神演義」では自分を助けた兄弟子の太公望を逆恨みするなど、嫉妬深い悪役であるはずの申公豹（しん こうひょう）が映画のなかでは英雄扱いされ、他の登場人物も古き神話の中のイメージと真逆である。

また、「ナタ2」の内容には神に反し、中国の伝統文化に反するものばかりであるだけでなく、アメリカを風刺する要素も少なくないことも指摘されている。

「反神・反伝統」　「中共のイデオロギー輸出」

多くの専門家が「映画の中には神や伝統に反する内容が多く盛り込まれており、中共のイデオロギーを輸出している」として、「この映画は有害」と警鐘を鳴らしている。

「ナタ2」に出てくる名セリフをいくつか紹介しよう。

「私はあえて神と戦う（專和老天對著幹）」

「俺様は悪魔になっても神にはならない（小爺成魔不成仙）」

「私の運命を決めるのは神ではなく、私自身だ（我命由我不由天）」

「天地がそれを許さないのならば、天地をひっくり返すまでだ（若天地不容，我就扭轉乾坤）」

見てのとおり、映画のなかには神や天地と戦おうとする傲慢なセリフが多く登場する。

アメリカ在住の中国人権弁護士の吳紹平氏は「ナタ2には中国の伝統文化に対する歪曲が見られる、作品のテーマは無神論の宣伝だ」と指摘している。

オーストラリアの歴史学者・李元華氏も、「『天地と戦う』といったナタのセリフは完全に共産党のイデオロギーそのものだ」として、「映画のなかのナタは小さな紅衛兵そのもの」と評している。

なお、「紅衛兵」とは、中国人を大虐殺した中国の文化大革命で毛沢東を支持し、大虐殺の実行役となった青少年集団。

李元華氏はさらにこう指摘する。

「中国の伝統文化の核心は、天を敬い、神を信じることだ。しかし『ナタ2』はあえてその逆の道をゆく」

「ナタは本来、魔物退治もするとてもかわいい姿をした子供の神だ。それなのに、映画ではナタを悪魔の子として描いている。それでは中国の伝統文化におけるナタのキャラクターイメージと完全に違う」

護法神ナタに神や天地と戦おうとさせる理由

中共がなぜ、この映画を「愛国」「民族の誇り」などと絶賛し、国を挙げて推しているのか？

「共産党についての九つの論評【第六評】中国共産党による民族文化の破壊」は次のように記している。

 

「彼らは「主要な人物を神格化しよう」（即ち、個人崇拝）と願い、自分の上に存在する伝統文化の中にある「天、道、神」などのものに束縛されたくなかった。それは、伝統文化での共産党の言行を量れば、全部極悪なものであり、伝統文化が存在する限り、人々はその「偉大さ、光栄さ、そして正しさ」を賞賛しない。学識者たちは「命を捨て義を取る」［26］、「君を軽と為し、民を貴と為す」などの価値観を残せば、彼らに従うことをしないので、全民が「思想統一」することはないだろうと共産党自身も分かっていたのである」

 

（共産党についての九つの論評【第六評】中国共産党による民族文化の破壊：（三）民族文化は中国共産党の独裁を阻む）

 

中共が叫んでいる「中国共産党が中国である」との欺瞞を中国伝統文化は暴いてしまう。だから中国共産党は伝統文化を破壊し、またこの映画のように中共風に改変している。