3月9日、中国四川省宜賓市の建設現場で、「教育」の名のもとで3人の作業員が工事現場で吊るされる「事件」が起きた。
高所作業中に、安全ベルトを着用していなかったことに対する罰として、吊るされたという。
現場責任者は、その様子を「見せしめ」にして、工事現場の安全意識の向上を図ったものとされる。
吊られた作業員たちは、頭も垂れ落ちた状態のようで、いかにも辛そうな様子であることは画面越しでも伝わってくる。そんな体罰の光景は、通行人によって撮影され、ネット上で拡散され、物議を醸した。
「教育」を名目とした体罰と見せしめに対し、ネット上では労働者の尊厳を無視した行為として批判を浴びている。
「安全のためという名目であっても、これは侮辱的だ」
「彼らは、どこぞの会社に雇われる労働者である前に、一人の人間だ。誰かの父親であり、夫であり、息子でもある。こんな方法で尊厳を踏みにじられるのは許されない」
「これは労働者に対する虐待であり、侮辱だ」
中国の労働者の人権問題が浮き彫りになったこの事件について、陝西省の弁護士は、中国メディアに対し、「このような体罰的な懲罰方法が従業員の人格を侮辱するものであり、違法行為にあたる」と指摘している。

中国で踏みにじられる人権問題と政府の責任
今回の労働者吊るし事件は、中国における労働者の人権侵害が、日常的に行われている一例に過ぎない。
中国では、従業員の人権が無視される場面が、ネット上に多く投稿されており、しばしばニュースにもなっているのは周知のとうりだ。
2015年、複数の人権NGOによる共同調査で明らかとなったのは、極めて過酷な中国の労働者の労働環境であった。
長時間労働と低い基本給やリスクが高く安全でない労働環境などの問題が指摘され、政府に対して改善を求めたが、共産党政権は、その後も十分な改革を行わず、労働者の権利は引き続き無視されることが多い。
また、2020年には、中国の企業による労働者の過酷な取り扱いが国際的に批判を浴びた。過労や不正な賃金、劣悪な労働環境に置かれる中国の労働者ったちは、声を上げること自体が難しい状況だと言う。
今回の建設現場での「吊るし事件」も、企業が労働者を人間として尊重する意識を、欠いていることを浮き彫りにする。
労働者の人権を守るためには、企業だけでなく政府の積極的な介入と法制度の強化が不可欠である。共産党政権は、その責任を果たしているのだろうか。

ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。